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短編小説 『なにから話そうかな』(ショートショート)

★この作品は後続の『青春ホルダー』と『過ち』とリンクさせております。
各登場人物の心境に注目してください。
読了目安時間:5〜10分程度


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バレないか不安だ。。。
今日はあいつらと忘年会で2年ぶりに5人全員集合する。もちろん僕と恭子の関係を知っているやつはいない。普通にしていればバレるはずがない。大丈夫だ。
『祥吾!!おせえよ、みんなお前待ちだぞ!早く来い』
優太からのLINEだ。いそがなきゃ。

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「わるい!!お待たせ!」と言って、祥吾が真冬なのに額の汗を拭きながら店に入ってきた。
今日は大学時代、スキーサークルの仲が良かったメンバーで忘年会だ。
祥吾は俺がずっと片想いしていた美雪と3年前に結婚した。なんでいつもこうなんだ。
祥吾はいつも1番で俺が2番だった。大学の成績もスキーも恋愛も…
祥吾はどこに行っても人気者だった。こいつとは高校3年から一緒でずっと悔しい思いをしてきた。
こいつは俺の事を親友だと思っていて、俺よりも優れているということを気にしていない。それが一番気にいらない。

ただ、これからは俺とこいつの立場は替わる。
美雪はもう俺の女だ。1年前から美雪と寝ている。大学の4年間ずっとアプローチしていて全く実を結ばなかったが1年前、急に美雪から連絡がきた。
当時二人の関係がうまくいっていなかったらしく、相談に来たその日に俺と美雪の新しい関係が始まった。美雪と会いホテルに行き、服を脱がしベッドに入る時が1番幸せだ。祥吾に勝った気がする。

「じゃあみんな揃ったから乾杯しなおそうぜ。」俺はそう言って祥吾に生ビールを渡す。今日はこいつに俺たちの秘密を伝えてやる。

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「じゃあみんな揃ったから乾杯しなおそうぜ。」
優太くんの乾杯の音頭で忘年会が始まった。
今日は私と優太くんの事が祥吾にバレないかとても不安だ。
本当はこの集まりに来たくなかったけど、
俊くんから、どうしてもこのメンバーに伝えたい事があると言われて断るのも不自然だ。なんの報告かわからないけど、聞いたらすぐ帰りたい。。。
テーブルの下、優太くんはみんなにバレないように私の脚に手をのせる。私はそれを振りほどく。このままじゃ絶対に気づかれる…
あれ、そういえば祥吾がいつもと表情が違うような…もう私と優太くんの関係に気づいてる?…そんなはずない。寒がりな祥吾の汗がひかない。なんでだろう…

「みんなほんと久しぶりだよね。俊くんから急に連絡きてビックリだったけど、今年中に集まれてよかった。そういえば、報告したい事ってなに?」
はやく報告を聞いて体調悪くなったふりして家に帰ろう…

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「そうそう悪いね急に集まってもらって!いや実はね……ってはえぇわ!!もうちょっと酒飲んでからにしようぜ、みんなの近況聞かせてよっ!」

…あれ??久しぶりに集まったのにみんな全然嬉しくなさそうだぞ。こういう時は幹事の俺がいつものようにふざけイジられて場を和ませるんだろうけど…

祥吾はずっと汗かいてるし、優太は美雪への視線が多い気がするし、なによりも恭子が全然楽しそうにしていない。みんなに今日の会を誘った時も優太以外は消極的だったんだよな。
恭子と俺が付き合う報告を1番最初にしたかったのはこのメンバーなんだけどな。俺が知らないところで何かあった気がする。
「祥吾、真冬になんでそんな汗かいてんの?今日変だぞ、昔から僕はいつも冷静だ。とか言ってるくせにさ、どしたの?」
祥吾とは昔からの仲だ。とりあえず祥吾に会話運んでもらおう。

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空気読め俊。
普通の顔してるはずなのに俊にいつもと違う事がバレてる。汗がとまらない…
乾杯してから恭子が全然話してないし、この雰囲気違和感しかない。
恭子には昨日
「絶対僕たちの関係は美雪にバレないし、どんな報告か知らないけど、どうせまた俊のくだらない報告なだけだから、その話題をひろげて、みんな酔ってすぐ解散でしょ。」と言って安心させたつもりなんだけどな。

優太が美雪と近い気がするな。。。美雪の表情が暗いな、なんなんだろう。はやく帰りたいけどこのままじゃまずいからとりあえず俊からの報告聞いてから、みんなを酔わせて解散すっか。というか、俊の報告ってなんだ?

「いやなんもないよ、さっき優太から催促のライン来たから超走ってきてユニクロのヒートテックでやられてる。超暑いだけだわ。昔から冷静だ、なんて言ってないだろ!笑 俊の似てないモノマネやめろ!笑とりあえず、今日はみんな久しぶりなんだからのもうぜ!!」

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祥吾、たしかにいつもと雰囲気違うな。まあとりあえずジャブうってやるわ。
「そうだな、もう一回乾杯しとく?笑 俺の近況はなー、仕事も恋愛もうまくいってる感じかな。今が一番人生で調子いいかもしんない。」
さあ聞いてきてくれ、恋愛の方の話を。美雪の方を向きながら含みをもたして返事してやろう。

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恭子が少し微笑んでるように見えたから、もう言ってしまおう。
「そうなんだ!優太は大学時代からなんか幸薄そうな感じだったもんな!!笑 今人生花咲いてよかったじゃねえか!!恋愛も調子いいのは俺も一緒でさ、もう報告しちゃうわ!いいよね?恭子。」

今日はこの話で持ちきりだな!みんながどういう反応するか楽しみだ。

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おもしろい。みんなが隠し事をしていておもしろいな。
つい先月、私が街を歩いていたら優太君と美雪がホテルから出てきたところを見た。今日の優太君と美雪をみると順調に不倫が進んでそうだ。ずっと仕向けてきた甲斐があって、嬉しい。
たしか優太君は祥吾のことずっとライバル視してたっけ。優太君の表情を見ていると、今日もしかしたら祥吾にバラすのかもしれないな。美雪が本当に早く帰りたそうにしてて、笑える。

昨日祥吾に美雪と別れればいいのにって言おうと思ったけど、別れるのも時間の問題だね。
俊は私と付き合った事を、みんなに伝えたくて集めたけど、正直私は全然好きじゃない。祥吾に少しでも振り向いてほしくて、本気で興味を持ってほしくて、わざわざ私から俊にアプローチして付き合った。俊には悪いけど、祥吾と美雪が離婚したらすぐ私たちも別れるつもり。だってずっと祥吾の事片想いしてたんだから。なのに、大学からずっと祥吾は美雪と仲が良さそうだった。『浮気』よりも『不倫』の方が決定的だから、2人が結婚してから3年間、ずっと美雪の相談を乗ってあげてタイミングを伺ってたの。

1年前、うまくいってない相談をされた時にチャンスだと思った。今日、絶対に祥吾を手に入れる。。。

「あのね、ワタシ、みんなに話したい事があるんだけど…」

なにから話そうかな

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