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「コロナ危機」と「脱炭素」 ー 「理想」と「現実」の間で。

 1/9 NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」を見たがなかなか衝撃的だった。かなり脚色があるのは承知しているが、それでもインパクト十分。正直「お金」のことが何だかちっぽけなことに思えた。

 投資銀行で何千億、何兆円と「お金」を扱っていると時々虚しくなることがある。「これで世の中の何の役に立っているのだろうか」。特に損している時(苦笑)。それでも「資金繰り」はまだ使命感があるが、デリバティブや短期売買は「生活」との接点を見つけにくい。もっとも「お金」しか考えない業界人も多く、筆者はどちらかというと「変わり者」だった。

 学術論文を始め、いろいろな書き物も出回っており、日本でも経済産業省が ↓ のような立派なレポート(2020年9月)をまとめている。

 大雑把に骨子を書くと:

 ・産業革命以降、地球の温度はこれまで+1.2℃上昇。このままいくと2030年に+1.5℃を上回り、気温上昇に歯止めがかからなくなる。

 ・シベリアの「永久凍土」が融け、炭素の25倍もの温室効果があるメタンガスが大量に放出され、炭素をゼロにしても温暖化が止められなくなる。おまけに「古代のウイルス」が新たに "パンデミック" するリスクがある。

 ・その後2100年には+4℃に達し、気温が上昇。東京都心部では夏に40℃以上の日が増え、超大型化した台風による水害も甚大になる。

 「あれっ、それなら ”コロナ危機" は "脱炭素" には "福音"?」

 ふと思ったが、実際2020年のCO2は激減しているようだ。

コロナ脱炭素2020

 年間の石炭需要▼8%減は戦後史上最大で2008年リーマンショックの7倍にあたるとか。それだけ凄まじい景気後退なわけだが、2030年までの目標達成にはこれを毎年9年間続ける必要があるという。そんな事が可能なのか?

 思い起こせば菅政権が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざす」と宣言した時はやや唐突感があったが、こういった科学的背景があったのは間違いない。

 ただ「お金」ばかりに執着する現政権に本当に舵が取れるのだろうか。そろそろ日本でも元・官僚弁護士ばかりでなく、物理学者SE(システムエンジニア)等、理系上がりの大臣や首相が出てきても良さそうなものだ。

 **「脱炭素」を主導しているのはヨーロッパ「いい格好しいでいいとこ取り」の欧州のことだから、当然自分達の権益を増やすカラクリが潜んでいるが、科学的に進めざるを得ないのも事実であり、日本はしゃくだがついていくしかあるまい。できれば守勢をひっくり返したいものである。

 **筆者が英銀に勤めていた頃から「グリーンボンド」の発行は盛んだった。2017年には発行規模1,600億ドル(16.6兆円)に成長しており、なかななかの市場だ。株式市場にも「グリーン投資銘柄」なども登場しつつあり、銀行にも「環境金融」なる ”新基準” が出来てきている。

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 いまや「投資」にも「グリーン」「SDGs」(Sustainable Development Goals)は一大テーマ。当然そこには儲かる、儲からないの厳しい「お金」基準は存在するので、「投資」する価格、タイミング、金額等は精査されなければならないが、「何かに貢献している」実感は「投資」にも必要なもの。目先の上がった、下がった、儲かった、損しただけでなく、世の中の変化に呼応した「正しい投資」が ”結果” として利益を生む

 「綺麗事」になるかもしれないが、こういう「環境問題」を見聞きするにつけ、高校生の娘がいる筆者も「大人」としての責任を痛感する。できれば彼女たちが生きていく世の中は今より暮らしやすくあって欲しい。そのための「投資」なら親としても「納得感」はかなり高い

 「脱炭素」=「理想」だが、その実現には「お金」=「現実」が必要。そう考えると「投資」は「理想」と「現実」の架け橋になり得る。これは決して「綺麗事」ではなく、「投資」の世界では最終的には「社会貢献度」に準ずるリターンが得られてきたはず。あとは「目利き」の差だろう。

  ”小さな自己満足” として我が家にはエネファーム太陽光発電蓄電池がついており、緑の葉っぱのマークで「これだけ森林保護に貢献しました」という数値も表示されたりする(笑)。蓄電池は夜間電力を溜めるだけの旧式なので、今後はEV(電気自動車)と共に太陽光発電も蓄電できる「V2H」(Vehicle to Home)が "課題" か。 個人で出来る ”ささやかな投資” 。もっとも大きなリターンは見込めないので「お金」が許せば、だが(苦笑)。

 今後余力があれば「グリーン関連」の株や債券を見てみるのも面白い。少なくとも筆者の興味と重なる部分も多く「納得」して「投資」できそう。EV「V2H」とともに「危険な現預金」の振替え先としては有力である。

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