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少年時代の話① コンソメ味軽蔑期

少年時代の僕はポテトチップスのコンソメ味を軽蔑していた。軽蔑の対象にはコンソメ味を好んで食べる同級生達も含まれていた。

僕は昔から人と同じことが漠然と嫌いだった。あえて人と違うことをして自分の個性を見つけ出そうとしていたのだ。当時はそれが行き過ぎて、自分の意見を余計に曲げてまで人と違う方を選ぶこともいくらかあったように思う。

コンソメ味の軽蔑もその一つだ。確かにポテトチップスのコンソメ味はうまい。濃く甘じょっぱいコンソメのジャンキーな味がなんともうまい。だから小学生なんかはみんなコンソメ味が好きだ。おやつには大概コンソメ味を食べる。少年時代の僕にはそこが気に食わなかった。「あまりにもみんながコンソメ味を好きすぎる。コンソメ味が好きなんて浅はかだ。そりゃああんなに味の濃い甘くてしょっぱい粉をふりかけりゃぁうまいに決まっているじゃないか。こうすりゃあ子どもはみんな喜んで食うだろうという製造主の魂胆が丸見えだ。それなのにみんなしてコンソメコンソメって子どもみたいに騒ぎやがって。その点僕は断然うすしお派だね。悪いが君たちと違って僕は大人なんだ。そう簡単に騙されたりしない。第一こっちの方がうまい。ポテチの味付けに余計なもんはいらない、"しお"で十分だ。それも"うす"しおでな。」……てなわけで僕はある時期から別にコンソメ味が嫌いでもないのに軽蔑し、対抗策としてうすしお派を名乗りだしたのであった。

そうと決めてから、僕は常日頃からうすしお派としての行動をとった。友達とお菓子を買いに行っては誇らしげにうすしおを手に取ったし、友達の家でおやつにコンソメ味が出てくれば、不満げに「あー、コンソメかぁ」とこぼし、友達のお母さんに「あらごめん苦手だった?」と言わせては、「あーいや、別に、全然食べますけど、はい。」などとぬかしやがっていた。なんとクソ生意気なガキだろうか。その上コンソメ味はおいしくいただくのだからひどい。「コンソメは食わねえ。こいつは俺の主義だ。わざわざ出してくれたから今回は特別に食う。」こんなのMr.ピンクの「チップは払わない主義」よりもしょーもない主義だ。

なんでもかんでも逆張り的に人の反対を行くのは、自分の意志を持っていないのと同じだ。結局は、みんながどうかなどは関係なく自分が良いと感じるものを良いと言い、悪いと思うものを悪いと言うのが、単純だが一番大事なことだと今では思う。何事に対しても偏見を持たずに考え感じる姿勢を保ちたい。

とはいえあの時の反抗心は今でも僕の根底にはある。みんながいいと言うものに対して、本当にそうなのかと疑うことで自分にとっての本当に良いものを見つける力が少しは養われたような気がする。そういう意味ではあの生意気なコンソメ味軽蔑も無駄ではなかったかもしれない。物事を受け入れるだけじゃなく疑うことを知ったのだ。

ちなみに同じ流れでアンチシーチキンマヨネーズから昆布派を名乗り、アンチたけのこの里できのこの山を推していた時期がある。

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