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17.三題噺「テロ、針仕事、水色」

「ねえねえマカロンくん」

 家庭科の授業中、私は生徒会長のマカロンくんを呼んだ。

「裁縫の途中で話しかけられると手元が狂って危ないだろ」

「それくらい何でもできて器用なら大丈夫だよ」

 マカロンくんはちゃんと針を置いてから私を見た。

「なんだ?」

「教室にテロリストが襲撃してきたのを無双して撃退する妄想って、やっぱり男の子なら誰でもするの?」

「定番だって聞くな。80%の男子中高生はしてるんじゃないか?」

「多いね。マカロンくんも?」

「当然。何度もしたさ」

「自分側の妄想だけじゃなくてテロリスト側の事情とかも考えた?」

「その視点はなかったな……。そこに至るとは才能あるかもな」

「ほんとっ!?」

 私はワクワクして思考を巡らせた。

「じゃあじゃあ〜。テロリストも実は普段は針仕事をしてて、裁縫から仕立て、他には編み物もできる評判のお店を営んでて〜……。事情があってテロ活動をしてるの。戦場では水が流れるように人を刺し殺すから【水色のまち針】って二つ名が付いた! って設定はどうかな?」

 私の目は、今きっとキラキラしてる。
 だって、こんなにもセンス溢れる設定を考えついたんだもん。

「ださっ……」

「えぇ!? かっこよくない!?」

「センスを疑う。3秒でお前よりマシな二つ名を考えられる自信があるな」

「例えばどんなの?」

「……夜に紛れて敵を暗殺すると仮定して、【闇夜に煌めく一筋の閃光】とか。【殺人印のルレット】とかだな」

 ぐぬぬ……。ほんとに3秒で中々いいものを考えおる。

「私のみたいに流れるように相手を刺す人なら?」

「とりあえず一撃必殺とか付けとけばそれっぽいんじゃないか?」

「【一撃必殺のチャコペン】とか、めちゃくちゃにかっこいいよね?」

「いや…………。なんも言えないわ」

 マカロンくんはため息をついて憐れんだ目で私を見た。

「もうお前は二つ名考えるのやめとけ……」

「そんなぁ〜〜〜〜」

 今度、後輩くんにも私のすんばらしいセンスを披露してあげようと思ったのに。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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