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the おこめマン(z)(22)、狂気の10000字セルフインタビュー(上)

0.はじめに
 2020年7月某日、我々取材陣はアルバムリリースを控えたおこめマン(z)(22)のインタビューを実現させることができた。

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(話し手:おこめマン)

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(聞き手:おこめマン)(撮影Taito Hashimoto)


the おこめマン(z)が2021年6月30日にキャリア史上初のフルアルバム『YOU ARE NOT PUNX』を配信にてリリース。コロナに恋に就活に大忙し!な2020年、ライブ活動や人との隔絶を経験しほとんどガラパゴス的な進化を経た本作について、自ら作品について掘り下げて話した。


『2020年、ウイルス騒動並びに世間やヒトとの隔絶の中で醸造される自分の中のジメジメしたくっさい部分を表現しないと嘘だと思った』


——今回は忙しい中お時間作って頂きありがとうございます。

いいんだ、時間なんてものは気にしなくていい、好きなだけ質問してくれていいからね。

 リリース前でピリピリしているという我々の予想に反し、おこめマン(z)(新卒)はかなり親切な態度で応じた。

——そうですか。お気遣い有難うございます。(明日6時に起きて出社なので)早速アルバムについて質問したいと思います。

ほんとに焦らなくていいからね。時間なんてものは本当に気にしなくていいんだ。

 そう笑いかけながらおこめマン(z)は業務スーパーでしか見かけない2L ¥800の焼酎、『すごいも』を開けた。

——このたびはアルバム「YOU ARE NOT PUX」発売おめでとうございます。

ああ、有難う、大変だったよ。

——かなり後ろ向きなタイトルだなと思うのですが、一体どのような意味があるのでしょうか。

それはつまり、「YOU ARE NOT PUNX」にはどんな意味があるかっていうことかい?

——ええ。

それはなんていうか、ある意味ではラディカルな質問だね。

——(無言)

まあ、その辺はうん、なんかライブハウスとか、あった時に聞いてほしいかな、そのうち何かで話すかもしれないけど。

——えー、早速濁すのかよ。俺は俺がなんでそのタイトルにしたか知ってるんだから意味ないよ。何かどんな意味を込めたとかでもいいからそれっぽく話してよ

うーん、かねてからおこめマンのテーマは「脱パンク」だからね。

——そうなの?

うん多分高校の頃から言ってたと思う。「パンクとは」「ロックとは」の無間の問いかけに対し、俺が出したアンサーは「パンクならざるもの」であり「俺あらざるもの」だという一個の答えが込められてる。

就職きっかけに自分の人生と直面したこと含め「こうなりたい自分」との距離感がどんどん離れていってくのを感じていたんだ、理想の自分との乖離みたいなものも含まれてるかもしれない。

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(聞き手:おこめマン)

——なるほど、「こんな自分がいやだ」という一種の変身願望、一方で「理想との乖離」のように否応なしに自分が自分の身体を離れていく感覚。この両方の矛盾、葛藤は生きていく以上普遍的なテーマではありますよね。音楽性にも表れてますか?

パンクでありたいけど、パンクのフォロワーではないようにしたかった、例えそれがどんなアプローチでもね。僕の中のジョー・ストラマ―がそれを許さなかった。2020年、ウイルス騒動並びに世間やヒトとの隔絶の中で醸造される自分の中のジメジメしたくっさい部分を表現しないと嘘だと思ったんだ。
自分が曲にしてきもちくなれることだけをやりたくなかった。
それをサウンドにも出すのにどうすればいいか考えてたよ、とにかく…攻撃的になりたかったんだ、自分の気持ちを越えたとしても。

——確かに変則チューニングやブレイクダウンなど新しいサウンドにもチャレンジ、というか無理やり新しいサウンドを捻りだしていた印象です。

おこめマンの生き方には常にうんざりするくらい今の自分を良しとしない、「自己否定」が内在しているからね。今までも「満員電車」や「ハチ公」でそんな世界観は表現してきたつもりだけど、歌詞だけでなく、音楽でそれを出そうと試みたんだ。

——結果自分でもあまり好まない音楽性につながっていったり?

