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2つのCircular Economy カンファレンス《後編》

2023年に参加した2つのCircular Economy カンファレンスに参加し、前回は
1つ目のCircular Design Praxis 2023 @京都芸術繊維大学について記しました。
今回は後編として、2つ目の新東通信主催のGREEN WORK HAKUBA vol.5 @長野県白馬村のポイントを綴ります。


GREEN WORK HAKUBAとは?

自然の恵みと共に生きる白馬村の近年大きな変化の一つが、気候変動による雪不足問題です。この危機的状況をうけ、白馬村はサーキュラーエコノミー(CE)を取り入れた「サスティナブルなマウンテンリゾート」の実現を目指し、白馬村の事業者や村外のパートナー企業がカンファレンス、ワークショップを重ねながら白馬村の未来をつくっていく、「GREEN WORK HAKUBA」プロジェクトを2020年からスタート。2021年にはHAKUBA CIRCULAR VISIONを発表し、白馬村のサーキュラーエコノミーを推進するプロジェクトが続々と生まれています。
筆者はサーキュラーエコノミーについて学ぶ過程でこのプロジェクトとのご縁をいただき、vol.2、vol.4、そして今回、2023.09.06-08に開催されたvol.5に参加しました。

HAKUBA CIRCULAR VISION
「サステナブルを遊ぶ、企む、つくる。」

大好きな自然を守りながら、自分たちの暮らしも豊かにする。簡単ではありません。だからこそ、楽しみながら挑戦したい。
遊ぶように考え、集まって企み、手を動かしてつくる。これからも、自然と遊びながら暮らす村。それが白馬です。

GREEN WORK HAKUBA ホームページより
2023.09.07 白馬村 (筆者撮影)

Highlights

GREEN WORK HAKUBAが目指すCEとは

Speaker:福島 洋次郎氏 白馬村観光局 × 榎本 裕次氏 新東通信/CDS.
人口約9,000人の白馬村を訪れる観光客数は、年間200万人以上。約1/2がオーストラリアからで、およそ1週間ほど滞在する。白馬はもともと民宿発祥の地と言われていて、かつてガイドが自宅に観光客を泊めていたのが始まりで、約900施設、約30,000のベッドがある。実は長野オリンピックの過剰投資が回収しきれていないという背景も。
白馬の環境資源である白馬大雪渓は、例年にない少雪や猛暑などで雪渓の雪融けが進むとクレバスや崩壊が発生し、登山道の安全のため通行止め措置が取られることがあるなど、気候変動で経済が立ち行かなくなるおそれがあり、2019年に白馬村気候非常事態宣言が発令される最中、同年にGREEN WORK HAKUBAがスタートした。
様々な背景を持つ仲間たちと、サーキュラーエコノミーの実証を目指している。

GREEN WORK HAKUBA ホームページより

KEYNOTE: 循環都市ロンドン/ReLondonに学ぶ
 CE先進エリアのビジョンと進め方

Speaker:加藤 佑氏 ハーチ代表取締役
ロンドンでは、イノベーションを推進するロンドン市⻑とロンドン⾃治区のパートナーシップによるサーキュラーエコノミー推進機関のReLondonを展開し、Circular Economy Route Mapを発表。ロンドン市内の廃棄物や資源の循環を促進するなど、持続可能な循環型経済へと移行するための指針を示している。さらに、ロンドンの 33⾏政区とグレーターロンドン庁と連携し、The London Circular Construction Coalitionという循環型建設への移⾏を加速するプログラムを推進したり、中⼩企業の⽀援、市民の意識向上の活動を行ってている。
日本においても、鎌倉でごみの削減や再資源化を超えた新たな循環型社会モデルの実現を目指す「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」プロジェクトが、産官学民連携プロジェクトで始まっている。

Session: 白馬村の自然資本の可視化と地域価値の創造

Speaker:馬奈木 俊介氏 九州大学 都市研究センター長
持続可能と経済成長を両立させるには、GDPに変わる新しい経済指標「新国富指標」が必要である。日本では1961年を基準に、GDPで示される客観的well-being指標は増加傾向にあるが、生活満足度といった主幹的well-beingとの間には大きなギャップが膨らみ続けている。これは、1人当たりの自然資本の減少と比例している。地域資源を可視化し、製品やサービスなどの取り組みのESG評価を行い、自然資本の主流化を目指すことが必要である。
ESGを経営に取り入れない企業や街は、存続ことができない。

Work Shop: iFixit STEAMワークショップ

ファシリテーター:iFixit Japan 土井 みどり氏
購入した機器を自分で「修理する権利」が欧米で認められつつある。さらに、修理しやすい設計「Repairbility」の大切さを体験するワークショップ。

GREEN WORK HAKUBA ホームページより
iPhone11内部と専用工具セット  1つ1つの部品が美しく並ぶ (筆者撮影)

修理において重要になるのが「リペアビリティ」つまり、 修理のしやすさである。iFixitではこのリぺアビリティを下記の3つの指標でスコアリングしている。
1.分解・組み立てが容易で、非破壊・可逆性がある。
2.工具や部品が、安価で広く入手可能。
3.デバイス内の最重要な部品や、修理頻度の高い部品に優先的にアクセスできる。
確かに開いてみると、初めての工具に戸惑いもあれども、分解と組み立てはしやすい。一方、他のチームは他社スマートフォンを分解していたが、なかなか複雑だったようだ。
基盤やコネクタの配列の美しさに、Appleのデザインへの想いを時間できたワークショップであった。

カンファレンスを終えて

2つのカンファレンスで共通して痛感したことは、「自然環境を無視した生き方は、もう持続性がない」ということ。私たち1人1人が日常から自分たちの選択するものが、環境にとってどのような影響があるのかを考える必要があり、その積み重ねが企業や経済を動かしていくという感覚にダイレクトに触れたように思います。
私たち一人ひとりの選択が、消費・廃棄になるのか、はたまた循環させることができるのか、という判断基準や眼差しを持つことで、トレンドを変えることができるのです。
今回参加した2つのカンファレンスでも、同じ感覚を分かち合える仲間と出会い、語らうことができました。
カンファレンスで得た発着想を具現化し、ムーブメントを創出していきたいと思います!

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