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素人がボードゲームを製作、販売する方法〜1年間かけて実行したある有名ゲームの販売戦略〜

 私は素人でありながらUNOZEROというボードゲームを製作し、ゲームマーケット2023春に出展しました。今後、出展してみたいと思っている方の参考になればと思い、その経緯を「素人がボードゲームを製作、販売する方法」という記事にまとめ、過去7件の記事を書きました。その第一回目の記事がこちらです。

 この記事の中で、ボードゲーム製作、販売は素人でも可能である一方、競争が激しく、原価も高いことから、それを継続していくことは非常に難易度が高いことについて記載しました。そして、難しいからこそ、継続させていくためには大手メーカーの戦略を模索し、素人でも取り入れることができる戦略を見つけて取り入れていく必要があると主張していました。
 私自身、その自分の考えに沿い、ゲームマーケット2023春への初出展以降で取り入れているある有名ゲームの販売戦略があります。オセロの販売戦略です。


オセロ発売当初の戦略とは

 オセロは長谷川五郎氏が玩具メーカーに企画を持ち込み1973年に販売開始されました。下記がオセロの普及のために実行された発売当初の戦略に関する概要です。
 1.発売前に日本オセロ連盟を立ち上げ、発売の同年に公式戦を開催。
 2.百貨店の店頭にて実演販売。
 3.オセロの魅力や勝ち方に関する書籍を複数販売。
 私がこの1年間で取り入れてきたのは上記戦略の2、3であり、SNSを駆使することでコストをかけずに時間をかけて一人でやってみようというものでした。
 2.百貨店の店頭にて実演販売。
  →youtubeにイメージ動画、ルール説明&プレイ動画、真剣勝負①(ゴールが決まるver.)、真剣勝負②(時間切れVer.)の4本の動画をアップ。下記は全動画をまとめた記事です。

 3.オセロの魅力や勝ち方に関する書籍を複数販売。
  →note記事にUNOZEROの魅力や勝ち方に関する記事を現在まで合計28本公開し、まとめ記事として下記を公開。

 上記の通り、オセロが販売開始当初にとった普及させるための戦略とyoutube動画、note記事をリンクさせてきました。もちろん、コストと人手をかけて実行してきたオセロの広告活動と比べればはるかに見劣りしますが、一切コストをかけなくても見よう見まねでとりあえずそれっぽいことができてしまう、本当にすごい世の中になったのだと実感しました。
 ただし、オセロの普及のために実行した戦略のなかで最も凄いのは上記1であり、売れるかわからない発売前に日本オセロ連盟を立ち上げ、販売開始の同年に全日本オセロ選手権大会を実行したことだと思います。しかも、場所は帝国ホテルだったようです。子供から大人まで誰もが家庭で楽しめるシンプルなゲームを販売開始と同時に上級者同士で真剣勝負することが可能な競技レベルへ一気に格上げしています。遊びながらレベルが高くなっていったプレイヤーも満足できるような真剣勝負の場を用意したことがここまで幅広い層に認知された最大の要因ではないかと思っています。結果的に、何百年の歴史をもつ将棋、囲碁よりも50年の歴史しかないオセロの方が国内競技人口で上回るという大きな成果をもたらしています。

公式戦の重要性

 オセロ、将棋の歴史を踏まえると、アブストラクトゲームというジャンルのボードゲームの認知度を高めていくための戦略として、魅力的な公式戦の開催は最重要戦略と考えています。一方、大きなコストとたくさんの人手が必要となることから、実行するハードルも最難関と言え、とてもとても高い参入障壁となっています。
 オセロは数千人が参加する公式戦のために専用のシステムまで構築していると思われます。残念ながら素人には真似することができません。また、オセロは誰でも出来るゲームを競技化することでプレイヤーの幅を広げることに成功したのではないかと思われますが、UNOZEROはアブストラクトゲーム上級者向けのゲームであり、仮にオセロと同じような公式戦を実行できたとしてもコスト対比効果は薄いと思っています。
 現在、UNOZEROに最適な公式戦の形を検討しており、アブストラクトゲーム好きらしく、既に布石はいくつか打っています。ただし、それが成功に結びつくかどうかは自分でも全くわかりません。

UNOZEROのチャレンジとは

 私の過去記事を読んで頂いている方はうっすら勘づいているかもしれませんが、UNOZEROは将棋、囲碁、チェス、オセロに次ぐアブストラクトゲームを令和に生み出すことができるかという壮大なチャレンジを地味にしております。皆様のnote記事やゲムマ参加者の貴重なご意見にサポートしてもらいながら、少しずつ少しずつ着実に前進しています。父からの「やるからには永続的に継続できるプランを練るべき」という無理難題をクリアするための方策を模索し続けた結果、有名アブストラクトゲームのとってきた戦略を現代テクノロジーを利用して出来る限りコストをかけずに時間をかけて実行していこうという結論に至りました。

ボードゲーム製作にも有効なKPI

 企業の経営状況を判断する指標にKPI(key performance indicator)というものがあります。ベンチャー企業や新商品のように、決算書の内容だけでは正確に状況を判断できない際の分析に使われるもので、ボードゲーム製作にも有効です。一般的にKPIは下記ステップで設定します。
 ・最終目標を明確にする。
 ・最終目標までのプロセスを決める。
 ・プロセスを指標化する。
最後の指標がKPIです。下記記事でゲームマーケットでの販売個数は気にする必要はないと記載しましたが、正確に言うとKPIにゲームマーケットでの販売個数を設定するかどうかによります。

UNOZEROを例にしてみます。
 ・最終目標:UNOZEROを将棋、オセロ、囲碁、チェスに次ぐアブストラクトゲームに育てる。
 ・プロセス:有名アブストラクトゲームの過去戦略を現代テクノロジーを利用してコストをかけずに時間をかけて実行する。
 ・プロセスの指標:note、youtube、Xの閲覧件数→これがUNOZEROの KPIとなります。
 大体こんな感じです。実際はもう少し細かく設定しています。現時点においては、たくさん販売するより、十分に理解している方に少しずつ販売していく方がずっと重要なこととなり、KPIに販売個数は設定していません。ゲームメカニクスへの理解の高い方が集まるゲームマーケットとボドゲーマに販売チャネルを絞っていることにもつながっています。自作ゲームの強みや課題を冷静に把握したうえで最終目標を明確にし、適切なKPIを設定することで、販売個数は気にならなくなります。

最後に

 いよいよこれから最重要かつ最難関の公式戦の開催という戦略に取り組んでいくことになります。令和に生まれたボードゲームUNOZEROにとっての魅力的な公式戦について、オセロや将棋の公式戦との差別化を図りながら、しっかりと時間をかけて定義、デザインしていきたいと思います。失敗したとしてもどなたかの次のチャレンジにつながるように記録を残していきたいと思いますので、引続きよろしくお願いします。
 


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