「5年ルール」と「125%ルール」 ー 「異次元」からの脱却に向けて
はて?「利上げ」が目前に迫って「固定金利」か「変動金利」か騒がしくなってきた「住宅ローン」。日本では後者が約7割といわれているが本当に大丈夫なのだろうか。ちょっと調べてみた
30年以上前、筆者が邦銀支店で「住宅ローン」を担当していた時にはこんなルールは無かった。もっとも当時は金利が@6~8%が当たり前で「固定金利」が一般的だったから必要もなかったのだが、これだけ長期に渡って低金利が続いて「変動金利」が増えるとこういうルールも必要なのだろう
これで「変動金利」のままでも安心?
どうもそう上手くはいかないようだ
日本では月々の返済額を同じにする「元利均等返済」が一般的だがこれがくせ者。ローン返済当初は利払いがほとんどで元金はあまり減らない。利息=元金 × 金利だから元金が減らないと利払い負担が減らない。だから当初の返済額が大きくてきつい「元金均等返済」の方が実は「返済総額」が少なくなる ↓ もっともお給料に合わせて返済計画を立てる日本では「元利均等返済」が人気。現在のように不動産価格が上昇傾向にあれば尚更だろう
さて「利上げ」があるとどうなるか
「5年ルール」では5年間返済額が変わらない。だから変わるのは「元金」と「利息」の割合という事になる。基準となる「短プラ」(短期プライムレート)やTIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)が上がれば銀行はそれに基づいて「変動金利」を上げる。その結果、仮に毎月▼7万円返済=元金▼3万円+利息▼4万円だったのが元金▼2万円+利息▼5万円という風に変化する
つまり「元金」がもっと減らなくなる
「元金均等返済」↑ の話を参照していただければわかるが「元金」が減らないとその分利払いが増える。「5年ルールがあるから返済負担は変わらない」は大きな幻想(≓誤解)であり、実はしっかり「利上げ」による金利負担を負うことになる
「125%ルール」はどうか
これもちょっと「金利」の話をかじればわかるが、6年後にその時点の「元金」と「金利」から再計算して返済額を今の@125%に抑えても、*金利が上がれば上がるほど「元金」返済は進まなくなる=金利負担が増す
覚えておいて欲しいのは、銀行は顧客に有利なルールなど絶対に作らないということ。これは保険会社などの金融機関然り、個人のコストを負ってくれる民間営利機関など存在しない。国もセーフティーネット等を除けばコストは必ず「税金」(含.社会保険料)で徴収してくる
「変動金利」の "真のリスク" は「返済総額」が確定しない事にある
そもそも**30年に渡り「デフレ」「ゼロ金利」(含.マイナス金利)が続いた国は今の日本が史上初で全てが「異次元」。30歳以下の「金利を知らない世代」に考えを改めよといっても難しいのかもしれない。ただ資本主義経済における「金利」の役割は変わっておらず「複利」も健在だ。「金利のある世界」に慣れるまでは少し我慢が必要になる
日本の低金利脱却は色々な意味で大きな「地殻変動」であり、マーケットの関心は我々日本人が想う以上に高い。せっかくの機会なので「金利を知らない世代」も「金利」について少し知見を深めた方がいい。知らない事は怖い事。派手な「為替」「株」と違って地味で説明が面倒な「金利」は昔から人気がない。ヒット率も稼げないのでメデイアに "FACT" が載る事はほとんどないが「損切丸」だけでも読んで頂ければ少しは参考になる
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