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見積書の作り方・考え方(僕たちの場合)

鳥取県鳥取市で主にホームページの制作を行っている合同会社フットでWebディレクター兼エンジニアをしている岡村といいます。

このnoteは先日、各地でWebディレクターをされている方々と「Web制作の見積り」というテーマでZoomを使用した情報交換会を行った際に自身がカンペとしてまとめたものをnote用に加筆修正したものです。

情報交換会の実施後にTwitterで「こんなお話しましたー」とつぶやいたところ、普段あまり「いいね」がつかない僕のアカウントにしては結構反応を頂きました。
情報交換会でも「他の人の見積書の作り方を知る機会がないので新鮮だった!」「発見があった!」という声が挙がり、僕自身も新しい気付きがあったので、こういった情報を共有すると参考になる方がいるかも。ということで、非常にざっくりとしていますがまとめてみました。

タイトルにあるように、あくまでも僕たち(合同会社フット)の場合ですので、所属する組織(企業やグループ)など、環境によっては当てはまらないこともあるかと思いますし、組織文化が反映されやすい(やり方を変えにくい)ものですので使えるところだけ活用いただければと思います。

また、僕たちの考え方もこれが最終形ではなく、都度見直しながら運用していますので、「私達はこうしてますよ!」といったご意見などいただければとても嬉しいです。

1.前準備

1−1.見積書のベースを作っておく
予め分かっている活動内容や作業項目毎に費用を算出しておき、見積り作成時の雛形にするというものです。俗に言う「単価テーブル」というものですね。

僕たちも近しいものがありますが、厳密なものではありません。
重要なのは単価設定ではなく「自分達ができるWeb制作活動を全て洗い出す」ということです。なぜなら、案件の内容によって同じような活動でもそれにかかる工数や難易度が変わってくるからです。

1−2.可能な限り作業項目レベルに細分化する(理想は工程管理表の項目くらい)
洗い出した項目を工程の順番に沿って上から見積もり項目とします。
大枠の工程毎(ディレクション、設計、制作(デザイン)、開発、公開、など)にグルーピングして見出しをつけるとわかりやすいです。

この記事をご覧になっている方の中には部分的に特化した事業をおこなっておられる方もいらっしゃるかと思いますので、ご自身(または所属する組織)の活動範囲の全てを洗い出す事が大切です。

ゼロから洗い出すのは非常に骨が折れますが、ここでまとめた内容はご自身(または自社)が提供するサービスメニューとも言えますので、作成するだけでも価値があると思っています。(流用すればクライアント向けのサービス紹介のベースに使えたりもします)

1−3.それぞれの項目がおおよそどのくらいの工数が必要か決めておく
過去の実績から「この作業は大体このくらいの工数が必要だな」というのが見えていると思います。そういった項目は予め工数を設定しておきます。

中には、上記したように要件等によって決められないものもあります。
そういった場合は、なるべく条件を付けたうえで最低限必要な工数を設定します。(条件とは、コンテンツボリュームやインタラクション要素の有無、静的なコンテンツか動的なコンテンツか?などです)

1−4.単価の考え方
活動項目の単位は工数(人日)を原則としています。
ですから人日あたりの単価は基本的に変動しません。ただし、活動の難易度によって予め3種類の単価を設定しています。

単価高・・・主にディレクションや設計活動(頭を使い、生み出す活動、自分たちにしかアウトプットできない活動)

単価中・・・主に制作(デザイン)や開発等の活動(設計されたものに対して知識や経験、技術を使ってアウトプットを作成する活動で、場合によっては他の人でもできる活動)

単価低・・・主にチェック、データ入力等の活動(マニュアル化しやすく、比較的短時間で習得できる活動)


※2022/01/27追記
本noteを解説するイベントを開催したところよく挙がった質問が「単価の決め方」でした。そこで、単価に関する考え方をまとめたnote記事も作成してみましたので、よければご覧ください!


