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だって飛行機がいなかったんだもん

プノンペンの片隅で暮らすおかっぱ、久しぶりに日本へ一時帰国しています。東京でお仕事があるのと、2年半ぶりに実家で親に会いたいのと、ちょっと国内旅行もしてみたいのと、そんなこんなで5月15日にプノンペン発シンガポール経由羽田行きの飛行機に乗りました。まぁ、帰国というものは一筋縄でいかないものですね。

プノンペン、1時間遅れ

朝7時GRABタクシーを呼んで自宅アパートからプノンペン空港に向かいました。朝9時半発の飛行機に乗ろうと思ったのには理由があって、わたしが出発する5月15日現在、カンボジアで接種したワクチンは日本が承認するものから除外されており、日本到着後7日間の自主隔離が求められるからです。到着日をゼロとカウントし翌日から1日目、ということは出発したその日に日本にたどり着いておいた方が1日カウントを減らせるということ。ちなみに3日目でPCR検査(自費)を受けて陰性ならば隔離の解除という措置があります。大学でのミーティングやドナーへの挨拶もあるので、これを使わない手はないでしょう。
と、出発時間を選んだ理由を長々と書いてしまいましたが、これら一連のわたしの周到な計画が、いとも簡単に崩れる事態が発生したのです。
プノンペン空港の搭乗口に来て、搭乗時間になったのに、飛行機がいないんだけど?
アナウンスが入るより先に、シンガポール航空から携帯にメッセージが入ったのです。「あなたの飛行機はシンガポールからプノンペンに到着するのが遅れたため、出発は1時間の遅れとなります。」

たかが1時間、されど1時間、致命傷

じつは、わたしが羽田へ向かう飛行機へのシンガポールでの乗り継ぎ時間は1時間10分。ただでさえギリギリ。出発が1時間遅れたら、アウトじゃん! 焦りまくって搭乗口にいたスタッフに「あのぅ、1時間遅れたらわたしは次の便に乗れそうもないのですが・・・」と話してみたところ、彼女からの返答は案外あっさりしていました。「到着時間が早まりそうなので30分近くあります。とりあえず乗れるよう頑張ってみて!」
そう言われたら、チャレンジ精神に火がつきますよね。シンガポール着いたらすぐに次の搭乗口まで走れるよう、アキレス腱を伸ばしておきました。人目なんて気にしなーい。だって、わたしのダッシュにかかっているのだからっ。

ハニダ?

遅れたくせに堂々とプノンペン空港の滑走路に滑り込んできた飛行機は、清掃のあと急いでわたしたちを乗せ55分ほどの遅れで飛びました。機中わたしの心は乱気流のごとく乱れておりまして、映画を見る気分もそぞろ。何時にランディングするのか、そればかりを気にして2時間の空の旅が終わりました。滑らかにシンガポール空港の滑走路に降りた飛行機から猛ダッシュで飛び出そうとするわたし。
意外と前の方に座っていたので、すぐに外に出してもらえました。よい子は廊下を走っちゃいけないけど、わたしは走って空港のビルに入った、瞬間。変な看板が目に入りました。そこに、わたし含め3人の名前が。インド人風の空港スタッフが看板の前で巻き舌で何やら大きな声を発しているのです。
「ハニダに行く人たちは、ここに集まってください。」
ハニダ・・・。きっと羽田だ。変な看板に書かれた名前は、どう読んでもわたしのものです。インド人風が言うことには、「この3人は今日の便で羽田には到着できません。シンガポールに1泊して明日の朝の便で成田まで行ってください。ホテルと代わりの飛行機はシンガポール航空側で用意します。」
聞き逃してませんよ、あーた、”成田”って言ったわね??

こうなったらシンガポール楽しんじゃえ!

間に合わないものは間に合わない、乗れないものは乗れない。致し方なし。用意していただいたホテルは、自分だったら絶対泊まれないようなとてもゴージャスなもので、夕食も朝食もつけてくれると言うのだから、これはラッキーだったかもしれない、と思うことにしてこうなったらシンガポール滞在を楽しもう! と気持ちを切り替えました。明日、成田に行くのも、ま、いっか、と。
これがまたひとりじゃなかったんです。変な看板に書かれていたハニダ行きの3名に、プノンペンで何度かお会いしたことのある女性の名前がありまして、顔を合わせて「あーーー、よかった〜」と。つまり、旅は道連れがいたのでした。
一旦出国して、ショッピングモールで化粧水を買って(一泊といっても荷物が何もないのだから)ビールを飲んで、部屋でバスタブに足を伸ばして、そして夕食でビールを飲んで、韓流ドラマを見て、寝ました。結果的に、楽しい滞在となりました。ただ一つの難点は、シンガポールは物価が高い! いつも2ドル(USドル)飲み放題なんてビールをプノンペンで飲んでいるので、1杯15ドル(シンガポールドル、1ドル=90円くらい)のビールはさすがに1杯しか飲めないわたしでした。これをがぶ飲みと考えると、こわいこわい。

いざ、日本へ!

手ぶらシンガポール滞在を終え、朝9時半の飛行機で成田に向けて(こちらは無事定刻で)飛びました。もうわたしの心は安定飛行で、映画を2本見てワインを2杯飲んで、アホな顔で寝ていると成田に到着してしまいました。
成田で待ち受けていたのは、長い長い、もひとつおまけに長ーい書類審査とアプリ検査とPCR検査待ち。結局2時間以上かかって、空港の外に出ることができたのでした。
びっくりしたのは、検査内容とかではなく、空港で働く人の数。要所要所に立っている係の方は、道案内、アプリが通知ONになっているかチェック、座る椅子の番号案内、などなどこれでもか! という分業で、こんなに大量人材いる? という疑念を持ってしまうくらい。後から日本の友だちが言うには、例のあの人が顧問をつとめるあの会社の派遣の大量投入のアレだと。むむむ、そういうことか。

5月16日19時半、入国ロビーに到着、21時過ぎ、羽田から近いからとったのに成田からの移動になってしまったホテル(しかも1泊分キャンセル料全額負担)に到着し、わたしの長い長い日本への旅は幕を閉じたのでした。
それにしても、シンガポールの明るく開かれた、なんというかアフターコロナ感を見てしまった後での成田への到着は、暗くて切なくて、百歩譲っても明るい気持ちとは言えない、そんな帰国でした。

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