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3.三題噺「脂肪、改める、オーバーヒート」

「え。嘘でしょ?」

 体重計を見て、私は戦慄した。

 前回がいつかは覚えてないけど、平均体重を少し下回るくらいの健康体だったのに。

 筋肉が減ったのか、脂肪が減ったのか、両方なのか……。

 こないだ小籠包を食べに行ったせいなのかな。

「いや、いやいやいやいや」

 体重計が壊れてるんだよ。
 そうだ。きっとそうなんだ。
 明日測ったら元の体重に戻ってるよ。

「我が妹は体重計の上で何してるのかしら」
「あ、お姉ちゃん。おかえり」
「ただいま。手を洗うからそこどいて」
「はーい。今日もお仕事お疲れ様」
「ありがと」

 スーツ姿のお姉ちゃんと一緒にリビングに行って、さっそくソファにダイブ。
 ここが私の定位置で特等席。
 スナック菓子が欲しくなる。さっき食べたけど。

「で、体重計に乗りながらぶつぶつと独り言を言ってどうしたの?」
「あ。そうだ。お姉ちゃん。あの体重計壊れてるよ」
「……太ったのね」
「うっ……」

 お姉ちゃんの視線が痛い。
 せっかく現実を見ないようにしていたのに。

「そんなにだらけてると、いつか痛いめに遭うかもよ?」
「えぇ〜。痛いめって?」
「代謝のオーバーヒート……。メタボリックシンドロームよ」
「……」

 私の首筋に冷や汗が垂れた。

 それは流石にまずい。

 たしかに、放課後や休日はもっぱらだらけて欲望のままお菓子を食べてるし、運動は体育の授業でしかしてない。

 私は現実を直視した。

 お腹をつまむ。ぷにっと柔らかな感触。
 二の腕をつまむ。そこも同じ。
 足だって一回り太くなったかもしれない。

 こんな私のことを、あの人は好きになってくれるだろうか。

 見た目にこだわるような人ではないことは知ってるけど、それでもこのままは私が嫌だ。

 生活を改めると決意した。

 それから私は生活改善ウィークと名づけた超短期間ダイエットを決行し、無事体重を元に戻すことに成功した。

「ほっ……。よかったぁ」

 一安心。
 私はそれはそれは甘いチョコレートをご褒美として頬張るのだった。

「我が妹は、懲りないわねえ……」

 お姉ちゃん。ため息つくと幸せ逃げちゃうよ。また婚期が遅れちゃうよ?



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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