1−5.変わるのは数量(工数)のみ
前述のように単価は変動せず、制作の内容(要件やボリューム)によって必要な工数が変わるという考え方です。

過去、ページ単価でデザインの費用を見積もっていたこともありますが、ページ毎に単価を変えていくと非常にややこしく、ミスにも繋がります。
また、不揃いの単価の中で一番安い単価を基準にご依頼頂くこともあったため、工数ベースでの見積りに切り替えました。

1−6.見積りのテンプレートを作成しておく
テンプレートといっても、書類としてのテンプレートではなく、全ての活動を行った場合のMAX見積りを工数や価格も入った状態で作成します。この場合も案件によっては要件やボリュームなど揺れる要素がありますので、「ページボリュームはこのくらいを想定」といった条件で作成しています。

僕たちの場合、実際にそのような(全ての活動を行う)案件を頂くことは稀なのですが、これを作っておくと、この後紹介する概算見積り作成時に効果を発揮します。

2.案件の相談が来たら

2−1.要件とスコープ(対応範囲)を忘れずに確認する
例えば、代理店さんからの相談の場合、ディレクションはどちらがするのか?の確認は大切です。制作するだけなのか、企画提案も含まれているかで内容は大きく変わります。

このヒアリングの際にも上記した「見積りのベース」は有効で、この資料を元に確認すれば、ある程度抜け漏れを防ぐことに繋がります。

なお、実際のヒアリングでは要件とスコープ以外にも作成するホームページの目的やそのターゲットなど効果的なホームページを制作する上で確認すべき事項は多々ありますので、そういったヒアリングの一部として実施するということを補足しておきます。

2−2.スコープに合わせて、不要な活動をテンプレートから削除する
見積書は「僕たちが対応する活動(その先に生まれる効果)の対価としてこれだけの工数が必要であり、その活動費としてこれだけの費用がかかります。ということをまとめたもの」という考えで作っています。

ですから、スコープが分かればある程度の活動内容が分かり、おおよその工数と価格が見えてきます。

ここで、事前に作成しておいたテンプレートが役に立ちます。
すでに自分達が行える活動内容が網羅された見積書が出来上がっていますので、この項目からスコープ外の項目をザザッと消してしまいます。

項目を削除する際の一工夫
確実に主要件から外れているものは削除で良いのですが、クライアント側で対応するものや、細かく不要と指定されたものは項目を削除せず、同一項目を用意して値引きとして打ち消すという事をしています。
例)
   項目              数量    単価
ワイヤーフレーム制作        ●●人/日  ¥XX,XXX
ワイヤーフレーム制作(御社にて対応)●●人/日  ¥-XX,XXX

作業として本来必要だけど、コスト削減のため、今回はやらないよ(またはクライアントで対応するよ)ということがあるのですが、それを分かるようにするために「活動としては本来存在しますが、理由により対応しない」ということを明確にしています。

過去あったこととして「書いていないから対応しない」ではなく「書いてないものは別の項目に含める(潜り込ませる)」という解釈をされる方がありそのための対策です。

もちろん、メール等文章として残しておくことも必要ですが、見積書として一つにまとまっていることで、全体の活動と、あえて対応しなかった活動がひと目で見えますので僕たちにとっては効果的でした。

2−3.要件に合わせて数量(工数)を変更する
例えばページボリュームや必要な機能など、案件毎に異なる情報を元にテンプレート内の情報を修正します。

テンプレートで想定していたボリュームよりも多い場合は工数は増えるでしょうし、実装に時間を要する機能やこれまで実績がない機能の実装があれば、実現可否と合わせてどのくらいの難易度か、またどのくらいの工数を必要とするかを調査し、見積りに追加します(さらっと言っていますが、場合によってはこの調査が大変だったりもします)

2−4.他者へ依頼する工数の妥当性チェックを依頼する
僕たちの場合、社内で分業する場合があり、多くの場合は「デザインを含む設計の活動」と「HTML/CSSでのマークアップやCMSのテンプレート開発等のエンジニアリング活動」の2つは担当者が異なります。

