見出し画像

Utakata投稿短歌集とあとがき



縁が合って短歌投稿サイトUtakataのテストにお付き合いしたのですが、その流れで本運用開始後もアカウント登録しました。

というわけで投稿した短歌をまとめておきます。


〈あとがき〉
※自歌自註に興味がない人はここでストップです!※

以下は作る上での意図と、実際できてみて最初の読者として読んだときの感想などを書きます。解釈の正解を示すものではなく、解釈の一つぐらいに捉えてください。


・殴るのも殴られるのも見てるのもいずれにしてもおしゃれなメガネ
 読み手とはまず殴る主体としての視点から、殴られる相手(自分が殴っている相手)を見ている気になる。と思いきや、その二人を見ている第三者までがカメラフレームに入ってきます。一首のなかで読み手の視点がせわしなく移動するところが面白みでしょうか。メガネにしたのは殴られ映えするからですが、「おしゃれ」なメガネとしたのはおしゃれな人たちへの嫉妬からです。

・もう寝癖と将来を気にしなくてもよくなった朝に塗る桃色のジャム
 寝癖と将来、この全然違う二つのもの(こと)を、「気にしない」で同一のものかのように扱うところが面白み。どちらもよく気にしてしまうものですから。でもこの二つを気にしなくてもいい世界って、なんか現実ではないような気がします。「桃のジャム」なら字余りせずに済むのですが、不穏な世界の雰囲気をにじませたくて、解釈に幅の出そうな「桃色」にしました。

・尿検査カップを少し傾けて。潜水艦が浮上する気分で
 女性はどうしているか知りませんが、男性の場合、尿検査でカップを少し傾けて持ち上げ、陰茎を迎え入れるように採尿します。日常的な行為にカップが加わるだけでどうしても緊張します。潜水艦の浮上をそれに喩えるところがこの歌の肝。誰でもする経験を少しかさまししてあげて、ちょっと異質な経験として読者に手渡したいという狙いです。
 なぜ潜水艦か。緊張感とかがリンクしているとは思いますが、それ以上にしっくりくる感じがあり、実は自分でもうまく説明できません。
 作った後、これぞまさにイエローサブマリンだなと思いました。

・長く付き合ってきたから嫌な人。コーラを煮詰めてコーラを作る
 上句と下句が比喩の関係にあるわけですが、ちょっと素直過ぎるかなと思わなくもない。面白さがあるとすれば、「長く付き合える人は気が合う人である」という常識の逆を言っているところですが、でもみんなそんな人がいるんじゃないかなと思って作りました。長く付き合うと嫌なところも結構わかってしまうけど、色々としがらみがあって縁が切れないみたいな人、いませんか? 
 コーラを煮詰める毒々しさ、禍々しさは割と気に入っています。

 優れた短歌の多くは短いフレーズのなかで、読み手に、かつて経験した体感や感情を呼び起こさせつつ、それを足掛かりにして作者独自の感覚をも追体験させます。独特のテイストを持ちながら説得力があるといわれる短歌は、この橋渡しがうまく行っているケースです。
 今回紹介した四首も同じことをやろうとしています(うまく決まったか、はさておき) 自分のテイストとして、嫌悪感と諧謔のまぜこぜな感じに持っていこうとすることが多いようです。私の日常生活の捉え方としては嫌悪の方が近くて、それは世の中を嫌っているということではなく、嫌だと感じるものに現実味を感じてしまうということです。明け方の繁華街の道路脇のゴミやヤニやススがたまっている風景とかゲロとタバコとアルコールの臭いとか、汚いなあ嫌だなあと思うと同時に、この世の真実に触れたような気がしてしまいます。性癖みたいなものでしょう。
 諧謔味を入れたいのは、単純に嫌悪感だけではあまり読み手がついてこない(読みたいと思えるようなものにならない)という判断に加えて、ユーモアを扱える知的な自分カッコいい的な気持ちもなくはない、かもしれません。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?