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No.703 「三密」を避け、尊びたい

新型コロナに起因する第8波が、全国で目に見えて勢いを増しています。
2019年12月初め、中国武漢市で新型コロナ感染症の最初の患者が発症するや、日本国内でも翌年の1月中旬には、初めての感染者が報告されました。
 
瞬く間に、世界中に伝播し猛威を振るった新型コロナウイルス禍に対して、日本国政府は「手洗い」「うがい」「マスク」の励行のほか、「三密」に特段の注意をするように呼びかけました。曰く、「密集」・「密接」・「密閉」がそれです。
 
コロナ禍に見舞われ、マスクをしたまま入学してきた生徒たちは、この3年間、ついに素顔を見せることなく卒業して行こうとしています。素顔は、卒業アルバムでしかお目にかかれなさそうです。彼らには、メインとなる体育大会・文化祭・修学旅行等々、多くの学校行事が中止となったり、変更を余儀なくされました。また、部活動が圧縮されたり大会が中止されたりして、若いエネルギーは発散する場、切磋琢磨する時を失いました。
 
ここへきて社会は漸く落ち着きを取り戻し、新たな社会変革や組織の改編を積極的に推し進める中から「Withコロナ」の意識が高まっています。感染防止に向けた新しい行動様式をとることが重要となっている昨今、「三密」の意識の在り方が問われているように思います。
 
その教えの鍵が、多くの方が唱える空海(774年~835年)の「三密」にあるのかも知れません。それは、私にとって驚嘆に近い発見でした。

平安初期の高僧・空海は、讃岐に生まれました。804年に30歳で入唐の後、密教(大日如来に帰依し、加持・祈禱を重んずる)を学んで帰国し、真言宗を確立しました。書にも秀でており、嵯峨天皇・橘逸勢 (はやなり) と共に三筆の一人に数えられています。その死後、「弘法大師」の号を贈られたといいます。
 
その空海の真言宗の教えが「身・口・意(しん・く・い)」を表す「三密」だそうで、
「身密(しんみつ)」は、身体を整えること。
「口密(くみつ)」は、言葉を整えること。
「意密」(いみつ)は、心を整えること。
を意味するといいます。もっと深く広い意味や教えがあるのでしょうが、この「身・口・意」を整えることで即身成仏(生きたまま仏になる)できるというのが密教の教えだと説明しています。

心と身体は不可分です。私も身体がしっかりとして、言葉や発言(口)を正しいものにすれば、自然と心や考えも整って、度を過ごしたり、人に迷惑をかけたりすることもなくなってゆくのではないかと思う一人です。

コロナ禍にあっては、支え合い(S)、思いやり(O)、助け合う(T)という「SOT」の精神が大事なように思われます。しかも、「これ見よがし」ではなく「そっと(SOT)」するところがいいですね。

自分の心と向き合いながら、空海の唱える真心を込めた行動や発言を心がけること、すなわち「三密を尊ぶ」ことは、国が唱える「三密を避ける」ことに直接的に繋がります。先ずは己から見直すことのススメだと思いました。

「空海の座りし石よ草の芽よ」  
 夏井いつき


※画像は、クリエイター・野乃花いちりんさんの1葉です。その解説に「石川県金沢市、持明院の妙蓮。 弘法大師ゆかりのハスで、花びらが千枚以上あります。」とありました。お礼申します。