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【コラム】本の読み方

はじめに:読書への動機

いつだったか。「本には人の人生や価値観を体験させる効果があり、そこには作者の志がある。だから、本を読ませてもらうことには価値がある」といったアドバイスを、人生の先輩からいただきました。

それを切欠に、とにかく沢山の本を読む!だとか、関心のないジャンルの書籍も読んでみる!といった取り組みを採用した頃もありました。年300冊読む!とか。その取り組みをしたことは、私なりにも価値があり。価値観や社会の枠組みをそこから教わったり、言葉の選択肢を知るといった効果を感じたりしました。

書籍の限界と現実

ただ、物足りない本というものも少なからずあって。例えば、ポジティブな思考や成長志向のアプローチを促す本の多くは、誰かの助けになる可能性はあるかも知れないけれど、多くの人や社会には現実味が感じられない視点を前提としていたり。なぜこれが、出版社という他人の目もすり抜けて、本屋の店先で平積み(お勧め)されることになったのだろうと考えてみることくらいしか、価値を感じられないものもありました。そういうものなのだなと認識するまでに、少しの時間がかかったことも、懐かしい思い出です。

書籍からの学びとその適用

先輩の一声を切欠に得られた価値観は、書籍に対する探求心をかき立て、多くの知識と多様な視点を得るための原動力となりました。本を読むことで得られる、価値観の多様性や新しいアイデアの発想は、貴重な経験です。これにより、自身の世界観を拡げたり、異なる文化や思想に触れることへの抵抗感も下げることができました。作者が、その志を伝えるために選んだメッセージと、自身のテンションや時間を整えた上で向き合うことができるという仕組みも、私には好ましい体験でした。

同時に、本を通じた学びにも、限界があることを認識しました。特に、ポジティブな思考や自己啓発を推奨する書籍の多くは、しばしば現実からは乖離した理想を提示しているだけの内容に留まり、結果として有効な解決策を提供していませんでした。そうした本や内容が、一般的に受け入れられる(本が売れる)背景には、出版業界の商業的な利益や、話題を必要とする市場のニーズの影響を感じました。

一部の書籍には、現実の複雑さや、人それぞれに異なる側面を持つ苦労や悩みを単純化しすぎる傾向があります。表現を変えていえば、それだけ、実際に多くの読者が感じるであろう挫折や疑問を反映した本を執筆するということが、容易ではないと解ります。したがって、本の内容と関わる時間においては、書籍が提案する解決策が、自身や社会の現実の問題に対して常に有効であるとは限らず、その適用性を見極める視点が必要です。

結論:書籍との向き合い方

読書は、自身と社会の間に多くの窓がある事を知り、またその窓を開ける機会になりますが、そのすべての窓が現実の風を正確に取り込んでいるわけではないという現実にも気付かされます。本から学べることの可能性は無限大ですが、私たちには、書籍から得られる知識をどのように日常生活に取り入れ、実際に役立つ形で活用するか、できるかを、考えることが求められます。提供される知識や言葉の表現をもとに、自身や社会の状況に合わせて想像し、時には批判的に考慮する機会を提供してくれることも、本があることの良さなのかなと、私は思っています。◯

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