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FGOと百年戦争と無知の知

あれよあれよと言う間に11月。
10月は秒で過ぎたので、11月は何かしらを噛み締めたいと思っている陸稲りくとうおこめです。皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて本日は誰もが今更?と思うであろうFGO、正式名称Fate/Grand Orderを8年越しに初めて遊んだ話をしたいと思います。

原作のFateシリーズおよびTYPE-MOON作品は、アニメ・映画作品ほぼ全て履修しておりまして、傘でエクスカリバーごっこをすることも吝かではないぐらいには好きですし、魔術師と魔法使いの使い分けを型月オタクにちゃんと強要するぐらいには嗜んでいます。空の境界も凡人なのでお話の全てを理解することは叶いませんでしたが型月オタクとして義務かなと思い全て履修しました。
と…そこそこにFGOを遊ぶための素地はあったのですが、当時お空のゲームに重課金していたこともあり、遊ぶタイミングを完全に見失っていたのでした。

実はTYPE-MOON作品の中でロード・エルメロイII世シリーズが一番好きでして、今回そちらの作者さんである三田誠さんが期間限定イベント『聖杯戦線 ~白天の城、黒夜の城~』のシナリオを担当されることを知り、これは流石にやらないとでは??と、ガチガチに固くなった地面に埋まりきった腰を、聖剣よろしくエイヤと引き抜いたわけです。

結果的にこの期間限定イベントの開始条件である第2部1章までの道のりがあまりにも長すぎて今回は遊べないことがほぼ確定してしまったのですが、今日はあくまでFGOに初めて触れてみた感想の話をしたいと思います。

ハマれない自分

FGO最初のシナリオは百年戦争の英雄「ジャンヌダルク」をメインに据え、フランスを舞台とした『邪竜百年戦争:オルレアン』です。
ジャンヌといえばFateアニメシリーズでも人気の英霊、ジルとの関わり方などアニメファンが思わずニヤリとする演出や、初っ端からオルタが出てくるなど「力入ってるな~」と感心しました。

が…何を隠そう、いまいちハマれなかったんです!!!!!
シナリオいいって聞いてたんだけどな…期待しすぎたかな…といち型月ファンの自覚が少なからずあった自分のハマれない感覚に自分自身にしょぼしょぼしておったのですが、理由を色々考えてみると見えてくるものがあります。

まず、戦闘がびっくりするほど多い。
昔のソシャゲあるあるの代表格が未だ現役で息づいていることに驚きます。
この戦闘で驚くほど細切れになってしまうシナリオのテンポの悪さがかなり響いていてく、苦しい…となっていたのですが、聞くところによると5章あたりから改善されるようです(よかった)
これはスタミナを金で買っていた時代の…古来ガラケーより伝わりし課金システムによる現代では風化した名残。久しぶりに出会ってなんともいえない懐かしさすらありました。このシステムが現役なの普通に考えてすごい。

あとはバトルシステムのカードのランダム性が性に合ってないとか、8年差ついた最新のフレンドのつよつよサーヴァントを触ると(強制的にPTに入ります)なんだか自分の初心者PTが虚しく思えたりとか、ストーリー中の選択肢が2000年代のノベルゲーのノリで若干つらいとか、数えるといくらでも“ 今どきのゲームではない ”理由が出てきてはしまうのですが、それよりも何よりも重大なことに気づきました。

無知の知

fateシリーズは英霊といって「全時代の英雄や偉人をサーヴァントとして召喚して戦う」という大変ワクワクするシステムが肝になっているのですが、アニメや映画シリーズでは英霊召喚をするものの、戦う舞台は現代なので(じゃないものもありますが)あくまでその英雄や偉人がどういう人物なのか・何を成した人なのかを軽く知っていれば楽しめていました。
FGOはこのサーヴァントシステムとゲーム独自の要素を上手く混ぜ込み「特定の時代の史実が改変さてしまっているのを修正するのを目的としたゲーム」です。つまり史実を元にしているため、実際の私達が生きている歴史がガッツリ関係してくるんですよね。
ここが恐らく一番面白い部分であり、よくできている部分…世界史で習った場所が舞台になっており「あの歴史的事件はこういうことだったのか!」とか「あれをこう解釈したわけね!」など知識と照らし合わせながら、生き生きとした歴史上の人物たち(英霊)を楽しめるのがFGOの魅力なんだろうなと個人的には思っています。

いや、本当にお恥ずかしい限りなのですが、自分でもびっくりするほど高校に行かずにゲーセンに入り浸っていたので、全然知らないんですよね、世界史。併せて告白すると世界地理もだいぶまずいです。
もちろん今回の舞台の百年戦争もほぼ何も知らず「百年戦争ってイギリスvsフランスだったんだ…」からはじまり、流石にジャンヌダルクは昔映画が流行ったこともあり存じていたものの、彼女が百年戦争の人だったことは知りませんでした。あまりにも無知。ジャンヌの映画、見たはずなんだけどな…。
辛うじてマリーアントワネットとアマデウスの幼少期のプロポーズ話は知っていたのでここは楽しめたのですが、多分本来はこの楽しさがたくさん訪れて楽しいはずなんですよね、FGO。

