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不確定日記(夜の梅)

 梅があるのがわかる。ずっと匂いがしている。Yさんが庭の木になったのを送ってくれた。大きな梅の木を想像して嬉しくなる。熟れた梅のにおいはこの時期しか嗅げなくて、一年で一番好きなにおいだ。仕事をしているときも、キッチンでも、私は壁のほうを向いているから梅の匂いは常に背後にある。見えないけれど、少しの緑から濃い黄色、しっとりした黄赤までのグラデーションが、あるなあ、と思う。
 匂いを嗅いでいたいから、梅仕事をまだしたくないが、匂いに急かされて早くしなきゃ、とも思って、しかしどちらにせよ、昨日も今日もそんな暇はなかった。仕事がだいぶ溜まっている。

 考えるタイプの仕事をすると、生活のいろいろをすっかり忘れがちで、起きた時にはかろうじて洗濯機を回したものの、洗い上がりを知らせるブザーが鳴る頃には画面に集中していたので、音がさっぱり聞こえなかった。明日もう一度洗うことにして、暗いベランダの洗濯機の中はそのままにする。昼間、卵とヨーグルトが切れていたので買いに行ったが、ついでに買ったエビを料理する気持ちの余裕はなく、夕食はたまごかけごはんにきゅうりの塩もみと鰹節をかけて食べた。

 それでも、夜中に仕事を終えて風呂に入って台所も片付けてから電灯を消しても、部屋の匂いはずっと黄色のままだった。

 夢では私は寮に住んでいて、幾つかの棟にはピンクや水色に白い縁取りのポップな字体でふざけた名前がついていた。坂を登って観音開きのドアを開けると下駄箱が並んでいる。私はそこを通るのが久しぶりで緊張していた。狭い座敷で行われる講座に参加する。部屋は四畳半ほどしかないので、皆ぎゅっと膝を抱えて座っている。私は思ったよりも歓迎されて嬉しかったが、講座の内容や、先週の話にはついていけず、壁に貼ってある寮のルールを読んでいた。

そんな奇特な