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超短編小説もどき

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#小説もどき

愛してない

手を触ると、思いがあふれてしまうから、いつの日にかその手を振り払った。 私は一人なの、ひとりでいいんだよ、だれとも、だれとも。 走って走って逃げまどって、転んだ時に差し伸べられた手が前のものとは違うことに気づきながら、そっとその手を取った。 自分とその人が一緒になるような感覚のない人なら、一緒にいれる。 私は私のままで、彼を好きになれるから。 彼は優しい、一緒にいると弱さもすべて見せてもいいような気がする。 君とは違う。君はまるで私だから。一緒になりたくない。 君

嫌いじゃない

「嫌いじゃないよ。」いつもの読めない笑顔でいうのはやめてよ。 (その笑顔が大嫌いだよ) 「そう?私は気に入ってるんだけどな。」 振り回されてばっかり。もう疲れて、そばにいることをあきらめた日もあった。 そんな日に限って寄ってくるのはなんでなの? 「一緒にいたほうが楽しいでしょ?」残念ながら楽しいんだなこれが。 でも知ってるよ、「あの人」がいないからこっち来るんでしょ。なんだろうね、わかってるのに楽しくなってしまうことも離したくなくなってしまう自分もすっごい馬鹿だと

青春に願う

たくさんのつらいことも、思い出す度に苦くなることも、全てが今につながるのならば、これは、報われたって言えるのかな。 心機一転を図ったのに、動いてゆく毎日についていけなくて、体と心が乖離しそうな浮遊感。なんだかやばい気がして、思わず目を瞑る。 とっても楽しいのに、どこか虚しくて、 とっても嬉しいのに、どこか苦しい。 もう、あの頃の僕はいない。強くなったんだと胸を張りたいのに、泣き笑いしてる昔の自分が顔を出す。 ああ、なんだかキャパオーバー?どうして。なんで?満たされて

聖母の微笑み

いつも静かに微笑みを絶やさず、 賢く、聡明で、囁くような声が優しく響く、 そんな彼女はまさに聖母だった。 遠巻きにしか彼女を見ることはできない。 儚すぎて消えそうで、近づくことができない。 いつものように彼女は前の方に座り、授業を受けていた。さすがは成績優秀、周りの子たちにいつもの聖母の笑みを浮かべていた。 そんな様子を視界に入れながら、教授の話をぼんやり聞く。今日は神様の話か? 小テストだ!?不意打ちは勘弁してくれよ…。 記述問題だったので、うんうん唸りなが