他者に依頼する活動は自身が見積りを誤った結果、担当者にしわ寄せが行くということを避けなければなりません。

見積りのベースは作成していますし、過去の実績や経験も含め、ある程度の精度は期待できますが、クライアントへ提示する前に担当者に対してヒアリングした内容を説明し、自身が設定した工数の妥当性を確認します。

2−5.外部パートナーへ活動を依頼する場合
社内リソースが不足している時などは、外部パートナーに依頼する場合があります。これも、クライアントへ見積りを出す前に対応します。

ここまでの内容で自社としての工数とそれに対する価格が導き出せていますので、これがパートナーへ提示できる予算と工数とも言えます。
自身で設定した工数と予算を提示して見積りを依頼します。

予算と工数(工期)を提示したうえで依頼をするとパートナーさんも判断がしやすいですし、細かな内訳は別途としつつ「やれる/やれない」は比較的早く回答が頂けます。

2−6.全体の工数の妥当性をチェック
出来上がった見積りの工数(人日)の合計(総工数)を出し妥当性をざっくり検証します。例えば、総工数が20人/日であれば、営業日換算でいえば約1ヶ月となります。

中には並行して進められる工程もありますが、並行稼動することで仕様変更等が発生した際に影響が大きいため、僕たちの場合はウォーターフォールモデルで進めることが多いです。そのため、1営業日の最大活動工数は1人/日として考えています。

次に現在分かっているスケジュールから制作期間内に複数案件が動く想定であれば、その分を加味して1日に該当案件で活動できる工数(時間)を考えます。例えば同時に4案件動いているなら、その案件に割り当てられる時間は単純計算で1日(仮に8時間とします)に2時間(0.25人/日)割り当てられます。そして総工数の20人/日を元に割り出すとおおよそ必要となる工期がざっくり見てきます。

20人/日(総工数)÷0.25人/日(1日に稼働できる工数)=80営業日(約4ヶ月:必要な工期)

かなりざっくりで、実際にはここまで工期が必要にはならないケースもありますが、少なくとも公開予定日が決まっている場合にそこまでに必要な工期は確保できそうか?/カツカツか?は見えると思います。
また、過去の対応実績と比べて明らかにかけ離れていないか?といった判断もします。

明らかにかけ離れている場合は、数量のミスがあるか何かしら特殊(ページ数が多いとか、特殊な機能の開発が入っているなど)な事があるはずなので、その観点で項目や数量を見直します。

なお、ここで算出した概算の工期は見積りを提示する際にクライアントへも「実働としては●●人/日で想定しており、工期としては●●ヶ月とみています」とお伝えしています。

3.概算見積もりはスピード命

僕たちは、上記した方法を使い、相談があってから当日か翌営業日には概算見積もりを出すようにしています。特殊なことが無い限り一般的なサイト制作であればこのやり方で作成できています(見積り作成の所要時間は30分〜1時間程度)

そのためには見積りが作れるだけの情報を確認する必要があると言うことですね。極端に言えば見積りを作るためにヒアリングするという見方もできます。

3−1.早く出すことのメリット
まず大きいのが、仕事の速さをアピールできることです。
汎用的に「●●一式●●万円」みたいなものではなく、依頼や要件に合せた可能な限り具体的な内容であることが重要で、初めてお見積りを出した方は「え!こんなに細かな見積りなのになんでこんなに早いの?」と言われることが多いです。

また過去の経験として、早く出すことでクレームになることはありません。逆に好印象を持たれることが多いです。

クライアントは複数社へ見積りを依頼する事もあり、時間をかけすぎると、見積りを出す前に他社の見積りを見て判断されることもあります。

クライアントも予算確定させるための期限があったりしますが、見積書の提示がギリギリになることで、予算を見直したり、こちらに対して再見積もりを要求するための猶予がないとその瞬間に発注先として除外されることもあります。

逆に早く出すことで、最初は予算的に合わなくても「もう少し安くできませんか?」といった相談に発展する可能性と余裕がありますし、それによって要件も洗練され、こちらの望む内容に導くこともできます。
この時、他社の見積り提出が遅いと他社の見積り項目と相談によって洗練されたクライアントの要件にギャップが生まれ、クライアントとしては話が遅れている他社を候補から除外するということもあります。

