何かぱっとしないなあ G20@大阪

 あるTVニュース番組の冒頭はG20ではなく吉本興業の芸人の闇営業の話だった。新聞でも1面に来ていない朝刊もある。G20といえば世界的なイベントであるにも関わらず、何かニュースとしてはぱっとしない印象だ。

 G8G20が形骸化しているといわれて久しい。私がマーケット業務に従事していた頃はよくG7声明などでサプライズが飛び出して為替や株が乱高下したものだが隔世の感がある。特にトランプ大統領になってからは全ての事があけすけになってしまい、全体にしらけている傾向が強まっている。いわゆる「演出」が減って、イベントとしての面白みがなくなったのだろう。

 「損切丸」的に「お金」の側面から考えてみる。「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ23 国家政策とインフレ税② でも米中の関税合戦の件などに少し触れたのだが、表向きに出ている記事と裏の事情は少し違う気がする。米中の関税報復合戦などが主要議題に上がっている今回のG20@大阪などは、私にはやはり「ヤラセ」「みせかけの演技」にしか見えない。

 トランプ大統領の面白いところは(好きと言う意味ではない!)、彼は純粋に商売人であり、全てをお金の損得で判断しているところであろう。ビジネスの修羅場をくぐってきていることもあり、実は結構賢い。中国への関税も日米安保に対する不満も、要は「お金」の話である。全ての事に損得勘定が働いており、仕事で取引先にはしたくない手強いタイプの人だ。無謀な戦いを挑んでいるようで、算段がちゃんと出来ている。

 アメリカの強みは株価が高値圏で安定推移していること。DJが26,000ドル台で推移しているのだから、株価が1,000~2,000ドルぐらい下がっても平気なはずだ。ここまでFRBが利上げをしてきたこともあって、利下げカードもある。おそらくDJが20,000ドル割れになるような事態にならなければ(かなり可能性は低い)現状の政治的「突っ張り」は止めないだろう。

 一方、おそらく一番困っているのは中国。国の補助でがんがん安いものを売ってここまできているわけだから、関税で値段が上がり中国産の商品が売れなくなるのは致命的。自転車操業的に膨張させてきた経済力に陰りが出るのは当然で、上海あたりでも消費が減退してきているようだ。高島屋の上海支店を閉鎖するのも間接的に影響があったのだろう。(もっとも現地の人に言わせると、もともと客があまり入っていなかったようではあるが)だから上海の株式指数などは3,000ポイント以下で低迷しておりDJとは対照的だ。

 翻って日本。中国産の産品の代替需要で日本製製品の売上が伸びる要素もあるが、やはり大消費地である中国の景気が減速するダメージも大きく、米国との同盟関係のプラス部分を加えてもほぼ「とんとん」か。日経平均などもそのような動きになっている。ある意味マーケットは非情であり、表向きの議論や感情論とは別に株価などは冷徹に実態を反映していく。

 さて、「損切丸」「やらせ」というのは、各国の財政事情を背景とした思惑である。日米欧に加え、実は中国でさえも国の財政事情が厳しいためインフレ=物価上昇=貨幣価値の下落が必要になっていること。

 インフレが顕在化している中国や東南アジア諸国はともかく、日米欧は状況がより深刻だ。その観点から見ると関税アップは税収も物価も上がるから、国家側は誰も困らない。BREXITも同様。ここまで商品を安く供給するために築いてきたグローバルチェーンを壊すことに反対の主要国は実はほとんどない。物価上昇で損を被るのは消費者=国民である。そう考えると、G20での議論や白熱した攻防なるものは途端に味気ない「三文芝居」にしか見えなくなってしまう。

 証拠もないし既成事実でもないのだから、この点を表だって報道するメディアなどない。ただいつの時代も我々一般市民は国策の名の元に痛い目に遭ってきたことを忘れてはなるまい。こういう時*本当の事情が見えている「お金持ち」は対応が一般人より格段に早い。

 日本人で「お金持ち」と言えばソフトバンクの孫さんか。少し前に仮想通貨を何百億も買って損した、と話題になっていた。あれなどはインフレ対応に見えてしまう。おそらく円やドルなどの法定通貨の保有にリスクを感じているのではないか。また、世界的大富豪のザッカーバーグ率いるFBが仮想通貨Libraを立ち上げようとしているのも、偶然とは思えない。

 「お金のマニュアル」でも、日本人は「清貧思想」が投資の壁になっている、と書いたが、日本人は他国と比べると圧倒的に「お金」的な視点に欠けており、様々な局面で損をしてきている。韓国の慰安婦や徴用工の賠償問題などは典型であろう。日本だけ「清貧思想」では分が悪いので、物事をもう少し「お金」的に考えても良いのではないか。

 侍も良いが高楊枝より先に飯を食った方がいい時も。特にこんな時代は。


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