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偽善者なので献血に行ってみた

私は常々、良い奴に見られたいと思って生きている。「ありがとう」と感謝されたい。「助かった」と言われたい。
そんな感じで「良い奴に思われてえ〜!」と良いことをしている。だから自分のことを善人じゃないと思う。つまりは偽善者だ。

なので善行を積む、ではなく偽善行を積むと称して人助けをする。
でも。やらない善よりやる偽善。
鋼の錬金術師でウィンリィの父ちゃんもそう言ってたので悪いことでは無いのだ。多分。

電車なんて絶好の偽善行SPOT
フラついている高齢の女性に「お姉さん、どうぞ」と有無を言わせず、それでいてジェントルに席を譲り「すぐ降りるので」の一言も忘れない。
混み合ってきた車内で子どもを連れて家族サービス中のお父さん、お母さんが居た場合も席を譲る。子どもだけでも座らせることができればお父さんたちも一安心。
大抵の場合、一緒に居る人間、もしくは知らない隣の席の人も釣られてお母さんに席を譲って笑顔を振りまく。やる偽善の輪は繋がっていく。

エレベーターもスロープも無い駅で赤子を抱き、幼児を連れ、荷物とベビーカーを持ち途方に暮れるお母さんの背後から「ベビーカー持ちますよ」と声を掛け、担ぐ。
チビだが筋力は小さいゴリラなので問題無い。その時は子どもを「可愛いですね!」と褒めちぎることも忘れない。
特に女の子はニコニコ笑顔のご機嫌になる。

自転車がパンクして徒歩にくれる人を自転車屋まで一緒に歩いて案内したり、冬に寒さからかバス停で身体が強張ってしまったおばあちゃんを支えたり。これはもう完全に紳士。偽善者と言う名の紳士だよ。

そんな感じだからか顔がロシア人男性と称される程度に厳ついけれど道をよく聞かれる。それも8割は遊びに出たアウェイで。
東京で、大阪で、福岡で、青森で、金沢で。大荷物を抱えていて旅行者丸出しでも聞かれる。

ダイソンか、私か。

それぐらいの吸引力がある。
イベントの前乗りで彷徨っていた商店街でアジア人男性が私の顔を見るなり物凄い勢いで近寄ってきてペラペーラ!グム、スタバ、ペラペーラと恐らくは『この辺にスタバが無いか?』と英語で尋ねてきた時には物凄い片言で応対した。なんで真っ先に私のとこに来た。なんとかなりそうだったのか。旅先だったのでGoogleマップで調べて身振り手振りで教えた。スマホがあって良かった。

電車で「〇〇駅に止まる?」と聞かれることもしょっちゅうだ。どうしてそんなに皆私に尋ねようと思うのか聞きたいくらいに。
きょろきょろと乗車してきたバックパッカーな外国人の2人組に『この駅に行くにはどうしたら良い?この電車乗ってて大丈夫?』と聞かれた時はドアの上の停車駅一覧で現在地を指差し、「YES!Now …Here!」と一言。頷く2人。

そして目的駅まで順番に駅名を指差し「One、Two、Three!three station!」と出川も真っ青な適当英語で乗り切った。でも解ったらしくめっちゃ笑顔で去っていった。
こんな感じで日々偽善行を積んでいる。


そして今日。
やっと店が開き始めたので本屋に行こうと商店街を歩く途中、献血の登りが見えた。
父と同じくらいの男性が献血協力を呼びかけている。
無意識に偽善者スイッチが入ったらしい。気がついた時にはふらっとその男性に寄っていき「献血、どこでやってるんですか?」口が勝手にそう言っていた。

案内されてやってきた献血ルーム。12年前に成分献血をやったが長丁場に加え針の刺さりが気になって「これちゃんと刺さってます!?」とめんどくさい人間ぶりを晒して疎遠になり12年。

質問事項の紙を読み、名前やら身長、体重、住所などを記入。400ml採るには体重が50キロ以上必要だ。確かそうだったと思いつつ書き込む。問題ない。50キロ以上ある。

問診票を見たスタッフの人が私をじっと見て首を傾げる。

「ん…?体重50キロありますか?大丈夫ですか?」
「大丈夫です。あります」

「でも念のため体重計に…」と言われた時は痩せて良かったぜ!と思った。前回は疑われもしなかったもので。

血管を確認されまずは問診。血圧を計り質問に答えた後、飲み物を勧められる。冷たい物は血管が収縮するとかで血を取る前は温かい飲み物推奨とのこと。

カフェオレを飲み、待合室でサンドウィッチマンを見つつ待つ。
そのうち事前血液検査で左手から少量の血を抜かれ『めちゃくちゃ良い血…』と絶賛を受けた。確か12年前も絶賛された。私の血は良い血らしい。そりゃあ蚊も寄ってくるってものよ。

バームクーヘンを与えられ順番まで待機。サンドウィッチマンはバスに乗っている。楽しそうだ。
今度はオニオンスープに手を出した。
結構人が多い。待ちの人と、採血後に休憩する人なのだろう。
TVの中のサンドウィッチマンはシュークリームを探している。

10分ほど待っただろうか。名前を呼ばれ採血ルームへ。正直注射苦手なんだよな〜と思いつつ、ベッドに乗る。苦手ならなんできた、と思うだろう。

ハッハッハ。偽善行為をしたいんだ私は。

献血用のベッドは足元はタクシーを思い出させるビニールシートが貼られて居て土足だ。検査した時とは逆側の右手で血を抜かれるらしく、ゴムバンドをされ消毒をして少し待つ。

テレビが見られるのでサンドウィッチマンの続きを点けた瞬間
『じゃあちょっと痛いですよ〜』刺されるのと同時にめちゃくちゃ良い笑顔で伊達ちゃんがシュークリームを頬張り、富澤さんが「1000個食える」と言ったせいで吹き出した。おかげで緊張する間もない。


針が刺さり固定される。少々違和感はありつつもそこまで気にならない
ぞくぞくと血が出始める。ドクン、ドクンと。たまにブワッと。
そんな間もシュークリームをまだ食べているらしく「180円?実質タダだな!」と絶賛する2人の声がする。
テレビを観つつも献血後のフラつき防止のために足の指先を反らしたり、力を入れたり。
サンドウィッチマンがポニーの引く馬車…とは言えない馬車に乗って「最悪の乗り心地」とコメントし、飼い主に「転んでも大丈夫!太ってるじゃん!」と失礼な返しをされている間。10分から15分ほどで採血は終わり、針は抜かれていった。いつ抜かれたの気がつかないくらい上手だ。


絆創膏を貼られ包帯を巻き、血圧を測って良しが出た。30分は休憩してってね!たくさん水分取って!とのことなので遠慮なく今度はカルピスを飲みコーンポタージュを飲む。
そして採血前の10分、後の待ち時間の30分でこれを書いていた。

休憩し終わり「偽善行をしたので甘いものを食べても良いだろう」とお気に入りの鯛焼きを食べることに。

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店頭のベンチに座ると目の前の立ち飲み屋がよく見えた。開けっ放しのドアの奥に酔っ払いたちが見える。楽しそうで何より。
しかしこの鯛焼き、焼き立てで餡子が熱い。中々食べ進まない。そうこうしている間に通行人と目が合い、見つめ合うこと3秒。
その2人も鯛焼きを買いに並んだ。人が食べてると美味しそうに見えるよね。


生温い風が通り抜ける。夏が近い。
今度献血が出来るのは9月。涼しくなる頃にまた偽善行を積みに出かけようかと思う。

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