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日本政治の第三極を考える

 まず最初に今回取り上げる第三極とは国民民主党と日本維新の会です。

ここ一カ月程度、第三極を観察して感じたのは国民民主党の目指す路線が不明瞭になりつつあるのではないかということと、日本維新の会の方向性が自由主義ではないということです。

立憲民主党が昨年の衆院選の総括を発表し、野党第一党の座を維持するために苦心する中、第三極はどういう立場で自民党と戦うべきなのでしょうか。今回はこれを考えていきます。

・余計な議論をする第三極

 昨年の衆院選を見ると、どの政党も消費税や所得税の減税を公約に掲げていました。ですが、減税の話が今国会で話されていません。

ガソリン価格高騰対策としてのトリガー条項や、議員の歳費手当の削減などは議論されていますが、減税の話は出ず増税の話が出てきた始末です。

国民民主党の岸本議員はコロナ対策で行われた財政出動の分を取り返すために復興増税と似たような制度について言及していました。

日本維新の会の足立議員も資産課税について言及していまい、減税公約を反故にした増税議論をする第三極政党には失望しています。

 公約とは各政党が有権者からの支持を得るために実践を約束したものです。これは契約であり、反故にした場合、次の選挙で有権者はその党に投票しないことで政党に意思表示を行います。

日本政治ではこの公約違反が常態化していて、公約を守るというだけでも評価されるような状況です。

そんな残念な政治状況で日本維新の会と国民民主党は自民党と立憲民主党を支持できない人の受け皿となって昨年の衆議院選挙で躍進しました。

だからこそ、この支持を継続させるためにも公約を実現することは有権者に誠実さをあらわす意味で大事です。

・国民民主党の党大会から方向性を考える

 2/11に国民民主党は党大会を行いました。序盤に各団体からのお祝いの言葉が紹介されていて、そこから感じたのは国民民主党の支持基盤は民間企業の労働組合だということです。

労働組合が強い時代はすでに終わっていますが、安定した票田ですので政党としては重要です。他にも立憲民主党と都民ファーストの会からもお祝いの言葉が届いていました。

 国民民主党は労組基盤ですので、どうしても旧時代の財政主導の社会政策をする傾向にありそうです。立憲民主党と共産党の関係に不安があるのか、連合の芳野会長もスピーチをしていました。やはり労組票が基盤として意識せざるを得ないのは間違いないようです。

 立憲民主党の泉代表は共産党との絶縁を表明しており、連合票の奪い合いは続きそうです。

そして同時にこれは立憲民主党との政策の類似につながることも危惧されます。さらに言えばこの財政主導の社会政策は自民党も行っています。

一般予算の増加は毎年のことであり、トヨタの労組などが自民党に接近していることからも自民党は国民民主党や立憲民主党の支持層と重なっているところがあります。

 このような現状にある国民民主党は次の参院選に向け都民ファーストの会との連携を模索しています。ですが、私は労組重視の政策方針は都民ファーストの会と適合するのかということで疑問を持ちました。

私は都民ファーストの会が「小さな政府」志向の都市型政党として登場したことから今回の国民民主党の党大会を見て合流に不安を感じました。

 ということで都民ファーストの会誕生後の東京都の財政状況を見ると、予算規模が拡大傾向にあることがわかりました。

小池百合子都知事はしっかり自民党議員だったということで、都民ファーストの会も国民民主党と近い政治傾向にあることがわかりました。ゆえに合流は問題ないようです。

 まとめると、国民民主党は立憲民主党と連合などの労働組合票を奪い合っています。そしてこの労働組合票は最近自民党共奪い合っています。国民民主党は都民ファーストの会と合流しますが、都民ファーストの会は結局、自民党的政党であるので合流に問題はありません。

 以上のことから国民民主党は同じような票を他の政党と奪い合っていて、政策も似通っているので他の政党が問題にしないことを問題にしないと、支持を得ることはできないと思われます。

連合は国民民主党と立憲民主党の再合流を求めていますし、立憲民主党も共産党との連携を続けるかで、党内の重鎮(大学闘争を経験した旧社会党左派系)と若手(松下政経塾出身や旧自民党系)が対立し分裂も噂されています。

