9.11 夕景をさがしにー利尻岳④
ガタンという戸が開く音で目覚めた。
強風でテントが張れないという、思慮深そうな、静かな、良い声の男性と女性だった。
内心、ホッとした。これで、一人の夜にはならない。
キュウリをボリボリと食べる。
マヨちゅっちゅっもする。
サラミソーセージをナイフを使って食べる。
安心したのか、寝起きだからなのか、空腹だ。
外にでて、夕食をつくる。結局インスタントラーメンにした。
一人だと、ホントウに食事まで、余計に横着になる・・・。
世界や全国を放浪してきていて28才だと言う、人なつっこい話し好きな青年もやってきた。
17時過ぎ、ようやく夕景が始まりだした。風強い外へ出る。
ぐんぐんと姿と色合いを変えてゆく。
強い南西風により雲がぐんぐんと稜線を越え、その形を一瞬一瞬変えていく。
まるで軍艦のように黒く横たわる礼文島にかかっていた雲もなくなってきている。
上空にはスジ状の雲が広がっている。
海に沈んでいく夕陽は、海もを共に輝かせている。
そうなんだ、この、この夕景が見たかったんだよ!
ぼくの中にあるすべての悲しみも、イライラや不安になりうる卵の君たちよ、
ちゃんと表白しなさいね。目に映る世界や心の中に、穏やかな平和を!!
そうなんだよ、この夕景に出逢いたかったんだよ!
強風の中、素人なりに一応、撮影ポイントをうろうろと探す。
カメラを向けると、光線が強いのか、買ったばかりのデジカメのビューにうまく映らない。
ここまで来てダメなのか?
一眼カメラを持参しなかったことを後悔する。
それでも何回かシャッターを押すと、それなりに(?)映っているではないか!
うれしくて、何枚も高画質で撮り続ける。
太陽は、水平線にその体をつけると、わずか30秒ほどでぐんぐんと溶けてしまい、そして、消えた。
夕景に出逢えた、ありがとう
眼下には漁り火と島の灯がポツンポツンと、温かく灯りはじめた。
つづく
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