見出し画像

【回想】春はどこから


タイトル
サケが死んだ

サケが死んだ。
生まれた川で産卵を終えたサケマスたちは、秋の冷たい水の中に沈んでゆく。
悲しい気持ちで見ていると、すぐにカラスやカモメたちがやってくる。
ボロボロに食べられてゆく。
これから雪、冬になってゆく。
空気も心も凛とするようだ。
物語のはじまりです。


ワシたち

ワシたちは流氷とともにやってくるというのは誤りで、11月頃には飛んでやってくる。
ヤチダモやニレの木にとまり、鈴なりになる。
それをワシのなる木と呼ぶ。
サケマスの死がいを川で食べている。
川は下流から凍るから、冬とともに上流へ移動する。
海ワシとはよく言ったものである。
春になると、ロシアに帰ってゆく。
とても大きいのだ。
翼を広げると、2メールを超えるのだから。

アイヌの人たちは、カムイとした。
冬のワシたちは、氷下漁のおこぼれも狙って食べている。
生きるために、ヒトの生産活動に依存するのも野生なのかな。


チカ

1月も中頃になると、氷上釣りの声が聞こえてくる。湖だったり、河口だったりする。
子どもには、テントも七輪もない。
寒いけれど、冬の生きものの楽しみは少ないから、出かける。
ワカサギではなく、チカと呼ぶ魚。
2回りほど大きい。干して焼いて食べる。
チカは、背びれの付け根から下に線を引いて、腹びれが後ろなのが特徴。
ホッカイロが登場したときは、うれしかったな。


冬の庭

鳥の餌台に近くの林から、冬眠をしないエゾリスが毎朝やってくる。
野生動物にエサをあげたらダメなんて知らなかった。
ヒトも動物の赤ちゃんも、小さくてかわいい。
もしかすると、かわいいのは守ってもらうための生きる術なのかな。


サケのふ化観察

冬の小学校には、ふ化場からサケの卵がプレゼントされていた。
積算温度240℃(※水温8℃の場合で30日)で発眼し、その後同じく240℃でふ化する。
光を嫌い、あまり動かないので、つまらない。
放流セレモニーはあったべか。
いつのまにか学校からいなくなっていた。
子どもの頃にも観察日記を描いていたが、もう一度描いてみる。


ウグイ釣り

3月の中頃になると、川の下流の氷も融けはじめて、真ん中から割れてくる。
とても危険なのだが、そこにギャング針という引っ掛け針(※現在は違法)を水中に入れるとゴツゴツする。
アカハラ(※婚姻色)と呼ぶ魚がたくさん釣れた。
ウグイの産卵期の群れだったのかも知れない。
40cmくらいの大物ばかり、肥料袋一杯になる。
でも、家では犬のエサにしかならなかった。
ヒトが食べない釣りはするべきではない。
でも、キツネにあげたら許してくれたかな。


フクジュソウ

雪国の人たちは、何を見つけて春を感じるだろうか。
ふきのとう、風、土の匂い、いろいろ。
ぼくは、フクジュソウが好き。
冷たく白かった世界に光がさす。
もうすぐ春です。ビタミンです。
アリも来ました。

アイヌネギ

行者ニンニクという山菜。
4月末、大人たちのひみつの場所に連れていってもらい、若芽のものを採る。
大きすぎても、小さすぎてもダメ。
だから、全滅しなかったのかも知れない。
栄養はあるけれど、食べると、体中が臭くなる。
ジンギスカンには欠かせない。


カエルの卵

4月末からカエル、サンショウウオ捕り。
卵のそばで親が見守っている。オスのようだ。
その親の足の股には、ときにヒルがついている。
卵の発生も、おたまの成長も水温が影響しているようだ。
北海道のカエルの学名は、ラナ(※アカガエル)・ピリカ(※アイヌ語で美しいの意味)と呼ぶ。
春は楽しい。


エゾヤマザクラ

GW明けの5月10日過ぎ、北国にもサクラ開花です。エゾヤマザクラという自生種。
花と一緒に赤茶色の若葉もでます。
ようやく春が来ました。
あれ、春はどこから来たのかな。
どこにいたのかな?


故郷で遊んだ地域のようす 1980年頃

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?