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9.11 夕景をさがしにー利尻岳②

2001/9/10ー計画実行の危機がやってきたー

朝のニュースから「台風情報」ばっかりだ。仕事上でも防災担当のため、いろいろと情報がFAXされてくる。こりゃあ、ヤバイんじゃないか?と思う。過去数年来のヤバイ奴らしい。ノロノロと遅くなっているらしい。
 20時現在でも速度が遅く、こいつはまだ東海上にいるようだ。このままだと利尻行きが、もろ、台風にぶつかるじゃんかっ!

北海道に直撃しそうな台風の進路。

しかも、現在、北海道北部には停滞前線があって、今朝から宗谷地方を始め大雨・洪水警報が発令中。午後にはオホーツク紋別北部まで追加された。
 さっきのFAX情報だと、稚内へ向かう国道238号線が一部冠水・・・これからさらに台風に直撃されたら、一体どうなってしまうのか?

 出発予定は13日の夜明けなのだが、台風被害は抜けた後も復旧対策などで大変なのだよな…
こりゃあ、夏期休暇どころか、仕事になる?
行けたとしても時化で、フェリーは欠航?しているんじゃないのか・・・そもそもBC(ベースキャンプ)をキャンプ場に設営してなどといった余裕のある登山にはならないかも?帰りのフェリー欠航なんかも・・・いろいろと心配だ・・・
島に渡って、山に登られる状況じゃないのかも知れない。 ぼくは、いろいろと心配性です。

とりあえず、装備だけは一通り、移動ケースの箱にぶっこんでおこう。

 明日以降は、たぶん気象警報発令のため仕事で帰宅できないと思います。

 ということは、このまま、もしかするとこのコーナーは終わってしまうこともあったりして・・・ 読者のみなさん、期待させちゃって本当にごめんなさいっ! ちゃんと行けていたら、17日頃にはアップできていると思いますが・・・

 果たして、どういう結末になるのン? この「夕景をさがしに」・・・ 
今、午前3時、雨足も強くなってきました。


2001/9/12ーパッキング完了と悲しみたちー

昨日8:10に発令された大雨洪水警報、台風15号の危機は無事去りました。明日からの予定だった夏期休暇は、その後始末の仕事のため無理。いずれにしても稚内~利尻を結ぶ東日本海フェリーも昨日から全便欠航中。「明日もわからない」と録音されたテープの女の人のアナウンスの声を受話器で 2回くりかえし、聞く。
 仕方なしに、1日遅らせて出発の予定。雨の中の防災の仕事でズブ濡れになり、土のうを作り、疲れ果てた?体にムチを打ち、気合いを入れてようやくパッキングを完了。

 今回のザックは60㍑を使用。 テント、寝袋、ガス、コッフェル(なべ)、食糧、ランタンなど一式を完全防水 にして詰め込む。なかなか良いパッキングの仕上がり。

 また、今回の楽しみは、 初めてのデジカメでの撮影、テントの中でのガスランタンを使った読書。 そして、珍しくファッション?にもこだわって服装は黒とグレー系の色でまとめてみたりした。 あとは、果物などのちょっとした行動食を買うのみ。
 あっと、忘れちゃいけない、命の水、ビール! 

 以下、内面心情です ・・・・・
しかし、そんなことは世界と自分に関わる悲しみたちの前には 何ら楽しみとも映らなくなってきている一方の冷静な自分もいる・・・・・
ニューヨークで起きた世界貿易センタービルなどへの悲惨なテロ事件・・・何度も何度も同じ悲惨な映像がTVに繰り返されている。
まるで合成映画を観ているような程、凄まじい。
衝撃的だ。
信じられない。
そして、この大雨被害の濁流に今現在も行方不明中の、幼き頃の故郷の同級生・・・

ぼくは、なんで山なんかに、ただ夕景が見たいがためだけに、行動しているのだろう。 悲しみたちを前にして、今一瞬の自分の命の危うさも直感できうる怖さが、 そんな今のぼくにはある。
ぼくは、それでも行かねばならないものなのか?と問うてみる。不安の沼にいるようだ。感性が研ぎ澄まされてきている証拠なのか、または偶然が重なっているのか?
慣れた利尻岳の一般コース、それも無雪期なのに、なぜか臆病な自分がいる。山行へ向けて、うまく精神集中がいっていないのが現実なのかも知れない。

仕事での体と精神的な疲れからなのか、心の整理がつかない状態だ。山へは、いつもそのままの自分を連れて行く。だからこそ、日々の不安定さやとまどいは整理しておきたいと心がけている。


