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姉とわたし⑨_その薄さが欲しいんじゃない

小さい頃って、
姉(もしくは兄)が持っているものがなんでも羨ましく思えてしまう、
ってことありませんでしたか?

※ちなみにその気持ちをまんまと利用されたときの思い出については、
下記記事をご参照ください。

ある日。
ショッピングセンターの喫茶店。

買い物の休憩がてら、家族でお茶をしていました。

その時姉が食べていたのは、レアチーズケーキ。
自分が何を食べてたかはすっかり忘れましたが、
姉が食べていたのがレアチーズケーキだったということは
鮮明に覚えています。

姉はその時、こう、目を輝かせながら、
ひとくち分をフォークで、
うすーーーく
うすーーーーーーく
切り取りながら食べていたんです。
レアチーズケーキを。

うすーーーーーーーく。

もう、
ぺらっぺらの
ぺらんぺらん。

で、あまりに慎重に食べてるから、
その薄いひとくちがすっごくおいしそうに見えたんですよね。
輝いていたんですよ。

あまりにおいしそうだったもんで、
どうしても食べたくなり。

沖「…(じー…)」
姉「…(こいつ、めっちゃ見てくるな)」
沖「…(くれ…)」
姉「…(こいつ、めっっちゃ見てくるな)」
沖「…(ひとくち、くれ…!)」
姉「!(あ、欲しいのか)」

という無言のやり取り(があったかどうかは知らんけど)を経て、
仏頂面の姉が、ひとくちさっと分けてくれました。

すっごい分厚いひとくちを。

沖野、がーーーん。

(あ、いや、違うんや姉さん。
私が欲しいのは、
いままであなたがまるで宝物のように
うすーーーく
うすーーーーーーく
切り取って食べていたそのひとくちであって、
このぶっといのは求めていないのだよ!)

と、当時幼児である私が
そんなニュアンスをを伝えられるはずもなく。

(薄いやつが食べたかった…)

という思いを心に秘めながら、
しぶしぶその分厚いひとくちを食べたのでした。

その時の出来事を忘れられないまま大人になり、
姉と母に当時の不満を伝えたことがありますが、
案の定二人とも全く覚えていませんでした。

(そうだよね、そんなん覚えてるの私くらいだよね)

ああ、
あの時きらきら輝いて見えた、
薄い、うすーいレアチーズケーキは、
きっとこれからも忘れられないんだろうなあ。

あの分厚いひとくちは、
優しさだったのか?
いや、優しくされたことなんてあったか?
全てをお見通しの、姉の新手の嫌がらせだったんじゃないのか?
え、どうなん?

真相は、
闇の中。

と、いう記事を書こうと、
1週間くらい前に、
自分の買い物メモに殴り書きで
「トイレットペーパー、歯磨き粉、化粧落とし、レアチーズケーキ
と、流れで書いていたら、
それに気付き勘違いした夫が
本日レアチーズケーキを買ってきてくれました。

サンキュー。
めっちゃ薄く切りながら食べるわ。

***「姉とわたし⑩_初めて優しくされた(ような気がする)日」に続く。

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