4.概算見積りは出してからが勝負

4−1.概算見積もりは基本的に要件に対してMAXの活動内容で作成する
確定版ではないことをクライアントに説明し、要件をすり合わせながら不要な箇所を削減したり変更することで最終的な見積りに近づけていく(減算方式)という方法をとっています。これによって、クライアントは予算の上限が分かるため安心されます。

初回の顔合わせやヒアリングの際に、あらかじめこのことをお話しておくと概算見積もりがクライアントの想定よりも高かったとしてもその場で判断されず、具体的な要望や要件の見直しをすることができます。

4−2.概算見積もりを元に具体的な要件や優先順位を詰めていく
初めて僕たちの見積りを見たクライアントは「ギョ!(高い!)」っとされる事がおおいのですが、合わせてコスト削減案もいくつかセットで提示すると「あ、それならその部分は必要ないね。そうすると現実的な予算になるな」となることも多いです。制作の過程でどうしても削減できない項目(活動)もあると思うので、それが分かるようにして記載したり説明する必要があります。

ですから、メール等で見積りを送って終わりにせずお客様と話し合いながら見積りの添削をすることが大切かと思います。(作業項目の補足説明もできます)

※例外として代理店さんなど、頻繁に取引があり、やり方を分かってくれている場合でレギュラー的な案件などは除きます。

4−3.根拠のない値下げは対応しない
僕たちは単に価格だけ下げることはしませんし、単価もいじらないようにしています。
価格を下げる=工数を減らすという考え方ですので、工数は変わらず価格だけ下げると僕たちの赤字となります。ですから、コストを下げるのであれば、工数を減らす工夫を提案するようにしています。

たとえば、案件の相談時はやりたいことが盛りだくさん(ただし、全てが必要というわけではない)だったりしますので、優先度の低い活動は今回の対応から一旦外して公開後に対応したり、CMSを使う場合は開発するテンプレートの数を減らす(デザインパターンを減らす)、またクライアントでできる活動(例えばデータの入力などマニュアルやレクチャーによって対応できるもの)はお願いしその分の工数を下げるということを提案します。

4−4.どうしても予算に収まらない場合は値引きすることもある
頻繁には行いませんが、これ以上の工数削減も難しいけど、クライアントも必死、なんとかしたい!という場合には値引きをすることもあります。

ただし、単価や数量はいじらず、値引きの項目を別に設けます。
単価を下げる事によって、その低い単価の情報がクライアント内(場合によっては外)に周知されないための工夫です。

5.案件着手後も予算は変動する

着手後に仕様、要件が変更される場合はゼロではありません、ですからそういった場合には当初の見積りから変更されることを予め説明し理解して頂く必要があります。これによってクライアント側も安易な要件や仕様の変更をしなくなりますので手戻りを防ぐ効果にもなると思います。

ただし、後出しジャンケンにならないように最初に言っておくことがとても大切です。

6.さいごに

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
何か一つでもお役に立てる情報はあったでしょうか?

最初に記載したように、ここにまとめた内容はあくまでも僕たちのやり方や考え方で、現在も試行錯誤しながら取り組んでいます。もしよろしければ、色々な方のやり方やご意見もいただければと思いますので、Twitter等で絡んでいただければと思います!

本内容を解説するイベントを開催します!

ありがたいことに、本記事に興味を持っていただく機会が増えました。
Twitter等で色々な方のやり方や考え方が分かり、僕自身このテーマでお話を伺ったりしたいなと思い、イベントを企画しました。

本記事の解説に加え、質疑の時間をとって色々な方のお話を伺えたらと思います。無料イベントですので、ご興味がありましたら是非ご参加ください!

※↑こちらのイベントは終了しました

※2022/01/28追記
こちらのイベント、再度実施するはこびとなりました!
前回参加できなかった!知らなかった!という方でご興味のある方は是非ご参加ください!(前回参加頂いた方でも結構です!)


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