桜は咲いていなかった
初めから僕の桜は散っていた。
よく考えたら最初から咲いてなかったかもしれない。
ずっと桜が咲くことのないような人生で、不貞腐れ、疲れ果てた時に、とある芸人のコラムを見て、憧れを持ち「僕の夢は面白くなることだ」なんて大々的にぶち上げたものの、何もせず今日に至る。
そもそも、おもしろいってなんなのかわからないことに気がついて、意味を調べることから始めてみた。
「楽しい・愉快だ・興味深い・趣がある・こっけいだ・望ましい…」
類義語を含めたら、意味がたくさんありすぎて、余計に混乱した。
これはほんとに前途多難だと思った。
面白くなることが夢、だなんてよく言えたものだ。
僕のような人間はどれにも当てはまらないからだ。
どうしたらいいんだろう。
頭の中は、そのことでいっぱいだった。
気になるあの子が淡々と話しているのを聞いた。
「~ネタ順逆ならねー。最後失速したよね。」
「キャラ付けかあ。売れたらパッケージみたいに求められるのかなあ?」
す、鋭い。が、何目線で見てるんだろうと気になった。
僕があの子に認知されるまでには、だいぶ時間がかかりそうだ。
お笑いというのは「いいことなかった奴の復讐」という人もいるらしい。きっと僕はカテゴリ的にはここに当てはまるんだと思う。
だけど。調べてみれば、僕が欲しいものすべてを手に入れているような人もいるから、「目立つ人たちの競技場」でもあり、「刺激を求めるものたちの憩いの場」なのかもしれない。
僕が面白くなるためには、もっともっと勉強が必要だ。
生まれなおさないと無理かもしれない。
ポキンと、心が折れた音がした。
「集中しろ!そこ、折れてるからやり直しな。」
集中しきれずミス連発。怒られ、というよりは呆れられ、散々な日だった。
トボトボと家へ帰ると、
母親が「最近何かあった?」と聞いてきた。
特に何もないよと返すも、もし興味があるのなら、と某養成所のパンフレットを渡してきた。
びっくりしてどうしたのかと聞いたら
「あなたの目が輝いてるの、久々に見たから。
やりたいならやればいいのよ。」
普通親なら反対しそうなものだが、どうやら僕の目は輝いていたらしい。
ノストラダムスがいた頃以来の輝きだと。
子供の頃から終末論者。楽しかった、あの時は。
それと同じカテゴリーなのか。
じゃあこれはやはり夢なのか。
輝きを失ってから長すぎなしないか。
しかし夢の行き先が不透明になってしまった。
わからなくなってしまった。
僕なりの面白いを探すところから始めてみようか。