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【はじまりはここから④】夏山合宿への準備

(カバー写真はクロユリ)

高体連の大会後は、放課後に部室へ行っても、「今日は練習はないよ」という感じの日が続いていた。
中学剣道部の頃は、平日毎日が朝練、夕練、夜練と部活三昧だったため、部活の体(てい)を成しているのかな?と、少し生意気にも思っていた。
しかしながら、何をどう練習したら良いのかも、わからなかった。

7月2日〜に学年の宿泊研修で国立大雪青年の家に泊まり、十勝連峰の三段山に登った。まだ高校生デビューの浮かれ気分が残っていて、まるで遠足登山だった。布団の南京虫に刺されて帰ってきた。

7月8日の放課後、遠○町のAヒサ君の家に遊びに行った。部屋は2階。パソコンがあり、楽しそうに画面をあれこれ自慢してくれた。どうやら難解なプログラムのようだ。パソコンに関する本もたくさんあった。愛称アゴ君とのコープ2階のゲームコーナーの人気者だけではないんだナと少し感銘を受けた。

7月26日、晴れ。
体育祭が終わり、夏休みが始まった頃、山岳部で再び、ニセイチャロマップ沢へ向かった。
なぜなら、この夏の合宿は、大雪山縦走らしく、はじめに一泊二日もの長い沢登りがあるという。その準備訓練である。その怖さも知らずに、ぼくたちは山の買い物第二弾である地下足袋とわらじ2足を購入させられていた。初めて触るわらじは何だか良い匂いがする。

西に向かうイタドリの多い沢では、主に地下足袋にわらじを結ぶ練習を何度もした。歩く練習も少しした。滑らず、クッション性もあり、地下足袋内への指の分裂を除けば、すこぶる感触が良い。どんなところへも歩いてゆけそうな気分になる。沢から帰る頃には、あちこち手足を擦りむいた。
「わらじは歩いているうちに擦り減る、だから大雪山の沢登りでは、くれぐれも2足を大事にするように」
と、K先生が笑いながら言った。

「(合宿に)行けるかどうか迷っている」と、帰路の列車で、N村君とY川君が小さく言っている。あまり部室に来ない2人だが、不安になるのも無理はないと思った。
正確には、行くかどうかを迷っているのである。だって、新入生は誰もどれだけ大変で、どれほど体力や技術が必要なのかわからないのだから。
まさに、冒険の世界が始まるのだ。
ぼくたちは勇者になる気分だった。
仲間たちとの頼りになるかわからない連帯感も生まれていた。もちろん、先生たちには尊敬も絶対的な信頼感もある。

夏山合宿が始まる8月2日まで日がない。有志でランニングや歩荷訓練を少しだけして、コープで食糧の買い出しをする。
K先生へ保護者からの合宿参加許可書を提出する。全体行程表が書いてあり、切り取り線以下に署名して提出するという形だ。
印刷は青味がかっていた。
7月下旬、今年の夏は暑いな。
浜から内陸の遠○町に通っているからだろう。

いよいよ夏山合宿が始まる。



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