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ウクライナ、ゼレンスキー大統領:支持率低下の背景にある心情

ウクライナのゼレンスキー大統領への国民の支持率が、ロシアによる侵攻が始まった2022年2月以降で初めて6割を下回ったことが、主要調査機関「キーウ国際社会学研究所(KIIS)」による世論調査で明らかになりました。今年5月に実施された調査では、ゼレンスキー氏を「信頼する」と答えた人は59%。これは侵攻開始間もない2022年5月の9割を超える支持率と比べると大幅な低下です。しかし、この結果がその数字の通り、信頼の低下や不安の要素なのだろうかと私は考えます。

ゼレンスキー大統領のリーダーシップ

ゼレンスキー大統領は、俳優出身という異色の経歴から大統領に就任し、その後ロシアによる侵攻という未曾有の危機に直面しました。戦時下におけるリーダーシップや、国民と共に戦い続ける姿勢は国内外でも高く評価されています。戦争という過酷な状況の中で彼が国家の存続に果たした役割は、尊敬に値します。

彼のリーダーシップの下で、ウクライナは一丸となってロシアの侵攻に立ち向かってきました。国際社会からの支援を引き出し、国内の士気を高めるために絶えずメッセージを発信し続けたゼレンスキー大統領の努力は、ウクライナが現在も国家としての体裁を保ち続けている大きな要因となっていると考えられます。

支持率低下の要因

今回の調査で明らかになった支持率の低下については、いくつかの要因が考えられます。まず、反転攻勢の失敗や動員に対する国民の反発が挙げられます。戦争の長期化に伴い、戦況が思わしくない場合、指導者への不満が高まるのは自然なことです。また、政権に属する高官の汚職スキャンダルも信頼を低下させる一因となっているようです。国民が汚職に対して敏感になっている状況では、こうしたスキャンダルは指導者への信頼感を大きく揺るがします。

同時に、これらの要因は、ゼレンスキー大統領のリーダーシップに対する評価にも影響を与える一方で、彼を全面的に否定するものではありません。むしろ、ウクライナ国民の複雑な心情や期待が反映された結果と見ることができます。

現在、ウクライナ人は大統領自身ではなく「チーム」を批判することに重点を置いていることがわかる(特に、おわかりのように、大統領自身がかなり高いレベルの信頼を得ているのに対し、彼の政党はそうではない)。

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戦時中のリーダーシップの難しさ

戦禍に身を置いたことのない私にも、戦時中のリーダーシップの発揮が、非常に困難であることは想像できます。戦況が刻一刻と変わる中で、迅速かつ的確な判断が求められ、さらに、国内外からの圧力や期待にも応えなければなりません。ゼレンスキー大統領は、その厳しい環境の中で常に国民とともに戦う姿勢を示し続けてきました。その結果、ウクライナは国際社会からの支援を得ることに成功し、戦闘能力を維持してきました。

しかし、戦争が長引くと、国民の疲弊は深まり、戦況が好転しないことへの苛立ちや不安も募ります。戦闘の最前線で家族や友人を失った人々にとって、指導者への期待は高く、反面、それに応えきれない場合の失望も大きなものとなると考えられます。

支持率低下のポジティブな側面

一方で、ゼレンスキー大統領への支持率の低下にはポジティブな側面もあると考えられます。それは、国民が自由に意見を表明できる社会が構築されつつあるということです。戦争の初期段階では、指導者に対する絶対的な支持が必要とされましたが、時間が経つにつれて国民が自らの意見を持ち、声を上げることができるようになったのは、ウクライナにとって重要な進展です。

ゼレンスキー大統領が国家のリーダーとして果たしてきた役割は、単に戦闘を指揮するだけでなく、国民に自由と民主主義の価値を再認識させることでもありました。その結果として、国民が政府や指導者に対する批判や要求を表明できる環境が整いつつあるという訳です。

感謝と期待の表れ

今回の支持率の低下は、ゼレンスキー大統領に対する国民の感謝と期待が混在した、複雑な心情の表れと見ることができます。国民は彼のリーダーシップを評価しながらも、戦争の終結や平和の実現に向けた更なる努力を求めています。これは、彼への否定ではなく、むしろ彼がこれまで果たしてきた役割に対する信頼の証とも言えます。

また、支持率の低下は、彼に対する個人的な攻撃ではなく、国民がより良い未来を求める、健全な批判として捉えることができます。戦争が続く中で、国民が自らの声を上げ、政府に対して改善を求めることは、彼がこの度の戦禍に際しても守ってきた、民主主義の成熟を示すものです。

ゼレンスキー大統領の今後の課題

ゼレンスキー大統領にとって、今後の課題は国民の期待に応える形でリーダーシップを発揮し続けることです。反転攻勢や動員に対する不満、汚職スキャンダルなどの問題に対処しながら、国民の信頼を再び高めるためには、透明性のある政治運営と効果的な政策の実施が求められます。

さらに、国際社会からの支援を引き続き確保しつつ、国内の経済再建や社会復興にも力を注ぐ必要があります。これにより、戦争後の平和と安定を実現し、国民の生活を改善することが期待されます。

まとめ

ウクライナのゼレンスキー大統領への支持率の低下は、単なるリーダーシップの評価の低下ではなく、国民の複雑な心情や期待が反映された結果と考えられます。国民が国の未来を考え、自由に意見を表明できるようになってきたと捉えると、これも戦争の中でも国家としての体裁を保ち、民主的な社会を築くことを目指してきた、彼の功績の一つとも考えられます。それでこの度は、支持率の変動(低下)が、実は、ゼレンスキー大統領に対する国民の感謝や期待の表れである可能性について考慮しました。

ゼレンスキー大統領には、今後も、国民がより良い未来を求める中での健全な批判を受け入れ、国民の期待に応える形でリーダーシップを発揮し続けることが期待されます。

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余談の範囲ですが。そもそも支持率低下のニュース自体が、彼への感謝をもとに、彼個人の安全を考えた国民の配慮である可能性もゼロではないのではないかと、私は想像しました。

ひとりでも多くの人の手元に、穏やさがありますように。❀

Respect for Zelensky

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