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私は何者か、35
あなたと通勤途中の車ですれ違う朝のこと。
一瞬にドキドキが100回くらい。
いま、たった一度限りの時。
その、すれ違う瞬間、不思議なことにすべてがスローモーションになる。時が、引き伸ばされて滑らかにゆっくりとながれるのだ。
勝手にロマンチック妄想して、私は通勤してゆく。
そして、あなたも通勤してゆく。
その、すれ違うときの僅かの、ほんの僅かの時を生きる。
その時を愉しむ。
短ければ短いほどその時は大切なものだ。
はるか彼方の薔薇星雲から見れば、私たちの時はどんなふうに見えるのだろう。
魔女の箒星雲を漂いながら眺めてみたい。
その時を。
おそろしく永く、
おそろしく短く、
把握できそうもない、その時を。
足元のアリンコ同士のこっつんこを、いつまでも飽きず眺めていた頃のことを思い出す。
時を生きる。
この胸の、時を生きる。
私は何者か。
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