見出し画像

No.635 目に染みた「青い光」

BSプレミアムで再放送中のNHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』は、2006年度下半期の作品で、小説家田辺聖子の半生をモデルにしたドラマだそうです。タイトルは、
「芝居、こんにゃく、芋、蛸、なんきん(南瓜)」
と言い習わされた、古来女性の好むものの慣用句に因んだとされています。藤山直美(小説家)と國村隼(町医者)の名優に交じって、いしだあゆみ(小説家の秘書)が味のある役どころを演じています。何気ない日々の哀歓に幸せの意味を問われている気がして、毎朝見ずにはおられません。
 
 ♪ 町の灯りがとてもきれいね
  ヨコハマ ブルーライトヨコハマ
  あなたとふたり 幸せよ… ♭
そのいしだあゆみが、「ブルーライトヨコハマ」をリリースしたのは、1968年(昭和43年)12月のことです。ここに言う「ブルーライト」とは、横浜港や山下公園周辺の夕闇迫る頃にガス灯が揺らめき、それに照らされた青い海の情景だそうです。
 
ところが、北緯78度13分・東経15度33分という世界最北にある町・ロングイヤービエン(ノルウェー領スヴァールバル諸島)にも「ブルーライト」があることを知りました。人口2,000人ほどのこの町は、北極に近く、夏季でも月の平均気温は7度、真冬は零下30度を超える厳寒の地だそうで、11月から1月末までは、太陽が沈んだままです。ノルウェー語では、そのことを「polarnatt」(極夜)と呼ぶのだと知りました。
 
「神秘の北極圏~光と闇の旅~」(2015年、BS放送)の中で、旅人の大沢たかお(俳優)は、
「そこに生きる人々は明るくて、物はないが心は豊か」
だと語りました。幸せの本質を考えさせられる実感のこもった言葉でした。
 
そんな北極に壮大な夜明けが訪れる直前、野も山も空も海も、見渡す限り濃いブルーに覆われます。深い瑠璃色が溜まっているような神秘の色「ブルーライト」です。そこには、光と闇が織りなす冒し難いほどの神々しさと静けさがありました。
 
還暦過ぎた私の、少し見えにくくなった眼にも沁みとおるような鮮やかで忘れがたい色でした。私にとって「幸せの青い鳥」のような「ブルーライト」を見つけることはできるのでしょうか?一つの楽しみにしているのです。

※画像は、クリエイターHero20xxさんの「ネモフィラ」を掲げさせていただきました。お礼申します。