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No.847 ゆかしく思われるお坊さん

「ちる花は かずかぎりなし ことごとく 光をひきて 谷にゆくかも」(上田三四二)
大分市ではここ数日の雨で、桜の花の多くが散りました。

ふと思い浮かんだのは、
「散る桜 残る桜も 散る桜」
の句です。江戸時代後期に生きた曹洞宗の僧、良寛(1758年~1831年)さんの辞世の句だそうです。

「今、満開に咲き誇っている桜の花も、やがては散って行く運命なのだ」
と言っているようです。人は早いか遅いかの違いであって、死から逃れることは出来ません。その確率は100%です。眼前の桜の情景に、人間の生と死の姿が投影され凝縮されているような良寛さんの達観した句です。

良寛さんは、子どもたちが大好きだったそうです。というのも、
「子どもの純真な心こそ、仏様のまことの心だ」
と考えたからだそうで、子どもらと毬つきをするのを大そう好み、懐には毬を忍ばせていたともいわれます。

また、子ども達と隠れん坊をした時に、日が暮れて子どもたちは家に帰ってしまったのに、良寛さんは隠れ続けたといいます。田圃の中で隠れ続ける良寛さんに農夫が大声で呼びかけると、
「静かに!子ども達に見つかるではないか!」
と言ったとかいうエピソードが残っているくらいです。

生涯自分の寺を持たず、平易な言葉で人々に経文を説いたのだとか。また、笑いは健康によいとされますが、良寛さんの笑いを誘う奇行などは、人々にお布施として笑いを与えて苦しみを忘れさせるようにしたという解釈があり、恐れ入りました。
 
自分の為ではなく、人のために己を投げ出す、何ともゆかしく思われるお坊さんです。
同時代の人に浮世絵師の葛飾北斎(1760年~1849年)、俳人の小林一茶(1763年~1828年)、戯作者の十返舎一九(1765年~1831年)など錚々たる文化芸術家がいました。


※画像は、クリエイター・ゆりてまりさんの、タイトル「まりと日本の遊び」をかたじけなくしました。七五三でおめかしした女の子が、手まりで遊ぶ姿を水彩と色鉛筆で描いた絵だそうです。お礼申し上げます。