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青春に願う


たくさんのつらいことも、思い出す度に苦くなることも、全てが今につながるのならば、これは、報われたって言えるのかな。

心機一転を図ったのに、動いてゆく毎日についていけなくて、体と心が乖離しそうな浮遊感。なんだかやばい気がして、思わず目を瞑る。

とっても楽しいのに、どこか虚しくて、

とっても嬉しいのに、どこか苦しい。

もう、あの頃の僕はいない。強くなったんだと胸を張りたいのに、泣き笑いしてる昔の自分が顔を出す。

ああ、なんだかキャパオーバー?どうして。なんで?満たされているはずなのに。


頭を冷やすためにポツポツ、雨が降る中を歩く。

あの時も、こんな雨の日だった。 

「何してんの?風邪ひくよ。」

傘がないと騒ぐ僕に、呆れた顔しながら背伸びをしてタオルを被せてきた君は、きっと、僕が泣いているのをわかっていたよね。

折り畳み傘あるけど小さいし、私は濡れるの嫌だからこれで我慢してねって、意地悪に小さく笑って。

何を話すわけでもなく…というかよく考えたら、君から話すことはあったかな?僕ばかりがぶつけるように話していた気がする。嫌なら避けたらいいのに、出来ない優しさにつけ込んだ僕。でもずっと隣にいてくれた君。

ああ、その手を掴んでいたならば、今頃何か変わっていたのかな、なんて。馬鹿みたいだ。


ずっと隣にいてくれると思ってた、

それだけが、つらい毎日の支えだった、

「私たちは、2人でひとつみたいなものだから」

その言葉を信じてる、なんて今更言っても届かない。

変わらないものはないって知ってる。人だって物だって変わっていく。

昔からそうだった。仲の良い子ができても、別の子が入れば、いつだってあぶれてしまう。とりあえずみんなと仲良く、の仮面だけを貼り付けて、輪だけ広げても、僕には何一つ残らなかった。

でも、君だけは、後ろに下がった僕を気にしてくれたから、思い上がってたんだ。

ああ、落ちる。こんな日はどこまでも落ちる。

いっそ地面に溶けて、いなくなってもいいかななんて。ああ。視界がぼやける、もう泣かないって決めたのに。

「“親友”だから、一番に伝えたくて。私、好きな人がいるの。」そんな顔、しないで欲しい。

「付き合えたよ。夢みたい!」そんな夢、いつか覚めろってあさましくも願った。

「今度、結婚するの。でもたまには会ってよね。頼むよ、親友!」現実と酷な願いごと。

こんなに近いのに、こんなに遠くて。

苦しくて、もどかしくて。

あとから来たやつに、取られてしまうなんて。

元から僕のではないけれど。


僕の辛かった青春は、これから先も君と僕の唯一の想い出であることを願う。

人知れず泣いてしまう泣き虫だった僕を救ったのは君だし、あの頃、君に一番近かったのは紛れもなく僕だと信じていたい。

どうか、願うことだけは許して欲しい。

あの日を糧に、僕は生きるから。