雑草学研究室の踏まれたら立ち上がらない面々

稲垣栄洋 小学館 2023/9

植物、雑草のことをいつもわかりやすく楽しく伝えてくれる稲垣さんの著作。
自身の研究室を舞台にして、稲垣教授ことライス教授と研究室の面々との日々を綴ります。そこには、研究室で実際に行われている研究模様が描かれています。研究室の面々はそれぞれの個性に基づいて彼らならでは研究を進めていきます。その研究を影で支えているのが稲垣さんです。

雑草研究の分野
① 雑草防除
② 雑草の生態
③ 雑草の利用(p14-15)

「雑草性」 
どんな植物でも雑草になれるわけではない。植物が雑草として成功するために必要な性質を「雑草性」という。雑草性を持つ植物だけが、雑草になることができるのだ。
小さな花を咲かせることも、じつは雑草性のひとつである。(p16)

「雑草とは何か?」という問いに対して、こんな言葉もある。
「雑草とは、未だその価値を見出されていない植物である」(p33)

「雑草って、探求的学習に使える気がします」(p88)

雑草が生えている場所は、環境が変化する場所である。そのため、変化する環境に合わせて、自らも変化する力が雑草には求められるのである。(p91)

植物の成功の要素は、C(競争に勝つ力)とS(ストレスに耐える力)とR(変化を乗り越える力)の3つに分かれていると言われている。(p108)

西洋タンポポが日本タンポポを駆逐しているように見えるが、実際はそうではない。日本タンポポが生えるような日本の自然が失われているのだ。(p113)

人間の脳はたくさんあるということを理解することが苦手なんだ。だから区別してみたり、順番に並べたりして何とか理解しようとする。それは人間の脳にとって仕方のないことだ。だけれどね。本当は何の区別もないし、本当は何の順位もないんだよ。ただ、たくさんのものがあるという、ただそれだけのことなんだ(p139)

ひとつの生物の中にも、さまざまな個性がある。これは「遺伝的多様性」と言われている。
常に環境が変化する自然界では、何が正解かはわからない。何が正解かわからないとすると、たくさんの答えを用意しておいた方が良い、それが「遺伝的多様性」である。(p140)

自然界は多様性にあふれている。
しかし、人間は多様性を扱うことが、もともと苦手である。(p141)

「伝統的な生態学的知識」 Traditional Ecological Knowledge(p156)

世の中は「答えのない問題を自分で作り、答えのない問題を解く」その連続だ。(p188)

世の中には、「自分のやりたい仕事をする人」と「誰かのやりたい仕事をする人」の2種類しかいないと私は思う。「仕事をしている人」と「仕事をさせられている人」と言ってもいいかもしれない。(p197)

人間の脳は、複雑なものを単純化して理解することが得意である。そのため、さまざまなものを分類して区別することで物事を理解しようとするのだ。
自然界のすべてのものに区別はない。
自然界の区別というものは、人間が勝手に決めているものだ。だから自然界の真実に合わない時もある。人間が勝手に決めているのだから、それは当たり前のことだ。(p230)


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