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「やりたいこと」からルールは育つ

今、校則や学校にあるルール見直しの取り組みを全国に広げたり、すでに取り組んでいる学校のサポートをする仕事をしています。

いろいろな学校の取り組みをみていると、さまざまなタイプの生徒がいます。校則やルールに対して課題意識を持って取り組んでいる子もいれば、そういったことにあまり関心を持っていない子もいます。

さて自分はこれまでどんなふうに学校のルールと向き合ってきたっけな、といろいろ思い出したので綴っていきます。

「静かにしよう、みんな!」が言えていた小学生の頃

小学生の頃は目立ちたがり屋で、
クラスの盛り上げ役と引き締め役を兼任する、リーダー的な存在でした。
クラスがざわついているときは率先して「静かにしよう、みんな!」と言っちゃうタイプでした。
ただ、何かの役職にもとづいてそういうことをやっていたわけではありませんでした。学級委員長という役職はなく、ただの「ヒラ児童」として、クラスのポジショニングの中で自発的にやっていたのでした。

ルールを守らせることが役割になった中学生の頃

「学級委員長」という役職とルール
ところが中学校から、様子が変わっていきました。
私は1つの小学校から1つの中学校ができるタイプの公立中に通っていたので、小・中を通して10年近く、ほぼ顔ぶれが変わりません。

中学校に入って最初の思い出は、学級委員長の役職決めです。
クラスメイトは全員、小学生の頃からの私のキャラクターを知っていたので、役職決めのHRのときに「おっきー(あだ名)、委員長やらないの?」という視線をたくさん送られたのを覚えています。

その流れでなんとなく引き受けたはいいものの、学級委員長はあまり居心地のいいものではありませんでした。

クラスの雰囲気が悪かったり、何かがうまくいっていなかったりすると、なんとなく自分が責められているような気分がするようになったのでした。
小学校の頃までは「クラスの雰囲気をよくしたい」と自主的にやっていた周囲への声かけが、中学校からは、役職がくっついてきて、やらなければならないことになっていきました。

そして中学生なので、みんなあまり言うことを聞かなくなっていきます。
それも影響して、周囲との関係に苦労した時期もありました。
名札についた学級委員長バッジを、ゴミ箱に投げ入れたくなったことが何回もありました。

■生徒会長になったけど、やりたいことは何だったのだろうか?
中2の秋からは生徒会長になりました。学校を代表する役職になると、以前のような葛藤はあまり感じなくなりました。
といっても、生徒会長になったのも周囲からの期待への応答という側面がつよく、確固としたやりたいことがあったわけではありませんでした。

先輩が受け継いできたものや、先生が「やってみたら」と勧めてくるものがあり、それができれば役割を果たしたものと思っていました。

どちらかというと中学校時代のパワーはほとんど部活に向けられていて、生徒会長の役職は正直に言うと「片手間」感がありました。
みんなが気持ちよく挨拶ができて、お互いができるだけ嫌な思いをせずに過ごすことができる、そんな学校で十分オーケーだと思っていたのです。

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(なんとなく先輩から受け継いだ「社会貢献活動」に、自分の意志はあったのだろうか?)

ルールメイキングの機会に出会った高校の頃

■やりたいことを実現するために、ルールは後からついてくる
中学までは、思い返すと周囲の(主に先生の)期待にそつなく反応して過ごしていましたが、高校のときに自分たちの意志で行う「ルールメイキング」の機会に恵まれました。

そのときは、学級委員長でも生徒会長でもなく、体育委員としてでした。
高校3年生の球技大会の思い出です。

球技大会は例年、男女で種目がわかれていましたが、その年は「男女同じ種目にしたい(その方が盛り上がれる)」という意見があり、バレーボールになりました。

すると体育館の面積が足りないので、どうしようか?となったとき、県内で最大の体育館である「桃太郎アリーナで開催できないか」という案が出ました。

そこから先生への頼み方を委員メンバーで考えて、幸運なことに学校からOKをもらい、県内で最高の体育館を1日だけ借りて球技大会を開催できることになりました。

初めての取り組みなので考えることはたくさんあったのですが、大切にしなければならないことのひとつに「後輩が『またここでやりたい』と言った時に、気持ちよくOKをもらえるような使い方をすること」がありました。

