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三男への手紙

あっくん(仮名)へ
 あっくんが生まれる前、お母さんのお腹からお空に帰ってしまった命がありました。お母さんは悲しくてたくさん泣きました。だから、その後あっくんがお腹に来てくれて、お母さんは本当に嬉しかったし、とてもラッキーだと思いました。だって、生まれる前や生まれた後にすぐ帰ってしまう命もたくさんあることを、お母さんはそのとき知ったからです。
 夜中に何度も起きて泣く、赤ちゃんだったころのあっくんを育てるのはとても大変なことだったけれど、お母さんはあっくんが生まれてきてくれた奇跡を知ってるから、大変さよりあっくんを大切に思う気持ちが勝っていました。
 あっくん、生まれて来てくれてありがとう。
母より

小学2年生の授業で、生命の尊さについての教育活動を行うので、お子様がお腹にいたときの様子や気持ち、お子様が生まれた時のご家族の気持ちを手紙に書いてください。お子様が読みますので、習ってない漢字にはふりがなも付けてね!とのことで書きました。

本当はもっともっとたくさん書きたいことがあるけど、三男は読むのが苦手だからそんなにたくさん書いたら怒られそう。それに、渡された紙のスペースもそれほど広くないので、書きたくても書けない。

難しいことを言ってもいけない。意味が分からとダメだから。

親バカだから、お腹にいた時からもう可愛くて可愛くてしかたがなかったなんて本当のことを書いても本人やまわりのお友達にドン引きされそうだし。

困りました。

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三男が生まれる前に、私は一度、流産を経験しているので、そのことは大切な事実として伝えたかった。

その悲しかった経験は、子どもたちを大切に思う気持ちの根っこにいつもあります。

妊娠・出産そのものも命がけだけど、ちゃんと生まれてくるまでお腹の中で発育するかどうか運任せなところがありますもんね。

妊娠中は、多くの人にとって生命の神秘を感じるとともに、生命の尊さをひしひしと感じる時間でもあると思います。

でも、その感覚を子どもに伝えるのは本当に難しい。

大好きだよ。愛してるよ。
大切に思ってるよ。
生まれて来てくれてありがとう。

毎日のように伝えている言葉ですが、言っている方は生命の尊さを感じながら、感謝しながら伝えていても、本人様にどこまで伝わっているかは分かりません。

きっと、子どもたちは生命の大切さは分かっていると思います。頭ではね。そう。生命は大切なものなんだって。

だけど、生きていることが当たり前だと思っているうちは、それがどれだけラッキーか、奇跡の連続の上に成り立ってるかなんて気づかないもの。

大切な人の命を失うかもしれない…もしくは、本当に失ってからでなければ、本当の意味でずしりと心で感じることは難しいのかも。

それでも、一生懸命、言葉を尽くして伝えていかなければね、と思った母さんでした。



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