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「中国」から聞こえてくる "足音" 。

 "8月中国生産者物価(PPI) 前年比+9.5% 予想+9.0% 前月+9.0% 2008年8月以来13年ぶりの高い伸び *石炭採掘・選炭前年比+57.1%急騰"

 ref. 消費者物価 +0.8% 予想+1.0% 前月+1.0%

 石炭価格の急騰など特殊要因があったとはいえ、PPIが+9.5%も急伸する中、CPIが+0.8%に留まるということは、企業が価格転嫁をできず苦しむ様を表している。まるで「デフレ期の日本」。それだけ中国国内の消費が弱いということだろう。

 IT企業や「富裕層」への締付け、思想教育の強化等「第二の文化大革命」を目指すようだが、対外的に喧伝されているよりも景気の腰は弱く、経済政策が上手くいっているようには見えない。あまり余裕はないのではないか。

 その大きな背景としてあるのが不動産の「不良債権問題」である

 ”中国恒大は21日に期限を迎える銀行2行からの借入金の利払いを一時停止する計画。2025年償還のドル建て債は8日に売られ、最安値を更新”

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 償還2023年の2年債が価格@25.00近辺で取引されているということは、利回りで(@100-@25)÷2年 ≓ @32.5%。いくら「高金利」といっても元金が戻ってこければ元も子もない訳で、デフォルト間際の債券はこういう動きになる(対象企業に解散価値が残る場合は上乗せ分が出る事もある)。

 ”(9/9)不動産開発会社としては世界最大の債務(3,000億ドル ≓ 約33.1兆円)を抱える中国恒大集団の株価が香港市場で一時▼11%下げ、2009年の新規株式公開(IPO)価格(@3.5香港ドル)を下回る水準で推移。2015年7月以来の安値を付けている”

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 フィッチに続き、9/7ムーディーズ中国恒大の格付け「Caa1」から「デフォルトに陥っている可能性、あるいはそれに非常に近い状態」を示唆する「Ca」へとさらに3段階引き下げ。まあこうなると市場は「デフォルト」を前提に備えている状況だ。

 一体33兆円もの債務の内いくらが債権者の損失になるのかデフォルトは「お金」を通じて伝播するので、「連鎖倒産」等マーケットに広範な影響が出ることも懸念される。いくら中国のこととはいえ、金額が金額なだけにアメリカ日本も無関心ではいられまい。

 問題は中国恒大1社で終わるのか、ということ。

 日本の「バブル崩壊」を紐解けば、一旦下落基調に陥った不動産価格はスパイラル的に「担保不足」を引き起こし、問題が拡散し易い。大きな視点で言えば、47兆ドル(5,200兆円)もの「社会融資」にどのくらい影響が出るのか。独裁体制とはいえ、金額が途方もないだけに予想が難しい。

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 「中国バブル」の話は10年以上も取り沙汰されては消えてきただけに、「またか」という意見も多いのは承知している。だがこれだけ詳細が明確・具体的になったのは初めてではないか。中国に直接投資している企業はもちろんだが、日本人もそろそろ「現実対応」を考えておく必要がある。

 今のところ人民元は為替市場で売られてはいないが、「信用リスク」上昇を反映して10年国債金利は@2.89%にじわり上昇している。

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 ここで中国人民銀行が大量の人民元を刷って「金融緩和」に乗り出せば、不動産会社の当座の「資金繰り」は凌げるかもしれない。だが ”反作用” として「インフレ」に火がつけば「スタグフレーション」で状況が悪化するリスクも増す ”資本の逃避” (Capital Flight)で人民元安を起こすかもしれない。バブル崩壊時の日銀同様、かなり困難な対応を迫られるはずだ。

 ①物価上昇②株価の下落③デフォルトによる損失が重なれば "人民" の不満は高まる一方「国威発揚」を狙う「北京五輪」までは「大きな行動」に出る懸念は低いが、その後は全くわからない。

 デフォルトによる損失を "チャラ" にするため、対外的軍事行動=いわゆる「戦争」の挙に出る可能性も否定はできない。他国の資産を分捕れば損失の穴埋めは可能だからだ。危険な発想だが、歴史上「戦争」はそうやって起きてきた。こんなタイミングでイギリスフランスドイツまで空母や軍艦をアジアに派遣するのを見ていると、民主主義諸国内ではもう「戦争」に向けて話がまとまっているのではないか、と勘ぐりたくもなる。

 孫子の兵法:「戦わずして勝つ」

 彼の国の目指す戦略があくまでこの範囲なら「脅し対脅し」=「外交」で話が収まる ”希望” もある。だが、その過程で "緊張感" が高まる事も十分考えられ、投資マーケットに目を光らす「損切丸」としては、今後も「中国」から聞こえてくる "足音" には耳を澄ましておくほかない。

 まさに ”前門の虎” =中国の不良債権問題であり、昨日(9/8)の欧米市場での株価下落、国債金利低下がそれを反映したものでなければ良いが。 ”後門の狼” =「インフレ」「金利上昇」も控えているだけに、さて...。

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