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エブリデイ大原美術館 9日目〜女の老いと美〜

毎日、どの作品を見ようか楽しみにして入館する。
行ってみて、ピンときたものを選ぶが、
人が多いところにはなるべく行かない。
なので、基本的には1作品以外は、スルーしていく。

今日の発見

本館2階の階段を降りるあたりを通りかかった時、
風にゆられ、すごい数のイチョウの葉が舞い落ちていた。
雨かと思うくらいの量だった。
葉の落ちたイチョウの樹は、枝だけになっていき、
寒々しくもあり、色がないからか、老いぼれた感じもしてしまう。

窓から外を見て、うわぁ〜と見ていたら、
お隣の倉敷国際ホテルの敷地にイチョウの落ち葉でできたハートを発見。

ここは、新渓園と大原美術館に囲まれた中庭のような場所。
ホテルの客室から見えるのか、見えなければただのスタッフの遊びか。
遊びにしては、ハートの形状が素晴らしくうまい。

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今日の作品は、やなぎみわの「寓話シリーズ・エレンディラ」

エブリデイ大原美術館で、初の写真作品。
モノトーンの写真は、白と黒のバランスで言えば、黒が多いイメージ。
だが、暗いイメージではない。

不思議な老婆

圧倒的に目につくのは、老婆の顔。
老婆ではなく、老婆の顔。
それは、あまりにも老婆で、おばあちゃんではない。
大きな鼻に三重顎、額に、頬に、シワとたるみ。
ロン毛で金髪の頭にはティアラ、
首には真珠や宝石のネックレスが数え切れないほど。
両手は皮のグローブとブレスレット。
ハイバックチェアに座り、死神が持っているような鎌を左手に持っている。

この老婆、何かがおかしい。
顔が異様に大きい。
むしろ、体が小さい。華奢だ。
待て待て、そんなもんじゃない。
割と露出の大きいワンピースを着た老婆の手足は、ピチピチだ。
シワもなければ、たるみもない。水だってきっと弾く。
魔法をかけられて、顔だけ老婆にされたかのような不思議な光景だ。

白い女性の裸体

画面右側は、白いシーツの楕円形のベッドには、
女性が横たわっている。
モノトーンの写真では、ベッドもシーツもその身体も
白く光り、美しい。
老婆との対比が、いっそう情勢を若々しく感じさせる。

全然、意味がわからない

画面の両サイドには、カーテン。
カーテンの向こう側から見えいる感じ。
だったら、もっとカーテン部分が多い方が、覗き見しているようで
楽しいのではないか?と感じてしまう。

老婆の後ろには、ドア。
背景の壁に描かれた絵?
なんなんだろう?

エレンディラ

コロンビアのノーベル賞作家ガルシア=マルケスの異色の短篇集。
“大人のための残酷な童話"として書かれたといわれる6つの短篇と中篇「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を収める。

この写真は、
「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」
の1シーンなのだろうか。
聖書の1シーンを絵画にしたように。
いや、こんなシーンはない。
絶対的に違うのは、この写真では、老婆が老婆ではない。

ある嵐の日。
14歳のエレンディラは、いつものように祖母の言いつけ通り、こまごまとした身のまわりの仕事をかたづけると、疲れて寝こんでしまい、ろうそくの火が風に吹かれてカーテンに燃え移ったことに気がつかなかった。
屋敷はたちまち燃え盛り、祖母とエレンディラは無一文になってしまった。エレンディラは、人生のすべてをこの過失を償うために生きることになる。村の食料品屋の男やもめのところヘ連れていかれたエレンディラは、200ぺソと食料3日分とひきかえに彼に処女を与えた。
それ以来、売春を商売に国中を巡る二人の旅がはじまった。行く先ざきでテントを張り、通りがかりの密輸業者や無国籍者を相手にしたこの商売は成功したちまちエレンディラは砂漠の人気者となった。
ある日、祖母は客たちの列の中に天使のような少年を見つける。ユリシスと名のる彼は、父親と共に農場で作ったオレンジを売り歩いているのだ。
「明日の朝おいで」といわれたユリシスはそっとテントの中に忍び込んだ。若く清潔な感じのユリシスに、エレンディラは身体を与えた。エレンディラを忘れられなくなったユリシスは、農園で採れたオレンジを3つ持って再びエレンディラの許を訪れた。オレンジの中には本物のダイヤがひとつずつ入っているのだ。
祖母の手から彼女を救おうと、ユリシスは、彼女を誘い出して古い車で逃げることに成功するが、たちまち、父親と祖母に追いつかれ砂漠のまん中で捕えられてしまった。再びエレンディラのテント生活がはじまった。行列は日ごとに長くなってゆく。
ある夜、エレンディラは、祖母に殺意を抱いた。しかしいざとなると実行できない。絶望の底から、彼女はユリシスの名を呼んだ。その時ユリシスは目をさましエレンディラの許へと急いだ。エレンディラと会った彼は、祖母殺しを決意した。毒入りの誕生祝いのケーキを大量に食べる祖母。しかし彼女は平然としている。
遂に祖母に斬りつけるユリシス。大奮闘の末やっと祖母が息絶えた時、エレンディラはユリシスの呼ぶ声に振りむきもせず、砂漠の彼方ヘと走り去るのだった。

女性の敵は、女。女の敵は、老い

女性の年齢が増すことによる変化は、男性のそれはかなり違う。
神秘や美の要素がなくなっていく。
シワが増え、醜くなることとも少し違うような気がする。
女が女でなくなっていくという感覚を女性は持っているのだろうか?
エレンディラは、老いていくから逃げたのか、それとも??

女性の感想を聞いてみたい作品

結局のところ、私は未だこの作品が腑に落ちていない。
なんでこの作品を作ったのか、この作品になったのか。
寓話の挿絵ではない。
明らかに老婆と女を通じて、何かを言おうとしている。

女性は生まれながらにして、美というものと生きていく。
単純に外見の美もあれば、そうでないものもある。
男性には、比率として少ない。
若さという部分で言えば、男性も女性もない。
若いことが、愛おしく思えるのは、その時間が短く儚いからかもしれない。
そして、若い時にはその貴さを感じることは意外に少ない。
若いことと美が重なる部分に対し、人は妬みや嫉妬を生むことがある。

だからこの作品はその妬みや嫉妬を描いたようにも思えない。
皆さんの感想を聞いてみたい。(どの作品もなんだけど・・・)
特に、あらゆる世代の女性の声を聞いてみたい。

エブリデイ大原美術館8日目はこちら

毎日、大原美術館に行くようになった理由


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