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「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ15 保険編②

 <運用を任せられるの?>

 それから、保険会社がよく保険料に上乗せして資金を運用します、といった運用型商品を勧めてくることがあるが、現状ではあまりお勧めできない。日本の保険会社の運用がはっきり言ってかなり心許ないからだ。

 預かったお金を保険会社も前述した国債や株式を中心に運用するのだが、運用成績については社内においても保険契約者に対しても責任の所在がはっきりしていない。中途解約についてはキャンセル料の名目で機械的に多額の違約金を契約者に求めるだけだし、運用の失敗による損失も契約者に明示されず曖昧になるケースが多い。

 説明を求めようにもせいぜい苦情処理の窓口が通り一遍の受け答えをするだけ。運用担当者もどんどん転勤する。それもそのはず、彼らはプロの運用者として認識されているわけではなく社内業務の一環として行っているだけなのだから。これでは保険契約者に対する運用責任など感じるのは難しい

 同じような風潮は日本の投資信託にも見られる。みんな基本日本の「サラリーマン」なのである。高い手数料だけ払わされて自分の大切なお金を無責任に運用されるなら、自分自身で直接国債や株式投資を手掛けた方がまだましだろう。少なくとも手数料は節約できる。

 <夢の5%の保険商品!?>

 また筆者の母の話で恐縮だが、その昔日銀の公定歩合が@0.5%だった時に弾んだ声で電話をしてきた。

 「5%の保険商品があるんだって!」??? 

 本当に確定利回りで年利5%の商品があるのなら、筆者が業務で数兆円買って運用していただろう。もちろん、そんなものは存在していなかった。

 怪しいと思ったので商品のパンフレットを見せてもらったが特に変わったものでもなかった。商品そのものではなく、某政府系保険会社の担当者のセールストークが問題だったのだ。曰く:

 「10年間で5%分の利息を受け取ることができます」?? 

 よくよく商品の説明書を見ると「年利0.5%で10年間」の商品を「10年間で年利5%×1年分の利息収入」と読み替えて「5%の商品です」とセールスしていたのである。いやはや。いかに田舎とはいえこれはもうほとんど詐欺

 ところが担当者は悪びれもせず何も問題がなかったように振る舞っていた。もしかするとノルマ絡みの本部の指示で組織的に動いていたのかもしれない。怒りと同時に日本の保険会社や金融機関はこの程度、とあきらめにも似た感情も覚えた。

 自分の大切なお金の運用を任せるなどまだまだとんでもない。

其ノ16では、予定利率引き下げの議論と保険の「母国」イギリスを実例に、保険ビジネスの基本的考え方などについて。

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