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No.938 ふるさとの野よ山よ川よ海よ、雲よ風よ太陽よ!

大分合同新聞には「灯」というコラム欄があります。大分県を代表する各界の第一人者たちが日々折々の雑感を綴ってくれるもので、読後感には、一服の清涼剤のような心地よさがあります。

昨日は、高校時代の恩師・後藤宗俊先生が「ふるさとのはなしをしよう」のタイトルで書いておられました。どうかご一読ください。

 先日「武田鉄矢の昭和は輝いていた・落語家が愛した昭和歌謡」(BSテレ東)を見た。その中で北原謙二が1987年のステージで歌った「ふるさとのはなしをしよう」が特に印象に残った。
 -砂山に さわぐ潮風
  かつお舟 はいる浜辺の
  夕焼けが 海をいろどる
  きみの知らないぼくのふるさと
  ふるさとのはなしをしよう-
 この歌がリリースされたのは65年、高度経済成長の最中(さなか)、全国から多くの若者たちが上京した。この歌のきみとぼくも、それぞれのふるさとから上京して相部屋で住んだのだろう。
 北原はそんな若者の心象を情感豊かに歌った。その歌唱からは、ふるさとの家並みや野山、それを包む時代の風のようなものまで感じられた。
 この歌は落語家の立川談志師匠が特に好きだった歌で、一門の集いでは必ずこの歌を合唱したという。師匠は地方から上京してきた若者たちの、それぞれの故郷への思いを、この歌に重ね合わせていたのだろう。
 ここでふと広瀬淡窓の詩「歳暮」を思い浮かべた。日田の私塾咸宜園には全国各地から多くの若者たちが入門した。彼らの多くは年末には故郷に帰省するが、遠国からの塾生はそれもできず塾舎で寂しい年越しをした。
 -歳(とし)の暮れの塾舎の夜明け。枕を並べた塾生たちはなかなか眠れない。自然、話は互いの故郷の話になる-。
 ここでも北原の歌が聞こえてくるようであった。 (別府大学名誉教授)

「大分合同新聞」2023年7月13日「灯」欄

この「ふるさとのはなしをしよう」の作詞家・伊野上のぼるさんの故郷は、「砂山」でも知られる東北の宮城県でしょうか?室生犀星が言うように「ふるさとは遠きにありて思ふもの」(「小景異情」)なのかも知れません。あるいは「ふるさとは遠きにありてこそ思はれるもの」なのかも知れません。

昨日の恩師のコラム「灯」の隣に、ryuchellさんの訃を知らせる記事が載っていました。りゅうちぇるさんの故郷は沖縄県宜野湾市です。その観光案内のHPには次のようにありました。彼のふるさとを紹介して、哀悼の意を表したいと思います。

「沖縄とアメリカの文化が混ざり合った、独特の味わいを楽しめる宜野湾市。面する東シナ海は、サンゴ礁が発達し、綺麗な遠浅の海が広がっています。また、アンティーク家具、古着、アクセサリーや雑貨を扱うショップや、オシャレなカフェも点在。
 古き琉球を知ることのできる名所旧跡も豊富なほか、水量豊かな湧き水や多くの生き物が生息する大山湿地など、自然環境も存在します。」

宜野湾市のホームページより


※画像は、クリエイター・miikoさんの、タイトル「ふるさとの空」をかたじけなくしました。その説明には「ふるさとの海はやわらかで」とありました。イイネ、ふるさと!