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【読書感想】1ミリの後悔もないはずがない

1ミリの後悔もない、はずがない 一木けい 新潮社文庫

 
 第15回、女による女のためのR-18文学賞で読者賞を受賞した作品です。

 最後読み終わったとき、会社のお昼休みの時間だったんだけど目は潤んでるし本を開いてもったまま天を仰いじゃったよね。すっっごく良かった。この本も自分にとっての大切な本になるなと思いました。

 セックスシーンなども出てくるんですけど、下品じゃないけどちゃんとエロい。そしてそれぞれの話が一番最初に収録されている『西国疾走少女』の主人公由井とつながっているのに、由井が学生時代大切に思っていた桐原が主人公の物語や桐原の現在については全然話のなかにでてこないというのもまた良かった。

 私はどうしても最初にこの人が主人公だと思った人を中心に物語を捉えていくところがあるので最初の『西国疾走少女』と最後の『千波万波』を一番面白く読んだけど、『ドライブスルーに行きたい』でミカと由井がドライブの話してるところとか、『潮時』の酸素マスクのシーンとかも好き。最近気がついたんだけど、多分誰かが誰かをその人のやり方で大切にしたり思ったりしているのがわかると胸に来る。

 あとは有島武郎の『小さき者へ』が読みたくなります。幼きものたちが過酷な状況にあるとき大人がなんと役に立たないことか。なんなら毒になることか。それでもほんの一握りでも信じられる大人が存在してくれたことの、愛した人が、愛してくれた人がいたことの大きさを、由井が負を立ちきって進もうと思った日のことを娘に話すことばで気づかされる。

まだ読んでいない方がいらっしゃれば読んでほしい本でした。


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