このような状況ですから、国民民主党は党の存続のためにしっかりとやるべきことをしなければいけません。

そしてそのやるべきことは公約実現であり、自民党が主張できない減税やトリガー条項を問題化することです。

・「第三の道」を行く日本維新の会

 日本維新の会は国会が始まってから金融資産課税案で自民党と意気投合し、立憲民主党の菅直人議員と「ヒトラー」発言で対立するといった形でそれ以外の話題を提供できていません。

 日本維新の会の姿勢と言えば「歳出削減」「賢い政府」といった内容で他の国政政党とは違い、財政出動をするよりも政府の無駄を削減して国民の税負担を減らそうというものだったと思います。

ですが、衆議院選で公約した減税やBIなどの政策について議論される気配はまったくないようです。

 日本維新の会は他の財政重視の社会政策を掲げる政党と比べてやはり基本姿勢に差があることは確かです。ですが彼らは自由主義政党ではないということは意識せざるを得ない事実です。

他の国政政党と比較して、自由主義的であるというだけで、実際のところ彼らはイギリスのトニー・ブレア政権などに代表される「第三の道」と呼ばれる政策の実施を図る政党だということです。

 この「第三の道」という路線はイギリスの労働党がかつての財政主導の政策からの転換として掲げた政策であり、市場の役割を認めた上で政府が労働者向けの政策を提供しました。

 「第三の道」の基本的な方針は「就労支援・福祉支出削減・中間層向け減税」です。

貧困に苦しむ人には補助金ではなく、政府の関連組織での雇用を与えます。また福祉に財政を回し過ぎるとその分税負担が増加するので、福祉支出を削減し均衡財政を目指します。そして、社会における中間層を増加させるために所得税など中間層の所得に影響を与える税金を減税します。

 これはかつて民主党がやろうとしてうまくできなかった方針であり、日本維新の会は過去の民主党よりも内容を熟慮したうえで実行を目指しています。大阪という都市を中心に根付いている維新の会がこの方針を掲げて都市型政党を目指すことはいい方針だと思います。

 この都市型政党としての日本維新の会はこの方針に徹すれば、今後成長の見込みがあると思います。なぜなら、歳出削減は日本維新の会にしか言えないからです。

日本維新の会以外の政党は基本的に財政主導の政策を掲げる政党であり、政府の無駄を削減するということは考えられない政党のように思えます。

ですから、今は自民党の増税議論に乗るよりは積極的に政府の無駄を発見及び指摘し、政府の方針を攻撃することの方がいいと考えられます。

トリガー条項は他の野党も指摘していますから、それ以外の無駄の指摘、特に福祉支出の無駄を発見してきすることは重要なことです。間違いなくコロナ騒動以降、社会保障費は無駄がありますから。

・終わりに

 2000年代の民主党の実態は「反自民党統治」でした。政党方針に理念などなく反自民という怨嗟で民主党は存在していたのです。そしてそれだけで政権が取れましたし、支持も集めることができました。

 この系譜を民進党・立憲民主党が引き継いでいます。国民民主党は今、立憲民主党よりも現実的に政治を議論することができる政党として自身を位置づけています。

もし彼らの差が単に「自民党に対してヒステリックかそうじゃないか」というだけであるのであれば、私はいつか立憲民主党の内部にいる新共産党派が離脱した後に合流可能であることが想定されます。

そして、その後の姿勢においても自民党と大きな差を提示できないと思います。なぜなら財政主導の政策が双方の特徴だからです。左派系野党はこの点ですでに躍進に限界を感じます。

 一方で日本維新の会は大阪を中心に第三極として登場しました。彼らは他の政党とは違い、中道路線を有権者に提示しています。

ですから、日本維新の会は政策の差別化と実行によって躍進することができると思います。政策の差別化は昨年の衆院選の段階でできているので、やはり実行力にかかっていると思います。

そして、立憲民主党批判は無駄だと思います。すでに政策の差別化ができているのであれば、やるべきことは単純なことです。

 「天下の台所」と言われた大阪出身の政党が金融資産課税という形で市場機能を阻害するのは残念なことです。

「無駄の削減」「支出の見直し」こそ日本維新の会が行うべきことで、同時にこの主張は財政出動しか眼中にない他政党にはできないことです。

この日本維新の会の特徴にもっと注目した議会行動を行うことが今後の望まれることだと思います。

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