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No.1024 素敵に出会う

次の記事は、全国紙に載っていた、21年前のちょっとイイお話です。「嬉しい贈り物 娘の幸せ祈る」(奈良県の会社員、石崎玲子さん)というタイトルが付けられてありました。

  昨年の成人式当日、あわただしく着付けが終わり、帰って来るまでは家にいて、という娘を送り出し、ほっとしていました。
 しばらくして、インターホン越しに「ご注文の食器洗い機を取り付けに参りました」とのこと。頼んだ覚えがなかったので、「何かの間違いでは」と答えました。しかし、「娘さんのご注文です。代金も頂いています」との返事だった。
 仕事をしている私は日ごろ、食器洗い機があればどれだけ楽か、とぜいたく品とは思いつつ、口癖のように唱えていたことに気付きました。そうこうしているうちに妹が、工事代金と手紙を姉に頼まれたと渡してくれました。
 手紙には「無事に成人式を迎えることができました。今まで何不自由なくここまでこられたのも、お父さんお母さんのお陰だと思っています」と書いてありました。
 後で笑い話になるほど私は号泣してしまいました。働いた給料からプレゼントしてくれたものでした。自分自身の「はたち」を振り返り、このようなことを考えただろうか、と嬉しさがこみ上げてきました。
 お陰様で余った時間で他のことが出来ました。日々、娘を見ていて幸せになってほしいと祈る気持ちでいっぱいです。

2002年(平成14年)1月18日付「朝日新聞」

総務省統計局の調査によると、娘さんが成人式を迎えた2001年の新成人の総数は、約157万5000人(男性は約81万人,女性は約77万人)だったそうです。当時の総人口1億2700万人の1,24%に相当していました。
 
157万5000分の1の家族のお話に「素敵に出会った」訳ですが、母娘の通い合う心がほのぼのとしていて、読者の口元を緩ませます。
 
今年、令和5年の新成人(20歳)の数は117万人で、22年前より40万人も減少していました。因みに今年の19歳は、113万人、また、18歳は112万人だったそうです。いかに少子化が進んでいるかがわかります。
 
私の成人の日は、ちょうど50年前のことになりますが、東京の区立の公会堂で詩人の草野心平氏の講演を聴いたことだけをわずかに覚えています。きっと両親に感謝の手紙を書き送ったでしょうが、それすらも記憶にとどめない不肖の息子でした。

田舎の母は、どんなものを喜んでくれたでしょうか?今となっては叶わぬ夢物語ですが、
「お前が元気だったら、それで十分!」
そう言われそうです。何もしてやれない貧乏学生でした。
 
あの娘さんは、今年42歳でしょう。今度は、母親として「成人の日」の家族の物語が綴られるのかもしれません。あなたの成人の日の思い出は?


画像は、クリエイター・鈴懸ねいろさんの、タイトル「花咲くように、しなやかに。」という成人の日の1葉をかたじけなくしました。見事なタイトルです。お礼申し上げます。