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No.786 ラジオで聴いた、ちょっといい話。

 学生らしい二人連れが、ショッピングセンターの野菜売り場で、
「今日は、もやしカレーだ。金がないからな。」
「肉の入ってないのなんて、初めてだ。」
「そう?俺なんか、いつもこれだぜ!」
と話していたそうです
 すると50代のおばさんが、
「これあげる!少し買いすぎちゃったから。」
そう言うと、肉とジャガイモを彼らのカゴに放り込み、スッと行ってしまいました。
 あっけにとられた若者でしたが、一人がとっさに掛けた
「あのう、有り難うございまーす!」
のひと言だけが、おばさんの背中を追いかけました。
 
私は、その頃、片道40kmの距離を小一時間かけて通勤していました。その日の朝もラジオを聴きながら運転していたのですが、「ちょっといいお話」でした。
 
「買い過ぎた」なんて、にわかには信じられません。しかし、そう言って若者たちに気兼ねさせまいとする心遣いも、「若者今日的金欠事情」を耳にして、見も知らぬ若者に対して迷うことなく自然に行動に移せるそのご婦人の愛ある行動に恐れ入りました。
 
「小さな親切、大きなお世話」などと揶揄されることもある時代ですが、素直に人の親切を受け入れる若者にも好感を持ちました。「有り難い」とはこのような女性の心のことをいうのでしょう。
 
小さな島国に、こんなにおおらかで包み込むような大きな心を持ったご婦人がいて下さることに、他人事ながら感動してしまった次第です。40年近くも前の事ですから、当のご本人も覚えていらっしゃるかどうか?
 
昔書いた学級通信からのお話ですが、書き残しておいたので再びその時の思いを味わうことが出来ました。

※画像は、クリエイター・CIB358さんの、タイトル「寒梅」をかたじけなくしました。有り難うございます。