うん。

——本末転倒だ、

やな言い方!

1,YOU ARE NOT PUNX

——早速曲のお話に入りたいと思います。まずはリードトラックについてですが、アレンジやキャリア史上レアなインスト曲であることなど、かなり分かりやすく「YOU ARE NOT PUNX」の世界を表現していると思います。

元々打ち込みっぽいトラックは好きだったから、いつか本腰いれてやってみたかったんだ。

——なるほど、確かにキラキラしたサンプラーや打ち込み丸出しのドラムなど。所謂「肉感的なパンク」の逆を行こうとしてる意図は伝わります。そのへんのルーツを伺いたいです。

アバランチーズには大きく影響を受けてるよ、打ち込みならではのサウンドということで言えばナイン・インチ・ネイルズやももクロ、エビ中に影響されてるかもね

——(曲を聞く限り)どれの影響も感じないなあ

失礼だね

『例えばジャンプで、はじめはギャグ漫画だったのにテコ入れを重ねてシリアスなバトル漫画になってしまった、みたいな作品があるだろ?アレだよ。』

2.厚生

——二曲目の「厚生」についてなのですが、これは一体どういうことなんですか?

一体どういうことっていうのは、つまりこの曲がどういうことかっていうことかい?

——はい。

なるほどそれはとてもアグレッシブな質問だね、君はどんな曲だと思った?

——どこまでがギャグかわからないなというのが正直な感想です。

うん、君は非常に鋭い、たいした記者を送り込んだね(笑)(誰もいない壁を振り返り笑いかける)
例えばジャンプで、はじめはギャグ漫画だったのにテコ入れを重ねてシリアスなバトル漫画になってしまった、みたいな作品があるだろ?アレだよ。


——というと?

つまりやってるうちに自分でもどこまでギャグかわからなくなっちゃったんだよ(苦笑)はじめはハードコアなサウンドに、フェラチオに関するlyricを乗せていたんだ。それって最高に…ギャグだろ?(笑)

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(話し手:おこめマン)


でもレコーディングを進めていくうちに、やっぱりハードコアなサウンドをやるなら極力モノマネではなく芯食ったものにしたいと思ったんだ。元々フリースタイルrapはライブの余興としてよくやってた(youtubeのライブ映像を参照)


ラップ自体は好きだからね。それを音源化するにあたって、やっぱりrecordに残すなら今までのお楽しみrapじゃなくて、自分の伝えたいことはなにか掘り下げていったんだ。

——フェラチオを掘り下げた先に、「社会保障問題」があったと?

その通り。ただ正確には掘り下げたというより、「俺の大好きな女の子や友達が(幸か不幸かではなく)今こうなったのは何故なんだ?」と考え、「俺が世界の全てを背負い闘う」という妄執に憑りつかれてしまった結果、敵がグングンでかくなっていったんだ、ある女の子を傷つけた男たち、(実はそれは僕自身であることにも気づく)、そんな人間を生んだ社会、鬱屈した島国根性、グジュグジュと腐ってく傷口、その全てと闘うために、「おこめマン」の怒りを出力した。

——後半そのまま歌詞につかった方がよくない?

うん、喋りすぎた。

——怒りの矛先は、やはり自分自身??


自己が肥大化していくのに伴い、内省の世界の敵もグングンでかくなっていく、自己嫌悪や欲望との闘争を経て、敵が国、歴史、世界になっていったんだ。

——難しい言葉を使ってものものしさを演出してる節があるよね

——必要に駆られてチョイスされた言葉なのかもしれないけど、こっちからしたら具体的な表現を避けてあくまで粉飾であり演出でしかない言葉を並べられているようにしか感じないよ

オーバーキルだね。


 ここまで取材して我々はセルフインタビューの恐ろしさに気付く。繰り返される自問自答、懐疑、反芻の末、取材陣(おこめマン)の精神は早くも限界を迎えようとしていた。


~the おこめマン(z)ライブ予定~

7/26(月)@下北沢ライブホリック



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