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No.1199 「スン」とする?

2024年度(令和6年度)前期連続テレビ小説 第110作目『虎に翼』(脚本:吉田恵里香)の第1週「女賢しくて牛売り損なう?」、まことに面白く、愉快に視聴しました。寅子(伊藤沙莉)の「はて?」は、上半期流行語大賞の「推しフレーズ」にしたいものです。
 
昨日の第1週目金曜日(5回目)は胸のすく場面がありました。寅子の母・はる(石田ゆり子)の、凜として毅然たる態度と物言いに、桂場先生(松山ケンイチ)はタジタジです。その迫力ある啖呵は小気味よく、快哉を上げたくなりました。はるは、法律志願の寅子の大きな壁だと思っていましたが、娘の性格とやる気を買っていた(諦めていた?)のでしょうね。とても印象に残るいいシーンでした。
 
観終えた時に、脚本が面白いのは言うまでもありませんが、その演出家の力量が思われました。そこで、すぐに調べたら、「はて?」だったのです。
 
な・な・何と、演出家に3人のお名前がありました。いずれも経験豊富な方々です。
 梛川善郎(過去作 べっぴんさん、おちょやん、あなたのブツが、ここに) 第1週
 安藤大佑(過去作 とと姉ちゃん、鎌倉殿の13人、やさしい猫)
 橋本万葉(過去作 とと姉ちゃん、生理のおじさんとその娘)
 
えっ?演出を、週や月や話の構成で、かわるがわる行うのでしょうか?複数の演出家チームで進めるのでしょうか?それぞれに演出家の思惑があるでしょうに、齟齬なく、一貫性は保たれるのでしょうか?私の中の「はて?」ボタンは、乱打中です。
 
少なくとも、この第1週の演出家は、梛川(なぎかわ)善郎氏だとわかり、大いに「ゆかしい気持ち」になりました。観る者の心をわしづかみにする豊かなセンスに溢れています。

さて、番組の中で何度も使われ気になっていた、「スン」の言葉ですが、「ステラnet」に石田ゆり子さんが演出家に質問している記事がありました。こちらは、ガッテン!でした。

梛川さんに、どういう意味ですか?と聞いたら、「納得いかないときもにこやかに、穏やかに振る舞って本音は言わない、それで賢く乗り切る」みたいな態度を「スン」と言うのだと説明してくださって。私はその言葉を初めて聞いたのですが、なるほど、私の母の時代もそうだったなと思い出しました。
子どものころ、母を見て、「どうして大人の女の人は、みんなニコニコ笑って『ごきげんよう』みたいな感じに振る舞うんだろう?」と思った記憶があるんです。それが大人というものなんだなあ、と幼心に感じていました。母のあの空気を、はるさんの「スン」に重ねています。

(「ステラnet」より)

昭和13年(1938)、日本初の女性弁護士が誕生したそうです。寅子もその一人でした。しかし、彼女たちを待ち受けていたのは、戦争へと突き進む恐るべき世界であり日本でした。寅子は、法律の翼を得たのに、生かす場を失ってしまいます。そして、終戦。昭和20年(1945)、全てを失った寅子は、どう闘い、何を得たのか。法律の翼をどこで休め、どう広げて行ったのか?女性裁判官としての道は遠く険しく、母・はるの言う
「本気で地獄を見る覚悟はあるの?」
と両肩を掴んで言い放った言葉は、寅子の未来を暗示しているようです。
 
脚本家と演出家が描く、寅子が苦難の中で成長し、法律家の雛から自らの翼を獲得してゆく姿に、何度も励まされ目を覚まさせてもらえるのだろうと、大きな期待を寄せています。


※画像は、クリエイター・志彌 -ゆきみ-さんの、タイトル「とら とら とら♪ 〜志彌のフォトアルバムから〜」虎の土鈴の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。