2月に見た写真集感想

植田正治 吹き抜ける風
すごい写真集だった
作為的な写真を撮る方ということで自分が主にやってるストリートスナップへの参考という面ではちょっと違うのではということも少し考えてたがそんなの関係ない(◯島よしお)良さがあった
ストリートスナップ的要素を意図的に作っていてかつその作為性を全面に表に出しているように感じた
機械仕掛けのアンリカルティエブレッソンというか
こんな写真もあるんだ!となんか新しいものを見た感じです、語彙
そしてあまり絵画のことはわからないのだけど、絵画的アプローチの写真が多いなと感じた
またスナップ領域のような写真もあるけどそちらもまるで作為的に撮ったんじゃないかと思う精巧さ
なんとなく、写真の中に表現意図というか伝えたいことが色々ありそうに見えたのだけど自分にはそれがあまり掴めなくもどかしい
写真の前には犬だろうが猫だろうが砂丘だろうが男だろうが女だろうが子供だろうが見るもの全てが等価であるという意図は、なんとなしに伝わってくる
しかし冒頭の「写真することが、とても楽しい。」というお言葉には全面同意であります。


三浦展 igochochi
主題となる場所に人がいないのにその場にいた人の居心地みたいなのが感じられる、それゆえのタイトルなのかなとか思った(違ったらすんません)
そこに見えない人の温もりを残しつつアートみのある切り取り方をした写真達はすごく見応えあって良かった
写ってないものが見える(想起させられる)、というのは良いですね


Iska 夏は幻
この方が持ってる世界観の表現と立体感ある写真による実存感のバランスがすごかった
写真集を見るというよりIskaさんの世界観を覗き見るような、そんな感覚があってその世界観は記憶の中の夏に対してけっこう刺激を受けた
共感覚ってやつを感じたな
途中、伊波真人さんという方の詩が差し込まれたのだけどこれも良かった
正直詩のこととか全然わからないけど、この写真集を通じて感じたけどふわふわして着地点がない夏という感覚に着地点を設けてくれた、そんな良い詩だったなと素人ながら感じた
夏という幻への道標みたいな言葉選びだなと思った
他の季節の写真もいい感じ


富士山 大山行男
こういうネイチャー系写真集初めて見るけど改めてネイチャーの分野は一枚一枚の力強さが凄まじい
スケールの違いというのが一目でわかる
こういうスケール感を演出で目指すのもスナップの一つの目指すべき行き先なのかもしれない
山を取り巻く自然現象的なやつを捉えた写真を見るともっとその分野への知識があれば何が起こっているかを解像感高く見れてより楽しめるんだろうなぁと思う
写実的で我々がよく見知った(しかしとても綺麗な)富士山を中心に構成されている写真集なのに、表紙が葛飾北斎風の富士山なのは富士山という無限の顔を持つ意外な側面を見せたかったのかな、と勝手ながら思った


植田正治 僕のアルバム
没後発見されたネガなどから編集編纂されたとのことだけど、植田正治妻好きすぎワロタという印象の写真集
まっすぐな思いみたいなのが見てとれる気がする
等間隔でポジショニングして作られた家族の肖像写真をこの人たちはどんな気持ちで、この時どんな会話が交わされたのか
そんなことを想像したくなるような、胸が暖かくなる写真集だった


蜷川実花 虚構と現実の間に
傑作選のような写真集だったので見たことある写真もちょいちょいあったけど、やはり色彩表現の天才だなとため息が出た
人によってはここまで派手派手しいのはもう絵でいいじゃんとなるかもしれないが個人的にむしろこれを写真でできているということに意義を感じる
一部復習的な感じで見つつ初めて見るものもけっこうあったが、『Portraits of the time』は誰でも知っているような著名人を、本来であればその人の記録としてカメラマン仕事を求められるような彼ら彼女らを、自分の作品の一部に落とし込んでしまっていて凄まじい
『写真集』と呼ばれるものはプリントを含め写真家の意思が出るものだと思ってるので基本的に紙で見たいけど、この人の写真は特に紙で見るようにしたいなぁと改めて思った


森山大道 記録 52号
いつも以上に人にフォーカスしてるような気がする、という印象
人そのものと人の気配を写してるなと
包丁の写真とか意味が全然わからないというかたぶん意味なんかないけどカッコよくてたまらない、意味なんかねぇけどとりあえずカッケェというのも写真の大事というか楽しい要素ですよね
喫煙所の写真に代表されるようなどううやったらこんな距離感で撮れるのっていうスナップは毎回ワクワクする


川内倫子 花火
どちらかというと「私が見た花火」という心象にフォーカスしてる印象
心の中を描き出してるような抽象的な描写なのにどこか懐かしくて自分の記憶の中にもある、という見えないものとそこから想起させられる記憶という塩梅が抜群に上手い
具象と抽象への行き来っていうのかな
ページ数書いてないからわかりにくいけど序盤の花火がほぼ散って華やかさの余韻が残ってる空を皆が見上げてる写真と親子が手を繋いで花火見てるのを真正面から捉えた、けど露出オーバーで花火真っ白になってて逆に想像掻き立てられる写真、最終盤の走ってる子供達の間に遠くで花火が上がってる写真はかなりシビれた


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