2001/9/13ー今夜から行ってきますー 

 明日からようやく予定より1日遅れてズレた、夏期休暇の始まりです。
 ちょっと体も筋肉痛だったり、気持ち的にもやや落ち着きはありませんが、この疲れを今夜早くからの睡眠にして、夜中に出発予定。

 心にあふれる悲しみたちは、何事もなくいつもと変わらぬ日常風景を眼にする。今までの葛藤や不安、期待といったものたちが、すべて融合して一体化してきた。自分の中に積もる悲しみたちもすべて抱えていける。すべては、このベクトルに向かっているようで、そして大きな勇気となっていく。

 うふふ、天気予報も、いい感じです。台風が過ぎ去ったあとの高気圧の尾根に包まれたため、次の台風16号の接近までは比較的安定していそうだ。等圧線も緩い。あとは山独特の天候次第だなあ。

       ↑この晴れ間に期待します。 

東日本海フェリー稚内事務所へ電話で照会してみると、今日は全便運行したのだそうです。
「明日も大丈夫だよ、うん」と、おじさんの声もまるで天使の声。なんてステキな人なんだろう、うん。

 現時点の行動計画、一日目、午前中に利尻島へ渡り、北麓キャンプ場にてテント設営。登山者名簿を確認し、長官山避難小屋使用者数の確認。一人っきりになるのは仕方ないケド、小屋の定員越えが心配なので・・・荷物整理をし、日本百名水の甘露泉水で喉を潤してから、そのまま長官山避難小屋1,218mまで一気に登山。
夕景をさがし、信じて、じっと待つ。見たこともない、素晴らしい夕景と出会う。クライマックスシーン!の予定?
長官山避難小屋に宿泊予定。星空観察会のお時間。

二日目、早朝のうちに頂上までスピード往復。今回、登頂は、おまけの目的。ゆっくりと下山し、午後BC着。ビールを飲む。さわやか、のんべえのお時間。終日キャンプ場にて贅沢なひととき。読書のお時間。テント泊。

三日目以降、予備日。気分次第の島過ごし。稚内へ戻った後は、ふらふらとオホーツク海側の温泉を楽しみながらの帰路。家に着き、留守番をしていてくれた仔猫の「ちゃちゃ」とスリスリとご対面、再会。

さて次は、装備の最終確認

▼北麓キャンプ場にて、BC(ベースキャンプ)を設営し、残置。(予定)テント(ICIオリジナル・ゴアテックス・1~2人用)、ポール、ペグ一式、ガスボンベ(1)、食糧3食分、ストーブ台(板)、着替え、ビール。

▼登山行動時の装備寝袋(3シーズン)、エアマット、ガスストーブ、ランタン、ガスカートリッジ(2)、コッフェル、医薬品一式、ピンチパック一式、ゴアテックス雨具上下、食糧2食分、水2㍑、行動食(リンゴ、きゅうり、サラミなど)、バーボン、地図、コンパス、単行本、ナイフ、ホイッスル、タバコ、ラジオ、新聞紙、メモ帳、ヘッドライト、ロウソク、デジカメ、予備電池、ティッシュなど。

▼非常時対策ツェルト(非常用簡易テント)、厳冬期用下着、冬用シュラフ(寝袋)ゴアテックスカバー、非常食2食、その他ピンチパック・医薬品あり。

▼通信手段アマチュア無線144/430MHz、携帯電話(いずれも予備バッテリーを用意)

さて、あのおじさんの言葉を信じて一人走ろう、稚内まで。そして、天気予報を信じて一人渡ろう、利尻島。うんうんと、ただただ高みへ一人登ろう、利尻岳。きっと待っているであろう、あの夕景。きっと迎えてくれるだろう、あの夕景。あー、なんてピュアなんだ・・・
そんなに物事はうまく行かないのにね。夕景と出会ったら、あまりにも悲しいことが多いから、せめて身近の人を、一人でも多くの人を愛せるように、心をきれいに、大きくしてきたいと思います。ぼくの中に積もる悲しみたちにも、その夕景を見せてあげたいと思います。

この企画が楽しみと応援メールを送ってくださっている方々、ありがとうございます。 出発までも、いろいろとありました。ステキな画像をここにお見せすることで、無事に帰ってくることで、みなさんへのお礼に代えさせていただきたいと思っております。小生、いよいよ、(ちっぽけで短い)旅にでます。

つづく


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