京都 若き日の恋人の肩 1
一、鶯餅
ふたりで和菓子屋のおばあさんから油紙に乗せられた鴬餅を受け取った。
風は少し冷たくて、それぞれ毛糸の帽子を被り、あなたはスタジャン、私は手編みのバルキーセーター。
歩きながら、鴬餅を頬張る。
唇が緑色になる。
緑は唇をはみ出す。
あなたは私を見ながら、自身の左頬を指す。
それは、わたしの右頬に緑が つ い て る よ ってこと。
緑に触れながら、ふたりで笑いあう。
笑いあうふたりの口も緑。
春浅い京都のふたりの思い出。
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