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EVERYDAY大原美術館2023 vol.2「ムンクは世界の中心で何を叫んだのか?」

2日目の大原美術館。
訪れたことがある人なら知っていると思うが、大原美術館の本館の扉を開けると、大きな和装の女性、女の子が迎えてくれる。児島虎次郎の「和服を着たベルギーの少女」。華やかな色が目に眩しい和服、はっきりした目鼻立ちの題名通り女性というより少女がこちらに眼差しを向ける。油絵の立体的で色の強さを感じながら、立ち止まらざるを得ない。

今日の1枚

今日の1枚は、この少女の裏側にある作品。少女の裏側には、「この1点」のコーナーがある。数カ月に1回、展示を変え他の作品にはない解説が添えられている。大原美術館の所蔵点数3000点。そのうち約半分が展示されているという。「この1点」のコーナーに展示される作品は、しばらく目に触れない可能性が高い。そう思うと急に今見ておかなければと、焦りを感じつつ今日の一枚に選んだ。

エドヴァルト・ムンク作「マドンナ」

ナカムラさんのマドンナ

ムンクと言えば

「叫び」。誰でも知っている両頬の辺りに手を広げ、何かに驚いているようでもあり、何かに怯えているようであり、何かを叫んでいる作品。何よりこの人は何を叫んでいるのだろう?この人は誰なんだろう?人間のような肉体は持っているが、宇宙人のようにも見えるし、(もちろん宇宙人は見たことないのだが)人間の魂のようにも見える。ムンク本人なんだろうか?
悲壮感を感じもするが、コミカルに扱われることも多い。
この人、誰だ??

ナカムラさんの「マドンナ」

ナカムラさんの「マドンナ」も素晴らしい。ムンク同様に真ん中にいるのが、「マドンナ」。マドンナの周りを泳ぎ回るのは、精子たち。そして、左下にいるこの人。「叫び」にも通じる誰だかよくわからない、この人。男性なのか?宇宙人なのか?ムンクなのか?この人誰だ?

マドンナと言えば

「Like a virgin(ライク ア ヴァージン)」マドンナは歌っていた。
1984(昭和59)年。小学2年生だった私には何のことかわかりはしなかったが、ヴァージンという言葉に見てはいけない、聞いてはいけない恥ずかしさがあったように記憶している。

クラスにもマドンナはいた?

小学校へ行けば、クラスにもマドンナはいた。同じクラスの男子はみんなあの子のことを「好き」なんじゃないかと思うほど。当時、キョンキョン(小泉今日子)が「学園天国」で歌ったクラスの情景があった。
あれ?ちょっと待てよ、キョンキョンはマドンナだったのか?
いや、違う「アイドル」だった。マドンナではなく、アイドルだ。

マドンナとは?

マドンナを辞書で引くと、はっとさせられた。
1 「聖母マリア」
2 (あこがれの)美しい女性

キリスト教に門外漢の私が詳しいことを話すのははばかれるが、聖母マリアとはキリストの母。つまりキリストを産んだ人だ。ただ、彼女はキリストを産んだのだが、男性とのセックスはしていない処女のまま、キリストを産んだとされている。

「the Virgin」は聖母マリアを指す言葉として使われることもあるそうだ。アーティスト・マドンナは「Like a virgin」と歌った。マドンナは処女である存在が、まるで・・・ということは処女ではないことを公言しているのと同じこと。「現代のマドンナは処女なんかじゃないわ!女性はもっと自由に生きなきゃ」いるとも見えるし、1周まわって「処女女性の姿って何か初々しく魅力を感じるものでしょ?」とも聞こえる。

「アイドル」は処女ではない

小学生のクラスにいたアイドルはもちろん、処女だったと思う。
見る側に委ねられているのだと思う。多くは男性から見たマドンナは処女であるべき、あってほしい、あった方がいいという神格化とも言える何か強制的な拘束がそこにはある。
アイドルは逆説的にそれがない。女性の美貌、肉体、性的な魅力を感じることを求め、時に許されている存在だと仮定できる。

「マドンナ」の裸体、精子が泳ぐ

処女であることを宿命付けられたマドンナが肉体を晒している。両手で頭を抱えグラビアアイドルさながらのポーズをとる。胸の膨らみ、腰のくびれ、マドンナのタブー、キリスト教への侮辱とも言えるし、マドンナが「Like a virgin」で歌ったようにもう「そんなの古い!」とでも言っているのか。

日本にはペニスを祀る神社がある。生命の根源、精力(勢力・政力)の象徴としてあるのかもしれない。精子は命の根源、あくまで男性から見た根源。マドンナの人間化、女性化、性的アピールをもったマドンナに対する反応としての精子が泳ぎ回る。

ムンクは何を語るのか?

左下にいるこの人。私にはムンクに見える。絵について解説しようとしているのだろうか。擬人化された精子が語るのだろうか。両手を肩を抱き、辛そうな顔をする。

「射精」の快楽と使命

不妊治療で病院に行くと男性は個室に入り、精液の採取を行う。ヘッドフォンをつけ、AV(アダルトビデオ)を見せられ射精する。ムンクの時代にあったかどうかは知らないが、AVや性風俗の社会がある。

現代の性教育ではどこまで生徒に教えているのかわからないが、女性に生理があるように、男性にも造られる精子を出すことが必要だ。厄介なのは、生理は苦痛が伴うことがあるが、射精には快楽を伴うことが多い。

精子は、DNAの伝達者としての使命を負う。使命からセックスを求める男性は少数派だろう。快楽を求めて男はペニスを握る。

ムンクの叫び

タブーを犯し、聖母マリア(マドンナ)ですらその対象としてしまう。
ムンクは何を叫んでいるのか?
「タブーなんかじゃない、これが正常なんだ!」
「お前は聖域を犯したな!?もう後戻りはできないぞ!」
あなたには、どんな声が聞こえてきましたか?

モナリザ(余談)

マドンナの意味を調べてみた時、知ったこと。
そもそも、フランスでは「La Joconde(ジョコンド)」と呼ばれている。
作者レオナルド・ダビンチの友人の妻ジョコンドさんを書いた絵。
モナリザは、「mona Lisa」。monaは、ma donna(私の淑女)の略語。
Lisaは地名だという。モナリザは、「リサ村の女性」。





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