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EVERYDAY大原美術館2023 vol.15「人は力を持ちすぎた、ねぇ、神様」

「神様、仏様、お天道様!!よろしくお願いします!!」
日本人は無宗教とも多宗教とも言われる。
今日の占いを易々と信じてしまうこともあれば、人との出会いに運命を感じることもある。なんとまぁ、都合のいい気質も持ち合わせている。

シャイム・スーティン作「吊るされた鴨(Hanging Duck)」

ナカムラさんの吊るされた鴨

グッと暗い背景に、鴨が無力に吊り下げられている。
ようにも見える。
右から左へ、下から上へ引き上げられていく、何かの力によって。

鑑賞者の声

美術館で絵を見ていると、多くの人が絵の前を通り過ぎる。
美術鑑賞が好きそうなインテリジェンスの香りをする人もいれば、そんな香りのしない人もいる。

あるカップルが、この絵の前を通り過ぎる瞬間に言った言葉が気になった。
「これ、鴨だったんだ、人だと思った」
立ち止まることもなく、おそらくカップルはこの絵を見たことすら覚えていないかもしれないが、私の思っていたことを言葉にしてくれた。

これは鴨ではない

そうなのだ。吊り下げられた物質は鴨ではなく人類なのだ。
人は生まれ、時代に翻弄され、死んでいく。
こんな不条理なことを皆、体験する。
神の存在を信じる方が自然だ。

聖書の一説のような、暗い背景に生々しい血と肉。
光と闇、上と下。肉体と神。

神と共に生きる

我々、日本人は絶対的な神は都合の良い時にしか現れない。
抗えない神があるとすれば、
それに抗うようなこと、スーティンの時代であれば近代化、
現代であれば、人工知能など
人間の抗うように生きることに対しての恐怖が
グロテスクで痛みのある、ただ救いもどこかにある
この絵を描かせたように感じた。





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