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No.1300 家庭訪問?

今から36年も前の通信の中に、宮沢賢治「雨ニモマケズ」のこんなパロディが書いてありました。すっかり忘れていましたが、改めて読みなおしてみると、「ばかばかしさ」を超えた真実も垣間見えるように思われたので、日の目を見せようとする次第です。
 
なお、戯作者の「良苦野無男」(良く飲む男)なる人物の氏素性は、まったく分かりません。どんな経緯で私がこの作品に巡り合い、通信に載せたかも記憶にありません。私のペンネームでない事だけは確かです。もし、作者・作品をご存知の方がいらっしゃいましたら、お教えいただければ幸甚です。
 
「酒にも負けず」 良苦野無男
 打ち続く値上げ攻勢にも負けず
 借金にも負けず
 数限りないツケにも
 度重なる宴会にも負けぬ
 丈夫な胃と肝臓を持ち
 欲はなく
 いつも静かに飲んでいる
 一日に蒸留した米四合と
 梅干しと少しのイリコを食べ
 あらゆることを自分を勘定に入れずに
 飲んで 飲んで また飲んで
 そして 忘れず
 夕闇せまるころ
 いつも田中町の新六三亭の片隅にいて
 東にアル中で苦しむ同僚あれば
 行って一緒に飲んでやり
 西に飲み屋のツケで首の回らなくなった友あれば
 行ってそのツケの数を増やしてやり
 南に飲み過ぎて病に苦しみ死にそうな人あれば
 行って「こわがらなくてもいい」と言い
 北に夫婦ゲンカや家庭争議あれば
 「つまらないからやめろ」と言い
 サイフに金の無くなった時には涙を流し
 夜の帷おりればネオンの巷をふらふら歩き
 みんなに「のんべえ!」と呼ばれ
 褒められもせず
 苦にもされない
 そういう者に私はなりたい
 
私には、夜の帷がおり、ネオン瞬く都町の界隈を、流しのオジサン以上に足しげく飲み歩く先輩同僚がいました。「ちょっと家庭訪問に!」とか言って帰ってゆくのですが、ママさんの居る飲み屋を数件、家庭訪問(?)していました。間違いなく家一軒分飲んだと思われます。喜寿が近いはずの先輩は、現在、借りてきた猫のように大人しくしておられます。

 

※画像は、クリエイター・kinaさんの、タイトル「2024年、スナック眞緒 開店~♪」の1葉をかたじけなくしました。ああ、妄想するだけでも若返りそう!お礼を申し上げます。