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数字の奥にある地方の魅力を追い続けたい―拝啓、西条より! 移住コラム その1

おきてがみ編集部の長尾愛里です。今年の9月から愛媛県西条市に移住しました。「Next commons lab 西条」という一般社団法人に所属し、フードディレクターとして、食に関する仕事に携わっています。

Next commons labは、「地方に移住し、3年後に起業をして独立する」という目的の元、メンバーが集まった団体です。地域おこし協力隊の制度を活用し採用され、課題を抱える地域で自分の興味や得意分野を生かし、新たな事業を創出していきます。私が居るのは「愛媛県西条市」の拠点ですが、この「Next commons lab」は今現在全国10箇所に拠点が存在し、それぞれの地域の特性を生かした多くのプロジェクトが動いています。私は、特に「食」に関わる分野での起業を目指して活動しています。

もともと岡山県の田舎出身で、東京に出たはいいものの、野菜の美味しくなさに衝撃を受けた18歳の春。「田舎って食べ物に恵まれていたんだなあ」と、あらためて気づきました。

そこから、都会と地方と食の関係性に興味が湧くように。その思いは消えることなく、大学卒業後は食品関係の会社に勤めました。

ただ、東京で食品の仕事に就くと、どうしても薄く、広くな関係性。効率と多売を重視した商品に携わることも多々ありました。だからこそ、生産者さんと近い距離で、非効率でもいいから、思いの詰まった食品の仕事がしたい、という思いがずっとあったんです。

良いタイミングが来たら、地方移住しようと企んで数年。たまたま、Next commons lab 西条の募集を発見。「これだ!」と思った私は、すぐさま応募しました。


Next commons lab では、先ほども触れましたが、西条以外にも拠点がありその中でも西条を選んだのは、もともと仕事で訪れていて馴染みがあり、大好きなみかんもあり、魅力を多く感じていた愛媛県のまちであったこと、西条で出会った方々がおもしろかったこと、山も海も川もそろっていること。これらの理由がばしっと当てはまって、即決でエントリーしました。

西条市に住んでみて感じるのは、「自分らしくあれるなあ」ということです。五感そのままで生きていける感覚、なのでしょうか。東京にいると、刺激はたくさんあるけれど、どこかしらに人工物に溢れる社会で、五感を動かす前に頭を働かせてしまいます。もちろん、人工物だって多くの人を惹きつける魅力があります。けれど、私という人間が、自分らしくあれる時間ではないんだなと、気づきました。

(美しい田んぼと、山と、海と、空が一望できる西条市)

人それぞれが思う「自分らしく生きる」場所は、さまざまだと思います。ただ、私にとっては、自然物に心を動かす時間が多いほど、自分らしくあれるのかもしれません。

西条では、自然物に心を動かされっぱなしの毎日を過ごしています。元気だぜ!と言わんばかりのイキイキとした野菜の美味しさ。市内で至る所に湧き上がる水のとろみがあって甘いこと。いつも穏やかな瀬戸内海のやさしい青さ。季節の移ろいを、窓から見える山々から感じること。西条の自然が、私を自分らしくさせてくれます。

(湧き水がきれいだからなのか、鮮やかな鯉が気持ち良さそうに泳ぐ)

地方には、数字に表せない感覚がたくさんある

他にも、五感をたくさん働かせながら暮らし、働く人に囲まれるのも、私にとって大事なことだなあと気付かされました。自分の育てる作物について、目を輝かせながら語る農家さん。自分の伝えたい味はこれなんだ、とブレない美味しさを提供する生産者さん。五感を使っている人のそばにあるパワーといったら!

以前出会った、とある酒造の杜氏さんが「世の中は数字で測られることが多いけど、僕はその数字の奥にある、数字で測れないものを追い続けたい」とおっしゃっていました。

私も、数字の奥にあるものを追い続けたいのかもしれません。

特に地方には、数字の奥に眠っている、人の持つ五感が積み上げてきた、数字には表せられない感覚がきっと、たくさんあると思うのです。それを、一つでも多く見つけられますように。学べますように。

このWEBマガジンは、何か悩んでいたり、迷っていたり、一歩踏み出したいなあと思っているあなたにいつでも届けられるように、手紙を置いておくよ、という意味で名付けました。このコラムは、未来の私へのおきてがみにもさせてもらえたらと思います。

アイキャッチ画像にしている、おきてがみならぬ「置き絵手紙」は、落書き好きの著者が、絵で伝えたい西条の魅力をテーマにお届けします。今後も西条からの移住コラムをお届けするので、ぜひご覧くださいまし!


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