そのために、フロアのルール整備と、それの徹底が必要になりました。
自分たちが「ここまでやりたい!」という思いと、フロアとしてわきまえるべきことを突き合わせながら、施設使用ガイドラインを決めました。

そして「フロアマナー係」が誕生し、その役割を担ったのが私でした。
偶然ながら、小・中学生の頃と同じように、ルールを守らせる側になったのでした。

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デコレーション体操服に、マナー遵守を呼びかける文字を入れました。
前日に100円ショップでひらがなの文字を一文字ずつ買って、アイロンかけて貼り付けたのは思い出深いです・・

当日、ルールについて呼びかけるときの心持ちは、それまでの経験とは違っていたのを覚えています。
どんなルールが必要か?どうやったら気持ちよくそれを守ってもらえるか?と考えていくプロセスは、何より楽しかったです。

卒業してから10年近く経つ今でも、自分を成長させてくれた思い出として思い返すことができます。
実現したいことを追いかける過程に、ルールがついてくるのだと思います

■味をしめて、体育祭でもチャレンジしてみた
球技大会に味をしめて、同じ年の体育祭でもチャレンジしてみました。
私の高校の体育祭では、フィナーレに3年生がグラウンド全体でフォークダンスを踊るという伝統イベントがあります。
入退場の際に、ペアと手をつないで移動するというシーンがあります。
それまでは、ペア組は機械的に割り振られる形式だったのを変えて、青春の1ページを彩るために「任意の相手とペアで入場することができる制度」をつくりました。
このときも、事前調整のルールをつくって学年に周知してまわりました。

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「こうなったらいいな」の実現に向けて動くというシンプルな過程で、大人になった今でも思い出せるような自信がつきました。
一度やると、次もやってみたくなります。ポイントは、「味をしめる」ことにあると思います。
そして、高校時代にそういう機会をプレゼントしてくれた先生たちに本当に感謝しています。

たまたまリーダーになっている人たちへ

中学時代の私のように、なんとなく周りの期待に応答する形でリーダーになっている人も結構いると思います。
それはそれで間違いなくいいことで、幸運なことだと思います。
おそらく部活や勉強で忙しい日々を送っていると思いますが、せっかくだったら、下のようなことを考えてみて、立場を生かして行動してみるといいかもしれません。

<困り事からはじめる>
・あなた自身が困っていることはありませんか?
・あなたの周りに、困っている人はいませんか?(たった1人だとしても)
 あるいは、それを知るにはどんな方法がありそうですか?

<やりたいことからはじめる>
・あなたが「○○できたらいいな」という願いはありますか?
・周りの人は、どんな「○○できたらいいな」を持っていますか?
 あるいは、それを知るにはどんな方法がありそうですか?

<ギモンからはじめる>
・守るべきルールだと思っていることは、本当にそうなのでしょうか?

あなたが今その立場にいるということは、きっと周りの誰かから信頼されている証だと思います。その信頼は、簡単には崩れません。そうしなければならないと思ったことがあったとしたら、ぜひ話してみてください。

たまたまリーダーになっていない人たちへ

多くの人は、学校全体のことまで考える余裕がなかったり、とてもそういうことまで考える気分になれないと思ったりすると思います。

ただ、10代の多くの時間を過ごす学校が、あなたにとって過ごしやすい環境になることは、あなた1人だけの問題ではありません。
耳に聞こえる声になっていないだけで、あなたの困りごとや叶えたい希望は、きっと他の誰かの願いでもあるのではないかと思います。
身近な誰かに、あなたの小さな声を届けてみてください。
きっと、それを待っている人がいるはずです。

あなたの実現したいこと、叶ってほしいことから、ルールが育っていくはずです。

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生徒にとっても先生にとっても、いちばん難しい最初の一歩を踏み出すサポートをこれからも続けていきたいと思います。


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