1月に見た写真集感想

森山大道 t-82
自分がこれまで見てきた氏の写真からは想像もできないくらい、こんなに優しい感じの写真も撮れるのか、と驚いたというのが率直な感想
初期のアレ・ブレ・ボケの流れを汲んだようなハイコントラストめの強い描写が印象的だけど、本当に多才な人なんだなぁと改めて森山大道という人の幅の広さを実感した
使ってるカメラの関係なのかケラレ気味な写真が多くて意図なのか偶然なのか無視してるのかわからないけどそれすら強い味になっていてやはりお見事


小川照夫 迥眺風景 京葉線の車窓から
めっちゃ良い写真集だった
実は昔京葉線を毎日使ってたので懐かしい車窓というのもあるのだけど、自分にとって懐かしい景色なのに写真家の視線を通して全く違う世界観が築かれていることに新鮮な驚きが得られた
一番好きなのは富士山と、不法残土の塊で『行徳富士』と呼ばれている丘が同時に写っているカット(行徳富士についてはググってみて下さい)
日本一の山と、(たぶん)日本一の不法残土の塊
これ絶対分かってて同時に撮ったでしょ(笑)


川内倫子 the eyes, the ears,
自分のアンテナが低く詩の意味をうまく理解できなかった…
なので写真の感想だけ書くと、余白を活かしたフレーミングとソフトな描写は全く自分に無い表現方法ですごく参考になった
全体的に撮れそうで撮れないというか、自分では撮る発想に思い至らない、出来ない写真が多いというか
こういうアンテナの鋭さが一流の写真家たるゆえんなのかなと思う
ソフトな描写と余白の絶妙な具合が、実際に写っているものの何倍何十倍も想像を掻き立てられて小説を読んでいるような感覚も覚える
参考にしようのない、独自の世界なのについつい見てしまう飲み込まれる感覚が心地良かった
『うたたね』も同じこと思ったけど、写真家の中でもかなりの強度で自分の世界を持っている方だなと感じる
そしてその世界を写真を通して具現化するような形での写真が多いのかな、という印象
こうした川内倫子さんの印象と自分を比較した時、自分には写真を媒介に自身の内なる世界とか感情とか抽象的なものを表現したいといったものは無く、自分が見てる世界を記憶通り綺麗に・整然に・正確に切り取って残したいという欲が強いのだなと思った
まさに、自分が何を撮りたいか・何がしたいか、がこうした対比によって炙り出されるという体験が得られた
とはいえ方向性は違う言っても、目で見た世界を記憶通り綺麗にというのは自分の内なる世界に取り込んだ情景を吐き出す作業なので本質的には同じなのかもしれない
こうした自身の思索は写真集の感想とは違うかもですが


西田航 GAZE vol.6
youtubeでおなじみ西田航さん、実はこのGAZEのシリーズ全てではないですが直近のものは買っています
前回モノクロの写真に取り組んでから一気にカラーに戻ってきたという経緯からか、モノクロの世界から帰ってきたオレが見た色彩の世界だ!!!という感じが的確に表現されているように感じる
色が有ることへの喜びというか、『やっぱ色っていいよね』というか、テンションの高さをなんとなく感じる
縦写真の構成が面白くて、境目がわからなくなるような組み合わせになっていて別の二枚の写真あgまるで一枚の写真かのような構成になっていたりして近似性のある写真を並べるのにこういう形もあるのか~と感心した
ちょうど自分が友人からちょっと写真を褒められて調子に乗ってる感ある時期(内心、オレに撮れないもんはねェ!!!的な)だったのだけど、このGAZEの色彩表現やスナップの着眼点や表現力を見てやはり自分はまだまだ凡庸だなぁと、頑張りたいなぁと思った
話ズレるけど物事の上達ってこのような"万能感を得る"⇒"叩き落とされる"の連続で楽しいですよね


森山大道 takuno
大道が幼少期を過ごした島根の宅野村でのスナップ
少年の頃と同じ視点と心持ちで撮っているのかな、と思った
最初は「あーちょっと地味だけど良いなぁ」くらいの感想だったのだけど何度か見るうちに滲み渡っていくカッコよさみたいなのが感じられていてなんというか深い、語彙が浅すぎてすんません
森山大道少年と一緒に村をうろついているような、少しそんな気持ちで見ると楽しいかも
写りすぎていない分、多くの日本人(クソデカ主語失礼します)が持っているであろう「故郷」としての田舎の原風景を想起させられて、ある程度自身の内なる田舎の光景をトレースした状態で見てしまう、そんな側面もある気がします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?