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東京国立近代美術館「ガウディとサグラダ・ファミリア展」感想と見どころ


1.概要

東京国立近代美術館で開催されている「ガウディとサグラダ・ファミリア展」を観てきました。ガウディより先にサグラダファミリアの主任彫刻家・外尾悦郎さんに興味を持ったのですが、外尾さんの著書「ガウディの伝言」を読んでガウディと外尾さんの仕事に取り組む真摯な姿勢に感銘を受けすっかりファンになっていました。今回は大手町でスペイン料理を食べて気合を入れて臨みました!

スペイン、カタルーニャ地方のレウスに生まれ、バルセロナを中心に活動した建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)。バルセロナ市内に点在するカサ・ビセンス、グエル公園、カサ・バッリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリアなど世界遺産に登録された建築群は、一度見たら忘れることのできないそのユニークな造形によって世界中の人々を魅了し続けています。ガウディの独創は、西欧のゴシック建築やスペインならではのイスラム建築、さらにカタルーニャ地方の歴史や風土など自らの足元を深く掘り下げることで、時代や様式を飛び越える革新的な表現に到達したことにあります。
今回開催されるガウディ展は、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリアに焦点を絞り、この聖堂に即してガウディの建築思想と造形原理を読み解いていくものです。
図面のみならず膨大な数の模型を作ることで構想を練り上げていったガウディ独自の制作方法に注目するとともに、「降誕の正面」を飾る彫像も自ら手掛けるなど建築・彫刻・工芸を融合する総合芸術志向にも光を当て、100点を超える図面、模型、写真、資料に最新の映像をまじえながらガウディ建築の豊かな世界に迫ります。

展覧会公式HPより

2.開催概要と訪問状況

展覧会の開催概要は下記の通りです。

【開催概要】  
  会期:2023年6月13日(火)~9月10日(日)
 休館日:月曜日(ただし9月4日は開館)
開場時間:10:00~20:00 -入館は閉館30分前まで
一般料金:一般2,200円 大学生1,200円 高校生700円

展覧会公式HPより

訪問状況は下記の通りでした。
    
【日時・滞在時間・混雑状況】
土曜日の13:30~14:00入場の日時指定券で入場しました。はっきり言ってここ数年見たことのない混雑で隅々まで堪能できたとは言い難いです…。展示を見てグッズを買い終わったのが16:00、常設展を回って16:30に会場を後にしました。

【写真撮影】
「3 サグラダ・ファミリアの軌跡」のみ撮影可(一部作品を除く)でした。

【グッズ】
ポストカードとクリアファイルの種類が豊富でした。ガウディに関連する書籍も色々と販売されていました。コラボグッズも数多く販売されていて、特にセンチメンタルサーカスのアクリルスタンドはおしゃれでした。

3.展示内容と感想

展示構成は下記の通りでした。

1 ガウディとその時代
2 ガウディの創造の源泉
3 サグラダ・ファミリアの軌跡
4 ガウディの遺伝子

出品作品リストより

サクラダファミリアに焦点を当てつつ、ガウディがサグラダファミリアに至るまでの成長過程が伝わるところが興味深かったです。「2 ガウディの創造の源泉」ではガウディの建築が突然変異ではなく過去のヨーロッパの建築様式やイスラム文化の影響が残るスペインの歴史的背景に立脚したものだということが示されていました。その一方で「すべては大自然の偉大な本からでる。人間の作品は既に印刷された本である。」(展覧会場より)というガウディの言葉からは、先人の影響だけでなくさらに踏み込んで物事の本質に迫ろうとするガウディの姿勢が伝わってきました。

本でガウディ建築のトピックとして「平曲面」、「破砕タイル」、「逆さ吊り実験」などの知識は仕入れていたのですが、実物や模型の展示を通して実感を得られたのはまさに展覧会の醍醐味でした。私は建築というものに途方もなさを感じてしまうのですが(あれだけ大きなものを設計して実際に事故なく組み立てるというのは想像もつきません…)、魔法ではなく理論とエビデンスに基づいてコツコツ作られるものということが伝わりました。論理性もさることながら、「建築の敷地に関連するストーリーをそこに建つ建築のデザインに組み込むことが巧み」(展覧会キャプションより)と解説にある通り文学性(?)が感じられるところもガウディ建築の大きな魅力だと思いました。

※ただこのセクションは左右の小部屋を大勢でグネグネ回る導線となっており、多少見づらかったです…。

「3 サグラダ・ファミリアの軌跡」では完成予想図の模型やガウディ自身が作成した装飾の試作品、建物内の映像などが紹介されていて、サグラダファミリアの世界に浸ることができました。壮麗な外観や彫刻はもとより、内部の柱、ステンドグラス、祭祀具に至るまで考え抜いて設計されていることが分かりました。神は細部に宿ると言いますが、こうした一つ一つの意味付けがサグラダファミリアを「石の聖書」として成立させているんだなと実感しました。個人的には外尾悦郎さんの彫刻が見られて感激しました。自然と合唱の輪に加わりたくなるような、優しい表情と仕草が印象的でした。

外尾悦郎「サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち」サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の門に1990-2000年に設置 作家蔵


制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室「サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型」2001-02年 西武文理大学蔵

4.まとめ

作品の魅力だけでなく、ガウディがいかにしてガウディになったかが伝わる展示でした。かなりの混雑なので、日程調整できる方は平日訪問することをお勧めします。

5.延長戦

私の好きな池田蕉園の新規収蔵品が公開されているということで、常設展も駆け足で回ってきました。それぞれ物思いに耽っているような様子がまさに「帰り道」だなと思いつつ岐路につきました。

池田蕉園「かえり路」1915年 東京国立近代美術館蔵

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