いやこれハマれないの自分の無知さから来てるのか…と気づいた瞬間に妙な悔しさとなんともえいない勿体ない気持ちが込み上げ、今更勉強しとけばよかったな~となりながらも同時に今からでも世界史を断片的にでも学ぶいい機会なのでは?と前向きに思い直し学んでみることにしました、百年戦争。
FGOから始まる歴史知識があったっていいよね。

感謝しかない面白すぎた本

世界史を学ぶと一口に言っても、今から学ぶの結構しんどいじゃないですか。下げれるハードルはできるだけ下げたい。
できればカッチカチの史実をなぞった文章ではなく、小説や物語調の文章だと読みやすくて良さそうだなぁ…と思い探してみたところこちらの記事にたどり着きます。

歴史系の新書は、一度学者が書いたあと作家が面白く読めるように「超訳」することはできないだろうか、などと思うことがある。

明晰夢工房様、上記記事より引用

求めていたのはこれよ…!と言わんばかりのおすすめ記事。
作者の佐藤賢一さんは直木賞受賞作家さんで、つまり物語も得意とした歴史小説家さんです。

そして読み始めたのがこちらの英仏百年戦争です。
タイトルからだと堅そうな歴史書の印象を受けますがこれが本当に面白い。

歴史といえば勝者の視点で描かれることが多いという偏見を持っていたのですが、こちらの本は当時のフランスの事情、イギリス(本書にちゃんと則った書き方をするとイングランド)の事情、双方の内政・外政事情から見えてくるこの時代の “戦争のあり方” がとても丁寧にわかりやすく書かれています。
これまた偏見なのですが、戦争って武力行使している状態のことだけを指しているイメージがあったのですが(あまりにも幼い見方…)この本を読むと政治的な側面と当時特有の思想や国のシステムが大きく関わっており、現代を生きる自分の物差しで歴史を語るのがいかに愚かか、ということを実感しました。
特に国のシステムが今とはかなり違い、なぜこんなにも貴族が強かったのかなどFGOそっちのけで気づけば読み終わってました。ちなみにFGOのメインであるジャンヌは75%ほど読んだあたりでようやく出てきます。これが百年戦争。

個人的にポワティエの戦いで出てくるイングランド勢の「長弓」が大活躍する話がとても面白かったです。ゲームで長弓といえばあまり取り回しが良くなく力こそパワーな私はついつい長弓より火力の出る短弓を使いがちなのですが、これを読んでから「今度長弓使ってみよっかな…!」となっています。単純。
この話は端的に説明すると騎馬兵に長弓で勝ったやで、みたいな単純な話になってしまうのですが、なぜ騎馬に対して長弓で勝てたのか、当時騎馬から降りるというのはどういうことなのか、などその時代特有の思想が深く絡んでいることが細かく鮮やかに説明されており、めちゃめちゃ面白かったです。歴史書としてはもちろん読み物としてもとても面白いので興味ある方はぜひ。
あまりにも面白かったので佐藤賢一さんの本を色々読んでみようかと画策している最中です。

FGOで得たもの

これはアークナイツでも学んだことなのですが、作品に触れて題材になったものを学ぶのが思いの外自分の性格と合っておりマジでめちゃくちゃ楽しい。

今回も百年戦争を学んでみて、正直FGOに繋がったかといえばそこまでではあるのですが、明らかにFGOをきっかけとして得たものはとても大きく、こういう遊び方もいいよね~と最近の自分の流行りになりつつあります。
ジャンヌに限った話で言えば史実と知名度には大きな差があり、またフランスの英雄ではあるがイギリスでは悪女として名高いなど色々な視点で楽しむ(楽しむという表現は失礼なのかもしれませんが…)楽しさもしり、その視点の一つとしてFGOも作者の独自の解釈が見て取れるようになり、学んでみて本当に良かったです。
そう、史実を知らないとこれが史実に基づいた部分なのか、作品独自の解釈なのかというところがとてもモヤモヤしてしまい、どうやらいまいちハマれなかったのはそこに驚くほど引っかかっていたからだったようです。
相変わらず融通のきかない自分の感覚に驚くばかりですが、悪いことばかりではないので、FGO第2章からもこの戦法でゆるゆる楽しんでいきたいなと思います。ありがとうFGO。


余談ですが、この本を読み終わってから映画『キング』を見たのですが、イングランド視点の百年戦争(後期)はこんな感じに見えるのか~!と、本を読んだからこその面白さを感じれてとても良かったのでこちらもオススメ。イチオシの長弓の話も出てきます☺


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